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星司と月歌(スピンオフ1)
6. お花見
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この島に来て、だいぶ人間らしくなったと思った星司くんだけど、二人の愛の結晶である我が子が、僕のお腹に舞い降りてきてくれてから、ますます人間らしさを感じるようになっていた。
人間である星司くん相手におかしいと思うけど、でもそんなことを思ってしまうくらい、以前の星司くんは完璧すぎて、本当の心が見えていなかった気がする。
星司くんの家はあまりにも大きすぎて、いずれはそのトップにと言われ続けたことは、プレッシャーがすごいなんてものではなかったのだと思う。そのしがらみから解き放たれた今の星司くんが、本当の星司くんなんだ。
「月歌、廃材もらってきたから、ベビーベッド作ってる途中なんだけど、ちょっと見てくれないか?」
僕の妊娠が判明したのはまだ寒い頃だったけど、今はすっかり春の陽気になっていた。
桜も咲き始め、満開まであと少しというところまで来ていた。お花見に行く約束をしているから楽しみだ。
庭の方から、首にかけたタオルで汗を拭きながら星司くんがやってきた。その笑顔はとてもキラキラしていて、僕が喜ぶだろうと想像しながらこちらに向かってるのだろうと思うと、僕も嬉しくなって笑顔で言葉を返す。
「すごい! ベビーベッドなんて作れるの?」
人間らしくなったとはいえ、何でもこなしてしまうところは相変わらずで、今は日曜大工に精を出している。
赤ちゃんをお迎えするためのものが中心で、ベビーベッドを始め、収納棚や、木製のおもちゃなど。町の人達に端材などをいただいて、色々と作っている。
「まだ木枠だけなんだけど、どうだろう? とても良い感じだと思う」
にこにこしながら庭に案内された僕は、星司くんについて行った。庭には、作りかけのベビーベッドと、他にもなにか準備中らしき木材たち。
「とっても素敵だよ。ありがとう。完成が楽しみだな」
「月歌に喜んでもらえてよかった」
少し休憩をしようと僕から提案して、いただいた和菓子とお茶を準備した。
「ベビーサークルも作りたいと思っているんだ」という星司くんに、「僕はおくるみとかスタイとか作っている最中だよ」と応えた。
ぽかぽかの日差しの中で、これから生まれてくる我が子のための準備の話をする。
こんなに幸せでよいのだろうか。
僕は、わずかに湧き出た不安を抑え込むと、隣の星司くんにぴとっと寄り添い、「楽しみだね」と微笑んだ。
◇
桜も満開となり、そのタイミングを見計らって、近くの公園にお花見に行くことにした。
行き交う町の人々と「お散歩かい?」「はい、公園でお花見をしようと思って」「ちょうど満開できれいだったわよー」なんて会話をしながら公園に向かう。ここの町人たちはとても気さくで、町全体がひとつの家族のようだ。
公園に到着すると、見慣れた人々が集まってきていた。みんなお花見に来たのだろうか。そう思っていたら向こうから声をかけられた。
「星司くん、月歌くん、お花見かい?」
この町に来たときも、こうやって一番に声をかけてくれた、町長さんだ。
「はい。ちょうど満開だと聞いて、天気もいいし散歩がてらお花見に来ました」
「そうかいそうかい。もし良かったら、一緒にお昼食べないか? 家内自慢の料理があるんだ」
町長さんは愛妻家で有名で、会うたびに惚気を聞かされるくらいだ。僕はそんな関係に憧れている。
隣りにいる星司くんに確認するように視線を向けると、ニコニコしながらうなずいた。
「ありがとうございます。僕の作ってきたのもあるので、良かったら食べてください」
「月歌くんの料理も美味しいのよねー。ありがとう、いただくわ」
少し離れたところから声がしたので振り返ると、席を外していただろう奥さん、百合子さんがニコニコしながらこちらに向かって歩いていた。
百合子さんは、初めて会ったとき『私のことは百合子って呼んで』というので、お言葉に甘えて百合子さんと呼ばせてもらっている。
ちなみに、町長さんの名前は『椿原一郎』さんというのだけど、一郎さんではなくそのまま町長さんと呼んでいる。町長さんは少し不満げだけどね。
