オネエな幼馴染と男嫌いな私

麻竹

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「もう!いつもいつもいつも!!」

ヴィヴィアーナは、すっかり疲れた様子で愚痴を零していたのであった。
毎度の事ながら、ジュリアスがヴィヴィアーナの元へ突撃してきたのである。
今回は、屋敷の中で刺繍をしていた所への襲撃であった。

――あの夜会での優しさは、幻だったのね……。

ヴィヴィアーナは、先日の事は気のせいだったのだと、相変わらずな婚約者の態度に内心溜息を吐いた。

「あ~ら、あんたでも、そういう器用なことが出来るのねぇ~。」

ヴィヴィアーナが落胆していると、招いてもいないのに勝手に人の部屋まで入ってきたジュリアスが、手元を見ながら嫌味を言ってきのであった。
ヴィヴィアーナは、その言葉に「はあぁぁぁ?」と怒りの視線を向けた。
しかし、睨むヴィヴィアーナの視線を物ともせずに、ジュリアスはニヤニヤしながら見下ろしてくる。
そんな不遜な態度の婚約者に、怒りのボルテージはぐんぐん上がっていった。

――何よ何よ何よ!昔、あんたに刺繍入りのハンカチあげてやったでしょうが!!

とうとう怒りの臨界点を突破してしまったヴィヴィアーナは、幼い頃を思い出しながら胸中で絶叫したのであった。



今よりもまだ幼かった頃、ヴィヴィアーナは初めて覚えた刺繍をジュリアスに贈った事があった。
あの時はまだ、ジュリアスの事をここまで嫌いだったわけでは無いので、刺繍が出来た喜びのテンションのまま贈ったのだが……。

――あの時も確か、ジュリアスに「下手くそ」とか言われて落ち込んだんだっけ。

当時の事を思い出し、ヴィヴィアーナは怒った顔のまま悲しい気持ちになっていった。
思い起こせば、あの頃からジュリアスに色々嫌がらせをされていたんだっけ。
ヴィヴィアーナの脳裏に、苦い記憶が蘇ってきたのであった。

――確かあの時は、ジュリアスが渡したい物があるって言ってきたんだったわ……。

その昔、ヴィヴィアーナ達が婚約をする前。
幼いジュリアスが、綺麗な装飾のされた箱を大事そうに持って、ヴィヴィアーナに会いに来たことがあった。
そして

「あげる。」

「私に?」

「うん!」

と言って箱を差し出してきたのである。
にっこりと笑うジュリアスに、ヴィヴィアーナは喜んで箱を受け取り蓋を開けたのだが……。

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」

次の瞬間、ヴィヴィアーナが悲鳴を上げてきたのであった。
ジュリアスが持ってきた箱の中には、色の付いた石やガラスの破片がぎっしりと入っていた。
そしてよく見ると、毛虫や蜘蛛や立派な角のある昆虫たちが、うぞうぞと蠢いている姿があったのだった。

――あれは、物凄く驚いたし気持ち悪かったわ……しかも、他にもまだあったわね……。

ヴィヴィアーナは昔の思い出に身震いしながら、次の記憶を呼び起こしていった。
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