4 / 86
3. 双子の謎
しおりを挟む
「……ミッチェル?」
徐々に目を見開き、虚空を見つめて呆然とする僕に、遠慮がちに声がかけられた。
その声が、僕にかけられたものだろうと理解した時、はっと我に返った。
「ご……ごめんなさい。……ちょっと混乱して」
「先生に診てもらったら、もう少し休むと良いわ。先生を呼んでくるから少し待っていてね」
「はい……」
遠慮がちに声をかけてきた女性は、明らかに様子のおかしい僕に対して、不安げな表情を見せた。それでもこんな幼い子供の前だからか、気丈に振る舞い、先生を呼んでくるからと部屋をあとにした。
部屋には、僕と全く同じ顔をした少年と、僕の二人だけが残された。
これだけそっくりな顔をしているし、声までそっくりとなると、考えられるのは『双子』ということだろう。
でも何故、僕にそっくりな少年がいて、それが双子だったとしても、僕は双子で生まれていない。そもそも、鏡に写った僕は、僕の知ってる僕ではなかった。
頭の中でぐちゃぐちゃに絡まった糸は、どこから引き出して解けばよいのか、もうわからない。目が覚めてからの出来事を思い起こしながら、一生懸命解決の糸口を探しても、さらに糸が複雑に絡み合ってしまっただけだった。
「はぁぁぁ……」
大きなため息をつくと、少年がびくっと震えた。
「あ、ごめんね。びっくりさせちゃったみたいだね」
思い出そうと試みているけど、どう頑張っても断片的にしか思い出せない。記憶のほとんどは、靄がかかったように隠されてしまっていた。
この情報量の少なさで、解決の糸を探るのは無理だと判断した僕は、とりあえず、このあとにやって来る先生の話と、双子と思われる少年と、あの大人の女性に話を聞いてみようと思った。
このホテルの専属の医師なのだろうか。呼びに行ってからそれほど待たずに、お医者様と女性が部屋に入ってきた。
「ミッチェルくん、目を覚ましたんだね。良かった。……少し診察させてもらえるかな?」
先生にそう言われ、僕は黙ったままでうなずいた。
それから僕は、ベッドの上に腰掛けたまま先生の診察を受けた。そんなに念入りにと思うほど、先生はあちこち異常がないかと調べているようだった。
しばらくして、やっと先生は優しく微笑んで「熱もすっかり下がったし、胸の音も正常になっているからもう大丈夫」と言った。
会話の中で分かったことは、双子の弟が川に流されてしまったのを双子の兄である僕が助けに行き、それが原因で高熱を出して、一週間も熱が下がらなかったということだ。
「こんな時期に川遊びなんて、水難事故でも起きたら困るからと、強く言って止めるべきだったね」と、先生は女性に向かって言っていた。
部屋の中にいて外の様子のわからない僕にはピンとこないけど、水遊びをするにはもう遅い時期らしい。そのうえ、前日には長時間にわたって雨が降っていたから、増水の危険があったのは分かっていたはずだと。
とりあえず、今はもう大丈夫ということが分かったので、いくつか質問をしてみることにした。
「あのー。ミッチとかミッチェルって、もしかして僕のことですか?」
まずは『自分が誰なのか』確認したかったんだけど、いきなりこの質問はまずかったのかもしれない。
ここにいる全員が、一瞬にして凍りついたかのように、ピタリと動きを止めた。
「……え?」
「ミッチェル……?」
僕の言葉に、唖然として言葉を失った女性と少年は、無言でお互いの顔を見合わせた。
同じように動きを止めた先生は、二人の様子を見てから、深呼吸をするように大きく息を吸うと、静かに僕に問いかけた。
「ミッチェルくん。少し確認して良いかな?」
「はい」
先生は医者だから、こういった場面が前にもあったのかもしれない。
冷静さを失わずに、ゆっくりひとつずつ確認をするように、僕に質問を始めた。
徐々に目を見開き、虚空を見つめて呆然とする僕に、遠慮がちに声がかけられた。
その声が、僕にかけられたものだろうと理解した時、はっと我に返った。
「ご……ごめんなさい。……ちょっと混乱して」
「先生に診てもらったら、もう少し休むと良いわ。先生を呼んでくるから少し待っていてね」
「はい……」
遠慮がちに声をかけてきた女性は、明らかに様子のおかしい僕に対して、不安げな表情を見せた。それでもこんな幼い子供の前だからか、気丈に振る舞い、先生を呼んでくるからと部屋をあとにした。
部屋には、僕と全く同じ顔をした少年と、僕の二人だけが残された。
これだけそっくりな顔をしているし、声までそっくりとなると、考えられるのは『双子』ということだろう。
でも何故、僕にそっくりな少年がいて、それが双子だったとしても、僕は双子で生まれていない。そもそも、鏡に写った僕は、僕の知ってる僕ではなかった。
頭の中でぐちゃぐちゃに絡まった糸は、どこから引き出して解けばよいのか、もうわからない。目が覚めてからの出来事を思い起こしながら、一生懸命解決の糸口を探しても、さらに糸が複雑に絡み合ってしまっただけだった。
「はぁぁぁ……」
大きなため息をつくと、少年がびくっと震えた。
「あ、ごめんね。びっくりさせちゃったみたいだね」
思い出そうと試みているけど、どう頑張っても断片的にしか思い出せない。記憶のほとんどは、靄がかかったように隠されてしまっていた。
この情報量の少なさで、解決の糸を探るのは無理だと判断した僕は、とりあえず、このあとにやって来る先生の話と、双子と思われる少年と、あの大人の女性に話を聞いてみようと思った。
このホテルの専属の医師なのだろうか。呼びに行ってからそれほど待たずに、お医者様と女性が部屋に入ってきた。
「ミッチェルくん、目を覚ましたんだね。良かった。……少し診察させてもらえるかな?」
先生にそう言われ、僕は黙ったままでうなずいた。
それから僕は、ベッドの上に腰掛けたまま先生の診察を受けた。そんなに念入りにと思うほど、先生はあちこち異常がないかと調べているようだった。
しばらくして、やっと先生は優しく微笑んで「熱もすっかり下がったし、胸の音も正常になっているからもう大丈夫」と言った。
会話の中で分かったことは、双子の弟が川に流されてしまったのを双子の兄である僕が助けに行き、それが原因で高熱を出して、一週間も熱が下がらなかったということだ。
「こんな時期に川遊びなんて、水難事故でも起きたら困るからと、強く言って止めるべきだったね」と、先生は女性に向かって言っていた。
