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幕間8
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「やっちまった……。」
ジュリアスは、相も変わらず幼馴染の部屋に逃げ込むと、お決まりの懺悔の言葉を吐いてきたのであった。
「今度は何をしたのさ?」
愛用のカップでお気に入りの紅茶を飲みながら、ストラウスはそんな幼馴染に苦笑を零しながら訊ねる。
しかし、次に幼馴染が発した言葉に眉間に皺を寄せたのであった。
「ついカッとなって怒っちまった……あいつの前では、怒りを表さない様にしてたんだが、失敗した……。」
「君がヴィヴィに怒るなんて珍しいね。何があったんだい?」
訝し気に聞いてくるストラウスに、ジュリアスは先程のヴィヴィアーナとの遣り取りを溜息交じりに話したのであった。
一通り話を聞き終えた後、ストラウスは考え込む仕草をしながらポツリと言ってきた。
「君の嫉妬も、あながち外れていないかもしれないよ。」
「嫉妬って……じゃあ本当に、ヴィ―に目当ての相手が出来たって言うのかよ!?」
考えたくもない想像を語るストラウスに、ジュリアスが食って掛かる。
そんな幼馴染の喚きを片手で制しながら、ストラウスは話し出した。
「仮にもし、目当ての相手がいたとして。それが、あのエバンスだとしたら?」
「なに?」
ストラウスの言葉に、ジュリアスはピクリと反応する。
有り得なくもない例え話に、ジュリアスも考え込んでしまった。
「最近、ヴィ―の様子が可笑しいと思っていたんだよ。何か僕に隠し事をしているようなんだ。」
「お前にか?」
「ああ、こんな事は今まで一度も無かったのに……。」
ストラウスの話に驚くジュリアスに、彼は心底悲しそうな顔をしながら頷いてきたのであった。
「僕のヴィ―に隠し事をされるなんて、この世の終わりだよ……。」
そして、片手で顔を覆って嘆き始めてしまったのである。
こうなると手に負えなくなる幼馴染に、ジュリアスは違う意味で食って掛かっていった。
「おいおいおい、嘆くのは後にしてくれ。今は、その宰相にも絶賛された頭脳を使う方が先だろう!」
こと戦略や防衛において、ストラウスより長けた者はいない。
特に妹に関しての防衛は完璧だ。
これまでも、何人もの令息達を闇に葬って来た兄の実力はお墨付きだった。
そんなストラウスが使い物にならなくなる前に、何とか対策だけでも立てておこうとジュリアスは喝を入れる。
すると、先程まで闇落ちしかけていたストラウスが復活してきたのであった。
「ああ済まない。ちょっと取り乱してしまったようだ。」
「しっかりしてくれよ……。」
謝罪するストラウスに、ジュリアスは肩を竦める。
妹の事になると見境が無くなってしまうストラウスに、溜息を零していると彼が話しかけてきた。
「まあ、妹の目的が彼だとしても、それだけなら別に構わないと思っているけどね。」
「お、おい!」
「何を焦ってるんだい?今時、異性の友人の一人や二人、令嬢にだっているもんだろう?」
そう言って朗らかに笑う婚約者の兄に、ジュリアスは狼狽え始めたのだった。
何だか不味い方向に話が向かってしまっている事に、ジュリアスは焦る。
そんな彼に、ストラウスは意地の悪い笑みを見せてきた。
「ま、 ”友人” なら問題は無いね。逆に男性恐怖症が治る良い薬になるなら、こちらからお願いしたい位だよ。」
「正気か!?お前……。」
以前と同じような事を言ってくる妹至上主義の兄の考えに、ジュリアスは動揺する。
そんな妹の婚約者を横目でチラリと見ながら、妹思いの兄はこう付け加えてきたのであった。
「ま、それはもっとよく色々調べてからだよ。ちょっと気になる事もあるからね。」
「?」