百合子さんも揃ったところで、ふたつのレジャーシートを広げ、四人で一緒にお花見をすることになった。
人間である星司くん相手におかしいと思うけど、でもそんなことを思ってしまうくらい、以前の星司くんは完璧すぎて、本当の心が見えていなかった気がする。
星司くんの家はあまりにも大きすぎて、いずれはそのトップにと言われ続けたことは、プレッシャーがすごいなんてものではなかったのだと思う。そのしがらみから解き放たれた今の星司くんが、本当の星司くんなんだ。
「月歌、廃材もらってきたから、ベビーベッド作ってる途中なんだけど、ちょっと見てくれないか?」
僕の妊娠が判明したのはまだ寒い頃だったけど、今はすっかり春の陽気になっていた。
桜も咲き始め、満開まであと少しというところまで来ていた。お花見に行く約束をしているから楽しみだ。
庭の方から、首にかけたタオルで汗を拭きながら星司くんがやってきた。その笑顔はとてもキラキラしていて、僕が喜ぶだろうと想像しながらこちらに向かってるのだろうと思うと、僕も嬉しくなって笑顔で言葉を返す。
「すごい! ベビーベッドなんて作れるの?」
人間らしくなったとはいえ、何でもこなしてしまうところは相変わらずで、今は日曜大工に精を出している。
赤ちゃんをお迎えするためのものが中心で、ベビーベッドを始め、収納棚や、木製のおもちゃなど。町の人達に端材などをいただいて、色々と作っている。
「まだ木枠だけなんだけど、どうだろう? とても良い感じだと思う」
にこにこしながら庭に案内された僕は、星司くんについて行った。庭には、作りかけのベビーベッドと、他にもなにか準備中らしき木材たち。
「とっても素敵だよ。ありがとう。完成が楽しみだな」
「月歌に喜んでもらえてよかった」
少し休憩をしようと僕から提案して、いただいた和菓子とお茶を準備した。
「ベビーサークルも作りたいと思っているんだ」という星司くんに、「僕はおくるみとかスタイとか作っている最中だよ」と応えた。
ぽかぽかの日差しの中で、これから生まれてくる我が子のための準備の話をする。
こんなに幸せでよいのだろうか。
僕は、わずかに湧き出た不安を抑え込むと、隣の星司くんにぴとっと寄り添い、「楽しみだね」と微笑んだ。
◇
桜も満開となり、そのタイミングを見計らって、近くの公園にお花見に行くことにした。
行き交う町の人々と「お散歩かい?」「はい、公園でお花見をしようと思って」「ちょうど満開できれいだったわよー」なんて会話をしながら公園に向かう。ここの町人たちはとても気さくで、町全体がひとつの家族のようだ。
公園に到着すると、見慣れた人々が集まってきていた。みんなお花見に来たのだろうか。そう思っていたら向こうから声をかけられた。
「星司くん、月歌くん、お花見かい?」
この町に来たときも、こうやって一番に声をかけてくれた、町長さんだ。
「はい。ちょうど満開だと聞いて、天気もいいし散歩がてらお花見に来ました」
「そうかいそうかい。もし良かったら、一緒にお昼食べないか? 家内自慢の料理があるんだ」
町長さんは愛妻家で有名で、会うたびに惚気を聞かされるくらいだ。僕はそんな関係に憧れている。
隣りにいる星司くんに確認するように視線を向けると、ニコニコしながらうなずいた。
「ありがとうございます。僕の作ってきたのもあるので、良かったら食べてください」
「月歌くんの料理も美味しいのよねー。ありがとう、いただくわ」
少し離れたところから声がしたので振り返ると、席を外していただろう奥さん、百合子さんがニコニコしながらこちらに向かって歩いていた。
百合子さんは、初めて会ったとき『私のことは百合子って呼んで』というので、お言葉に甘えて百合子さんと呼ばせてもらっている。
ちなみに、町長さんの名前は『椿原一郎』さんというのだけど、一郎さんではなくそのまま町長さんと呼んでいる。町長さんは少し不満げだけどね。
百合子さんも揃ったところで、ふたつのレジャーシートを広げ、四人で一緒にお花見をすることになった。
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