部屋の中にいて外の様子のわからない僕にはピンとこないけど、水遊びをするにはもう遅い時期らしい。そのうえ、前日には長時間にわたって雨が降っていたから、増水の危険があったのは分かっていたはずだと。
とりあえず、今はもう大丈夫ということが分かったので、いくつか質問をしてみることにした。
「あのー。ミッチとかミッチェルって、もしかして僕のことですか?」
まずは『自分が誰なのか』確認したかったんだけど、いきなりこの質問はまずかったのかもしれない。
ここにいる全員が、一瞬にして凍りついたかのように、ピタリと動きを止めた。
「……え?」
「ミッチェル……?」
僕の言葉に、唖然として言葉を失った女性と少年は、無言でお互いの顔を見合わせた。
同じように動きを止めた先生は、二人の様子を見てから、深呼吸をするように大きく息を吸うと、静かに僕に問いかけた。
「ミッチェルくん。少し確認して良いかな?」
「はい」
先生は医者だから、こういった場面が前にもあったのかもしれない。
冷静さを失わずに、ゆっくりひとつずつ確認をするように、僕に質問を始めた。
229
あなたにおすすめの小説
マリオネットが、糸を断つ時。
せんぷう
BL
異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。
オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。
第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。
そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。
『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』
金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。
『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!
許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』
そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。
王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。
『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』
『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』
『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』
しかし、オレは彼に拾われた。
どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。
気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!
しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?
スラム出身、第十一王子の守護魔導師。
これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。
※BL作品
恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。
.
【完結】僕はキミ専属の魔力付与能力者
みやこ嬢
BL
【2025/01/24 完結、ファンタジーBL】
リアンはウラガヌス伯爵家の養い子。魔力がないという理由で貴族教育を受けさせてもらえないまま18の成人を迎えた。伯爵家の兄妹に良いように使われてきたリアンにとって唯一安らげる場所は月に数度訪れる孤児院だけ。その孤児院でたまに会う友人『サイ』と一緒に子どもたちと遊んでいる間は嫌なことを全て忘れられた。
ある日、リアンに魔力付与能力があることが判明する。能力を見抜いた魔法省職員ドロテアがウラガヌス伯爵家にリアンの今後について話に行くが、何故か軟禁されてしまう。ウラガヌス伯爵はリアンの能力を利用して高位貴族に娘を嫁がせようと画策していた。
そして見合いの日、リアンは初めて孤児院以外の場所で友人『サイ』に出会う。彼はレイディエーレ侯爵家の跡取り息子サイラスだったのだ。明らかな身分の違いや彼を騙す片棒を担いだ負い目からサイラスを拒絶してしまうリアン。
「君とは対等な友人だと思っていた」
素直になれない魔力付与能力者リアンと、無自覚なままリアンをそばに置こうとするサイラス。両片想い状態の二人が様々な障害を乗り越えて幸せを掴むまでの物語です。
【独占欲強め侯爵家跡取り×ワケあり魔力付与能力者】
* * *
2024/11/15 一瞬ホトラン入ってました。感謝!
高貴なる生徒会長は、今日も副会長を慈しむ ~学園の貴公子と没落貴族のすれ違い救済ライフ~
夕凪ゆな
BL
「来週の木曜日、少しだけ僕に時間をくれないか」
学園の太陽と慕われるセオドリックは、副会長レイモンドに告げた。
というのも、来たる木曜日はレイモンドの誕生日。セオドリックは、密かに、彼を祝うサプライズを画策していたのだ。
しかし、レイモンドはあっさりと断る。
「……木曜は、予定がある」
レイモンドをどうしても祝いたいセオドリックと、独りで過ごしたいレイモンド。
果たして、セオドリックのサプライズは成功するのか――?
【オムニバス形式の作品です】
※小説家になろう、エブリスタでも連載中
※全28話完結済み
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
美容整形するために夜間魔法学校に通っているだなんて言えない
陽花紫
BL
整形男子レイは、異世界転移をした際に整形前の顔に戻ってしまう。
魔法が当たり前の世界で美容医療などあるはずもなく、レイは魔法で整形をするために夜間魔法学校に通いはじめる。幸いにも、魔力はほんの少しだけあった。レイは不純な動機を隠しながら、クラスメイト達と日々を過ごしていく。
小説家になろうにも掲載中です。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる