オネエな幼馴染と男嫌いな私

麻竹

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領地でのバカンスは、あっという間に終わり帝都に戻ってきたヴィヴィアーナは、届いた手紙を見て驚いていた。
なんと送られてきた手紙は、エバンスからであった。
彼の手紙には、領地で突然声をかけてしまった無礼と、夜会で怖がらせてしまった事への謝罪の言葉が丁寧に綴られていた。

「なんて誠実な方なのかしら。」

ヴィヴィアーナは、季節の花と共に送られてきた花の香り付きの便箋を見下ろしながら、エバンスの心遣いに感嘆する。
文面からも彼の誠実な人柄が伝わってきて、エバンスに対する好感度はだだ上がりであった。



――それなのに、こいつは……。

ヴィヴィアーナは、紅茶の入ったカップを傾けながら目の前のジュリアスに冷たい視線を向けていた。
エバンスへの手紙のお礼を書いて出した後、ジュリアスが訪問してきたのだ。
しかも今回は、いつもの突撃とは違い婚約者として正式に訪問してきた為、ヴィヴィアーナも無碍にはできず渋々客間に通したのであった。
そして婚約者面で寛ぎながら、ペラペラと楽しそうに喋るジュリアスを、カップ越しに冷ややかな視線で見ていた。

「あら、何か良い事でもあったの?」

そんなヴィヴィアーナに、ジュリアスが話しかけてきた。
図星を指されてギクリとしてしまったが、なんとか平静を装ってすました顔で「別に」と答えた。

――彼から手紙が来たことを教えたら、何て言われるかわからないわ。

領地で夜会から帰った後、エバンスの事を仕切りに警戒しろと言ってきていたジュリアスに教えたら大変なことになると思い、ヴィヴィアーナは手紙の事は伝えなかった。
そんな婚約者を、ジュリアスは訝しそうに見てくる。
バレやしないかと内心冷や冷やしていたが、ジュリアスはそれ以上詮索することは無く、話題を変えて話しかけてきた。
そんな婚約者に内心ホッとしながら、ヴィヴィアーナは相手の話に耳を傾けるフリをしながら、エバンスへ出した手紙の事が気になり始終ソワソワしていたのであった。




それからというもの、ヴィヴィアーナはジュリアス達に内緒で、エバンスと手紙のやり取りを続けていた。
兄やジュリアスにバレないように、手紙はひと月に一度程度しか遣り取りができず、しかも内容は世間話ばかりだったのだが、家に引き籠りがちで特に親しい友人のいなかったヴィヴィアーナにとってエバンスとの文通は、ささやかな楽しみの一つになっていた。
それに、ジュリアスと違ってエバンスからの手紙には嫌味などは一つも無く、紳士な対応でヴィヴィアーナの事をとても気遣ってくれる内容ばかりだった。
そんな所も、ヴィヴィアーナが安心して手紙のやり取りができる理由の一つであった。

――ジュリアスとじゃ、こんなに心穏やかに会話なんて出来やしないわ。

まるで、会って会話をしているような文面を見ながら、ヴィヴィアーナは嘆息するのであった。
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