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2. 鏡の中の自分
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「えっ……?」
驚いて思わず出た声も、短い言葉だったのにもかかわらず、やはり全く聞いたことのない声だった。
でも確かに自分の口から発せられた言葉だったから、混乱する頭の中で、必死に対応策を探した。
そうだ! 鏡! 洗面台に鏡があるはずだ。
自分の中に湧き出たありえない可能性を打ち消す為に、僕はガバッと起き上がり、ベッドを降りようとした。
ぐらり
急に頭を動かしたせいか、一気にめまいが襲ってきて、視界が一瞬真っ白になってしまった。
あっ……っと思った瞬間、ガタンと派手な音を立てて、僕はベッドから転がり落ちてしまった。
同時に、全身に走る痛み。頭だけは打たなかったのは幸いか。
「いったぁ……」
痛みの感じるところをあちこち手で擦りながら、なんとか体を起こし、床にぺたりと座り込んだ。
「ミッチ! どうしたの!? わっ! いたそうっ!!」
さきほど驚いて出ていった少年が再び戻ってきた。部屋を出ている間に、派手な音がした上に、僕がベッドから落ちていたから血相を変えて近くに寄ってきた。
「いたたたた……。大丈夫と言いたいところだけど、あちこち痛くて」
おそらく先程慌てて部屋を出ていったのは、誰か大人を呼びに行くためだったのだろう。
少年に続いて部屋に入ってきたのは、ライトブラウンのふんわりしたウェーブヘアで、長さはセミロング。パッチリとしたグリーンの瞳が印象的な大人の女性だった。
その女性は転んでしまった僕を見つけると、慌ててやって来て、ベッドに戻る手伝いをしてくれた。
さっきは声に覚えがないと驚いたけど、よく見ると、僕、なんか小さくなってないか? そう気付いた僕は、自分の目の前で、手をグッパと開いてみた。そして体中をペタペタと触ってみた。
おかしい。僕は十八歳のはずなのに、この体はどう見ても幼稚園児くらいだ。
え? どういうこと? なんで? これは夢……?
「あの……。鏡、ないですか?」
先ほどは鏡を取りに行こうと体を起こし、バランスを崩して転倒してしまったんだ。
そのことを思い出し、女性に鏡を借りられないか聞いてみた。
僕の今の姿を確認すれば、何が起きているのか分かるかもしれない。
「鏡? ……ちょっと待ってね」
女性は隣の部屋から鏡を持ってくると、僕に渡してくれた。
軽く深呼吸をして、手鏡で僕自身を映し出した。
──っ!
一瞬呼吸が止まる。
信じられない。僕は自分の目を疑った。
鏡に写っていたのは、僕の近くで心配そうに見ていた少年と、同じ顔の少年だった。
「な……ん……で……?」
信じられるわけがない。
僕の知っている僕は、日本人らしい黒髪の少し童顔だし身長も低めな自覚はあったけど、それでも成人した18歳の立派な青年だ。……いや、立派かと言われると全くそんなことはなく、でも、慎ましやかに生きてきた。
オメガに産まれたことで虐げられたこともあったけど、リクに出会って僕は幸せだった。
だから、リクと一緒にいたいというささやかな願いを胸に、静かに暮らしていたんだ。
「──リク!!」
混乱の中、僕は思い出した。
大好きなリクは、僕を庇ってこの世を去ってしまった。もう会いたくても二度と会えない現実に、何度も打ちひしがれて、僕もリクのそばに行きたいと願ったんだ。
思い出したくない現実を思い出し、僕は悲しみに襲われる。
でも……僕はあの時思いとどまったじゃないか。
欄干に足をかけ、リクのもとへ行こうとしたけど、リクとの約束を思い出して、もう少し頑張ってみようって心に誓ったはず。
なのに何故、僕は僕じゃない姿で知らない場所にいるの……?
