7 / 35
6
しおりを挟む
「もう!いつもいつもいつも!!」
ヴィヴィアーナは、すっかり疲れた様子で愚痴を零していたのであった。
毎度の事ながら、ジュリアスがヴィヴィアーナの元へ突撃してきたのである。
今回は、屋敷の中で刺繍をしていた所への襲撃であった。
――あの夜会での優しさは、幻だったのね……。
ヴィヴィアーナは、先日の事は気のせいだったのだと、相変わらずな婚約者の態度に内心溜息を吐いた。
「あ~ら、あんたでも、そういう器用なことが出来るのねぇ~。」
ヴィヴィアーナが落胆していると、招いてもいないのに勝手に人の部屋まで入ってきたジュリアスが、手元を見ながら嫌味を言ってきのであった。
ヴィヴィアーナは、その言葉に「はあぁぁぁ?」と怒りの視線を向けた。
しかし、睨むヴィヴィアーナの視線を物ともせずに、ジュリアスはニヤニヤしながら見下ろしてくる。
そんな不遜な態度の婚約者に、怒りのボルテージはぐんぐん上がっていった。
――何よ何よ何よ!昔、あんたに刺繍入りのハンカチあげてやったでしょうが!!
とうとう怒りの臨界点を突破してしまったヴィヴィアーナは、幼い頃を思い出しながら胸中で絶叫したのであった。
今よりもまだ幼かった頃、ヴィヴィアーナは初めて覚えた刺繍をジュリアスに贈った事があった。
あの時はまだ、ジュリアスの事をここまで嫌いだったわけでは無いので、刺繍が出来た喜びのテンションのまま贈ったのだが……。
――あの時も確か、ジュリアスに「下手くそ」とか言われて落ち込んだんだっけ。
当時の事を思い出し、ヴィヴィアーナは怒った顔のまま悲しい気持ちになっていった。
思い起こせば、あの頃からジュリアスに色々嫌がらせをされていたんだっけ。
ヴィヴィアーナの脳裏に、苦い記憶が蘇ってきたのであった。
――確かあの時は、ジュリアスが渡したい物があるって言ってきたんだったわ……。
その昔、ヴィヴィアーナ達が婚約をする前。
幼いジュリアスが、綺麗な装飾のされた箱を大事そうに持って、ヴィヴィアーナに会いに来たことがあった。
そして
「あげる。」
「私に?」
「うん!」
と言って箱を差し出してきたのである。
にっこりと笑うジュリアスに、ヴィヴィアーナは喜んで箱を受け取り蓋を開けたのだが……。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」
次の瞬間、ヴィヴィアーナが悲鳴を上げてきたのであった。
ジュリアスが持ってきた箱の中には、色の付いた石やガラスの破片がぎっしりと入っていた。
そしてよく見ると、毛虫や蜘蛛や立派な角のある昆虫たちが、うぞうぞと蠢いている姿があったのだった。
――あれは、物凄く驚いたし気持ち悪かったわ……しかも、他にもまだあったわね……。
ヴィヴィアーナは昔の思い出に身震いしながら、次の記憶を呼び起こしていった。
ヴィヴィアーナは、すっかり疲れた様子で愚痴を零していたのであった。
毎度の事ながら、ジュリアスがヴィヴィアーナの元へ突撃してきたのである。
今回は、屋敷の中で刺繍をしていた所への襲撃であった。
――あの夜会での優しさは、幻だったのね……。
ヴィヴィアーナは、先日の事は気のせいだったのだと、相変わらずな婚約者の態度に内心溜息を吐いた。
「あ~ら、あんたでも、そういう器用なことが出来るのねぇ~。」
ヴィヴィアーナが落胆していると、招いてもいないのに勝手に人の部屋まで入ってきたジュリアスが、手元を見ながら嫌味を言ってきのであった。
ヴィヴィアーナは、その言葉に「はあぁぁぁ?」と怒りの視線を向けた。
しかし、睨むヴィヴィアーナの視線を物ともせずに、ジュリアスはニヤニヤしながら見下ろしてくる。
そんな不遜な態度の婚約者に、怒りのボルテージはぐんぐん上がっていった。
――何よ何よ何よ!昔、あんたに刺繍入りのハンカチあげてやったでしょうが!!
とうとう怒りの臨界点を突破してしまったヴィヴィアーナは、幼い頃を思い出しながら胸中で絶叫したのであった。
今よりもまだ幼かった頃、ヴィヴィアーナは初めて覚えた刺繍をジュリアスに贈った事があった。
あの時はまだ、ジュリアスの事をここまで嫌いだったわけでは無いので、刺繍が出来た喜びのテンションのまま贈ったのだが……。
――あの時も確か、ジュリアスに「下手くそ」とか言われて落ち込んだんだっけ。
当時の事を思い出し、ヴィヴィアーナは怒った顔のまま悲しい気持ちになっていった。
思い起こせば、あの頃からジュリアスに色々嫌がらせをされていたんだっけ。
ヴィヴィアーナの脳裏に、苦い記憶が蘇ってきたのであった。
――確かあの時は、ジュリアスが渡したい物があるって言ってきたんだったわ……。
その昔、ヴィヴィアーナ達が婚約をする前。
幼いジュリアスが、綺麗な装飾のされた箱を大事そうに持って、ヴィヴィアーナに会いに来たことがあった。
そして
「あげる。」
「私に?」
「うん!」
と言って箱を差し出してきたのである。
にっこりと笑うジュリアスに、ヴィヴィアーナは喜んで箱を受け取り蓋を開けたのだが……。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」
次の瞬間、ヴィヴィアーナが悲鳴を上げてきたのであった。
ジュリアスが持ってきた箱の中には、色の付いた石やガラスの破片がぎっしりと入っていた。
そしてよく見ると、毛虫や蜘蛛や立派な角のある昆虫たちが、うぞうぞと蠢いている姿があったのだった。
――あれは、物凄く驚いたし気持ち悪かったわ……しかも、他にもまだあったわね……。
ヴィヴィアーナは昔の思い出に身震いしながら、次の記憶を呼び起こしていった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
223
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる