【本編完結】再び巡り合う時 ~転生オメガバース~

一ノ瀬麻紀

文字の大きさ
3 / 86

2. 鏡の中の自分

しおりを挟む
「えっ……?」

 驚いて思わず出た声も、短い言葉だったのにもかかわらず、やはり全く聞いたことのない声だった。
 でも確かに自分の口から発せられた言葉だったから、混乱する頭の中で、必死に対応策を探した。

 そうだ! 鏡! 洗面台に鏡があるはずだ。

 自分の中に湧き出たありえない可能性を打ち消す為に、僕はガバッと起き上がり、ベッドを降りようとした。

 ぐらり

 急に頭を動かしたせいか、一気にめまいが襲ってきて、視界が一瞬真っ白になってしまった。
 あっ……っと思った瞬間、ガタンと派手な音を立てて、僕はベッドから転がり落ちてしまった。

 同時に、全身に走る痛み。頭だけは打たなかったのは幸いか。

「いったぁ……」

 痛みの感じるところをあちこち手で擦りながら、なんとか体を起こし、床にぺたりと座り込んだ。


「ミッチ! どうしたの!? わっ! いたそうっ!!」

 さきほど驚いて出ていった少年が再び戻ってきた。部屋を出ている間に、派手な音がした上に、僕がベッドから落ちていたから血相を変えて近くに寄ってきた。

「いたたたた……。大丈夫と言いたいところだけど、あちこち痛くて」

 おそらく先程慌てて部屋を出ていったのは、誰か大人を呼びに行くためだったのだろう。
 少年に続いて部屋に入ってきたのは、ライトブラウンのふんわりしたウェーブヘアで、長さはセミロング。パッチリとしたグリーンの瞳が印象的な大人の女性だった。
 その女性は転んでしまった僕を見つけると、慌ててやって来て、ベッドに戻る手伝いをしてくれた。

 さっきは声に覚えがないと驚いたけど、よく見ると、僕、なんか小さくなってないか? そう気付いた僕は、自分の目の前で、手をグッパと開いてみた。そして体中をペタペタと触ってみた。
 おかしい。僕は十八歳のはずなのに、この体はどう見ても幼稚園児くらいだ。

 え? どういうこと? なんで? これは夢……?


「あの……。鏡、ないですか?」

 先ほどは鏡を取りに行こうと体を起こし、バランスを崩して転倒してしまったんだ。
 そのことを思い出し、女性に鏡を借りられないか聞いてみた。
 僕の今の姿を確認すれば、何が起きているのか分かるかもしれない。

「鏡? ……ちょっと待ってね」

 女性は隣の部屋から鏡を持ってくると、僕に渡してくれた。
 軽く深呼吸をして、手鏡で僕自身を映し出した。


 ──っ!

 一瞬呼吸が止まる。

 信じられない。僕は自分の目を疑った。
 鏡に写っていたのは、僕の近くで心配そうに見ていた少年と、同じ顔の少年だった。

「な……ん……で……?」

 信じられるわけがない。
 僕の知っている僕は、日本人らしい黒髪の少し童顔だし身長も低めな自覚はあったけど、それでも成人した18歳の立派な青年だ。……いや、立派かと言われると全くそんなことはなく、でも、慎ましやかに生きてきた。
 オメガに産まれたことで虐げられたこともあったけど、リクに出会って僕は幸せだった。
 だから、リクと一緒にいたいというささやかな願いを胸に、静かに暮らしていたんだ。

「──リク!!」

 混乱の中、僕は思い出した。

 大好きなリクは、僕を庇ってこの世を去ってしまった。もう会いたくても二度と会えない現実に、何度も打ちひしがれて、僕もリクのそばに行きたいと願ったんだ。

 思い出したくない現実を思い出し、僕は悲しみに襲われる。

 でも……僕はあの時思いとどまったじゃないか。
 欄干に足をかけ、リクのもとへ行こうとしたけど、リクとの約束を思い出して、もう少し頑張ってみようって心に誓ったはず。
 なのに何故、僕は僕じゃない姿で知らない場所にいるの……?

「あっ……」

 あの日は雨が降り、視界が悪かった。そんな中での出来事を、徐々に思い出していく。

 僕は、居眠り運転のトラックに引かれそうになった女の子を助けて、そのまま──。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

【本編完結済】神子は二度、姿を現す

江多之折(エタノール)
BL
1/7外伝含め完結 ファンタジー世界で成人し、就職しに王城を訪れたところ異世界に転移した少年が転移先の世界で神子となり、壮絶な日々の末、自ら命を絶った前世を思い出した主人公。 死んでも戻りたかった元の世界には戻ることなく異世界で生まれ変わっていた事に絶望したが 神子が亡くなった後に取り残された王子の苦しみを知り、向き合う事を決めた。 戻れなかった事を恨み、死んだことを後悔し、傷付いた王子を助けたいと願う少年の葛藤。 王子様×元神子が転生した侍従の過去の苦しみに向き合い、悩みながら乗り越えるための物語。 ※小説家になろうに掲載していた作品を改修して投稿しています。 描写はキスまでの全年齢BL

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

きっと、君は知らない

mahiro
BL
前世、というのだろうか。 俺は前、日本という国で暮らしていて、あの日は中学時代にお世話になった先輩の結婚式に参列していた。 大人になった先輩と綺麗な女性の幸せそうな姿に胸を痛めながら見つめていると二人の間に産まれたという女の子がひとりで車道に向かい歩いている姿が目に入った。 皆が主役の二人に夢中で子供の存在に気付いておらず、俺は慌ててその子供のもとへと向かった。 あと少しで追い付くというタイミングで大型の車がこちらに向かってくるのが見え、慌ててその子供の手を掴み、彼らのいる方へと突き飛ばした。 次の瞬間、俺は驚く先輩の目と合ったような気がするが、俺の意識はそこで途絶えてしまった。 次に目が覚めたのは見知らぬ世界で、聞いたことのない言葉が行き交っていた。 それから暫く様子を見ていたが、どうやら俺は異世界に転生したらしく………?

聖女の兄で、すみません!

たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。 三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。 そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。 BL。ラブコメ異世界ファンタジー。

嘘つき王と影の騎士

篠雨
BL
「俺の役割は、貴方を守ることだ。……例え、貴方自身からも」 国の平穏を一身に背負い、十二年間「聖王」という偶像を演じ続けてきたセシル。 酷使し続けた心身はすでに限界を迎え、その命の灯火は今にも消えようとしていた。 そんな折、現れたのは異世界からの「転移者」。 代わりを見つけた国は、用済みとなったセシルからすべてを剥奪し、最果ての地へと追放する。 死を待つためだけに辿り着いた冬の山。 絶望に沈むセシルの前に現れたのは、かつて冷徹に王を監視し続けていた近衛騎士団長、アルヴィスだった。 守るべき王も、守るべき国も失ったはずの二人が過ごす、狭い小屋での夜。 無価値になり、壊れかけた自分を、なぜこの男は、そんな瞳で見つめるのか。 なぜ、そんなにも強く、抱きしめるのか。 これは、すべてを失った「聖王」が、一人の男の熱に暴かれ、再生していくまでの物語。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

秘匿された第十王子は悪態をつく

なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。 第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。 第十王子の姿を知る者はほとんどいない。 後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。 秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。 ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。 少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。 ノアが秘匿される理由。 十人の妃。 ユリウスを知る渡り人のマホ。 二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

処理中です...