「あっ……」
あの日は雨が降り、視界が悪かった。そんな中での出来事を、徐々に思い出していく。
僕は、居眠り運転のトラックに引かれそうになった女の子を助けて、そのまま──。
驚いて思わず出た声も、短い言葉だったのにもかかわらず、やはり全く聞いたことのない声だった。
でも確かに自分の口から発せられた言葉だったから、混乱する頭の中で、必死に対応策を探した。
そうだ! 鏡! 洗面台に鏡があるはずだ。
自分の中に湧き出たありえない可能性を打ち消す為に、僕はガバッと起き上がり、ベッドを降りようとした。
ぐらり
急に頭を動かしたせいか、一気にめまいが襲ってきて、視界が一瞬真っ白になってしまった。
あっ……っと思った瞬間、ガタンと派手な音を立てて、僕はベッドから転がり落ちてしまった。
同時に、全身に走る痛み。頭だけは打たなかったのは幸いか。
「いったぁ……」
痛みの感じるところをあちこち手で擦りながら、なんとか体を起こし、床にぺたりと座り込んだ。
「ミッチ! どうしたの!? わっ! いたそうっ!!」
さきほど驚いて出ていった少年が再び戻ってきた。部屋を出ている間に、派手な音がした上に、僕がベッドから落ちていたから血相を変えて近くに寄ってきた。
「いたたたた……。大丈夫と言いたいところだけど、あちこち痛くて」
おそらく先程慌てて部屋を出ていったのは、誰か大人を呼びに行くためだったのだろう。
少年に続いて部屋に入ってきたのは、ライトブラウンのふんわりしたウェーブヘアで、長さはセミロング。パッチリとしたグリーンの瞳が印象的な大人の女性だった。
その女性は転んでしまった僕を見つけると、慌ててやって来て、ベッドに戻る手伝いをしてくれた。
さっきは声に覚えがないと驚いたけど、よく見ると、僕、なんか小さくなってないか? そう気付いた僕は、自分の目の前で、手をグッパと開いてみた。そして体中をペタペタと触ってみた。
おかしい。僕は十八歳のはずなのに、この体はどう見ても幼稚園児くらいだ。
え? どういうこと? なんで? これは夢……?
「あの……。鏡、ないですか?」
先ほどは鏡を取りに行こうと体を起こし、バランスを崩して転倒してしまったんだ。
そのことを思い出し、女性に鏡を借りられないか聞いてみた。
僕の今の姿を確認すれば、何が起きているのか分かるかもしれない。
「鏡? ……ちょっと待ってね」
女性は隣の部屋から鏡を持ってくると、僕に渡してくれた。
軽く深呼吸をして、手鏡で僕自身を映し出した。
──っ!
一瞬呼吸が止まる。
信じられない。僕は自分の目を疑った。
鏡に写っていたのは、僕の近くで心配そうに見ていた少年と、同じ顔の少年だった。
「な……ん……で……?」
信じられるわけがない。
僕の知っている僕は、日本人らしい黒髪の少し童顔だし身長も低めな自覚はあったけど、それでも成人した18歳の立派な青年だ。……いや、立派かと言われると全くそんなことはなく、でも、慎ましやかに生きてきた。
オメガに産まれたことで虐げられたこともあったけど、リクに出会って僕は幸せだった。
だから、リクと一緒にいたいというささやかな願いを胸に、静かに暮らしていたんだ。
「──リク!!」
混乱の中、僕は思い出した。
大好きなリクは、僕を庇ってこの世を去ってしまった。もう会いたくても二度と会えない現実に、何度も打ちひしがれて、僕もリクのそばに行きたいと願ったんだ。
思い出したくない現実を思い出し、僕は悲しみに襲われる。
でも……僕はあの時思いとどまったじゃないか。
欄干に足をかけ、リクのもとへ行こうとしたけど、リクとの約束を思い出して、もう少し頑張ってみようって心に誓ったはず。
なのに何故、僕は僕じゃない姿で知らない場所にいるの……?
「あっ……」
あの日は雨が降り、視界が悪かった。そんな中での出来事を、徐々に思い出していく。
僕は、居眠り運転のトラックに引かれそうになった女の子を助けて、そのまま──。
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