オネエな幼馴染と男嫌いな私

麻竹

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そして、エバンスとの文通も半年が過ぎた頃、また社交シーズンが訪れようとしていた。
しかし今回は、それ程憂鬱な気分にはならなかった。
何故なら、今年の社交にはエバンスも参加するというのだ。
なんでも昨年は、実家の領地経営を学び始めたばかりで忙しく、なかなか時間が取れなかったそうなのだ。
しかし今年は、少し余裕が出来たので帝都に戻って参加すると手紙には書いてあった。

しかも『夜会でお会い出来たら嬉しいですが、あまり無理しないでくださいね』と、男性恐怖症のヴィヴィアーナを労う内容も書かれていた。

他の令息達のようにグイグイこない顕著な彼に、ヴィヴィアーナは益々エバンスという青年に好感を持つ。
そして、本人も知らず知らずのうちに夜会へ積極的に参加するようになり、両親たちを驚かせたのであった。



「珍しいわねぇ、あんたが社交に積極的に参加するなんて。」

「そんな事無いわよ。」

いつもの様に屋敷にやって来たジュリアスは、案の定夜会に積極的に参加するヴィヴィアーナを揶揄ってきたのであった。
そんな婚約者に、ヴィヴィアーナは素っ気なく言い放つ。

「ふうん……。」

平静を装い優雅に紅茶を飲むヴィヴィアーナをジュリアスは面白くなさそうな顔で見てくる。
< 早く帰れと胸中で念じていると、ジュリアスはあろう事かヴィヴィアーナの隣に椅子をわざわざずらして座ってきたのであった。

「何があったの?正直に言いなさい。」

「は?」

端正な顔を至近距離まで近付けながら言ってきた婚約者に、ヴィヴィアーナは素っ頓狂な声を上げると上半身だけ逃げるように逸らしてきた。

「逃げるんじゃないわよ。」

「ちょっとやめてよ!」

そう言いながら逃げようとしたヴィヴィアーナの手首を、ジュリアスがガシリと掴んできた。
その瞬間、ひいぃ!とヴィヴィアーナが青褪めながら小さく悲鳴を上げる。
ぽつぽつと発疹が浮かんできたヴィヴィアーナを無視して、ジュリアスはずいっと更に顔を近づけると尋問のように問い詰めてきたのであった。

「誰が目当てなの?」

「はぁ!?」

ジュリアスの言葉にギクリとする。
一瞬目を泳がせたヴィヴィアーナの反応を見逃さず、ジュリアスは片眉を上げながら何故か怒った様子で言ってきたのであった。

「あたしという者がいながら、いい度胸じゃない。」

「な、何言って……。」

「でも、恐怖症は治ってないみたいね。」

ジュリアスはそう言うと、発疹の浮かぶ細い手をペロリと舐めてきたのであった。

「なっ!」

途端、全身にぶわっと痒みが駆け巡る。
痒みと寒気に苦悶の表情を浮かべるヴィヴィアーナを見下ろすように見ていたジュリアスは、パッと手を放してきた。
ヴィヴィアーナは、慌てて掴まれていた手を庇うように胸元に引き寄せる。
そんな婚約者を、冷めたような目で見てきたジュリアスは乱暴に立ち上がると、「帰るわ」と言って去って行ってしまったのであった。
珍しく怒った様子のジュリアスに、ヴィヴィアーナは狼狽えてしまった。
しかも去って行く後ろ姿を見ていたら、得も言われぬような不安が急に襲ってきた。

「あ……ま、待って!」

思わず呟いてしまった言葉は彼には聞こえなかったようで、あっという間に小さくなっていくジュリアスの背中を呆然と見送るのであった。

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