そう言って微笑んできた親友に、ジュリアスは首を傾げるのであった。
ジュリアスは、相も変わらず幼馴染の部屋に逃げ込むと、お決まりの懺悔の言葉を吐いてきたのであった。
「今度は何をしたのさ?」
愛用のカップでお気に入りの紅茶を飲みながら、ストラウスはそんな幼馴染に苦笑を零しながら訊ねる。
しかし、次に幼馴染が発した言葉に眉間に皺を寄せたのであった。
「ついカッとなって怒っちまった……あいつの前では、怒りを表さない様にしてたんだが、失敗した……。」
「君がヴィヴィに怒るなんて珍しいね。何があったんだい?」
訝し気に聞いてくるストラウスに、ジュリアスは先程のヴィヴィアーナとの遣り取りを溜息交じりに話したのであった。
一通り話を聞き終えた後、ストラウスは考え込む仕草をしながらポツリと言ってきた。
「君の嫉妬も、あながち外れていないかもしれないよ。」
「嫉妬って……じゃあ本当に、ヴィ―に目当ての相手が出来たって言うのかよ!?」
考えたくもない想像を語るストラウスに、ジュリアスが食って掛かる。
そんな幼馴染の喚きを片手で制しながら、ストラウスは話し出した。
「仮にもし、目当ての相手がいたとして。それが、あのエバンスだとしたら?」
「なに?」
ストラウスの言葉に、ジュリアスはピクリと反応する。
有り得なくもない例え話に、ジュリアスも考え込んでしまった。
「最近、ヴィ―の様子が可笑しいと思っていたんだよ。何か僕に隠し事をしているようなんだ。」
「お前にか?」
「ああ、こんな事は今まで一度も無かったのに……。」
ストラウスの話に驚くジュリアスに、彼は心底悲しそうな顔をしながら頷いてきたのであった。
「僕のヴィ―に隠し事をされるなんて、この世の終わりだよ……。」
そして、片手で顔を覆って嘆き始めてしまったのである。
こうなると手に負えなくなる幼馴染に、ジュリアスは違う意味で食って掛かっていった。
「おいおいおい、嘆くのは後にしてくれ。今は、その宰相にも絶賛された頭脳を使う方が先だろう!」
こと戦略や防衛において、ストラウスより長けた者はいない。
特に妹に関しての防衛は完璧だ。
これまでも、何人もの令息達を闇に葬って来た兄の実力はお墨付きだった。
そんなストラウスが使い物にならなくなる前に、何とか対策だけでも立てておこうとジュリアスは喝を入れる。
すると、先程まで闇落ちしかけていたストラウスが復活してきたのであった。
「ああ済まない。ちょっと取り乱してしまったようだ。」
「しっかりしてくれよ……。」
謝罪するストラウスに、ジュリアスは肩を竦める。
妹の事になると見境が無くなってしまうストラウスに、溜息を零していると彼が話しかけてきた。
「まあ、妹の目的が彼だとしても、それだけなら別に構わないと思っているけどね。」
「お、おい!」
「何を焦ってるんだい?今時、異性の友人の一人や二人、令嬢にだっているもんだろう?」
そう言って朗らかに笑う婚約者の兄に、ジュリアスは狼狽え始めたのだった。
何だか不味い方向に話が向かってしまっている事に、ジュリアスは焦る。
そんな彼に、ストラウスは意地の悪い笑みを見せてきた。
「ま、 ”友人” なら問題は無いね。逆に男性恐怖症が治る良い薬になるなら、こちらからお願いしたい位だよ。」
「正気か!?お前……。」
以前と同じような事を言ってくる妹至上主義の兄の考えに、ジュリアスは動揺する。
そんな妹の婚約者を横目でチラリと見ながら、妹思いの兄はこう付け加えてきたのであった。
「ま、それはもっとよく色々調べてからだよ。ちょっと気になる事もあるからね。」
「?」
そう言って微笑んできた親友に、ジュリアスは首を傾げるのであった。
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