12 / 86
11. もう大丈夫
しおりを挟む
今まで同年代の子と交流する機会はほとんどなく、顔を合わせたとしても、両親の後ろについていきペコリと挨拶をする程度。僕たちが個人として話すということはほとんどなかった。
一ヶ月ほど前に初めて会った少年に、そんなに執着するつもりはないのに、なぜか気になって仕方がない。もしかしたら助けてもらった恩を勘違いしているのかもしれないけど、この胸のざわつきは何なのだろうと考えていた。
そして、やっと再び対面する約束を取り付けることができ、もう一度ちゃんとお礼が言えると、今度はもっと話ができると、気持ちが高鳴る中会いに行った。それなのに、目の前にいるのは、熱が下がらず、目も覚まさないフレッドだった。
「先生。あれからもう三日も過ぎてるのに、全然良くならないじゃないですか」
「そうだよ。せんせいがみてくれるから、もうだいじょうぶだっていったのに!」
僕とフィルは、先生が悪いわけではないのが分かっているのに、どうして? と、問い詰めてしまう。先生に診てもらえさえすれば、きっと大丈夫って信じてたのに。
「ミッチェルくん、フィラットくん。今フレドリックくんは頑張って戦っているんだよ。病気に勝ったら、元気なフレドリックくんに会えるよ」
幼い僕たちの、高ぶる感情をなだめるように話しかけながら、先生はフレッドの診察をした。
相変わらず高熱は続いているけど、呼吸は安定しているから大丈夫だろうと言った。
僕たちは、先生の言葉を信じて待つことしかできなかった。
◇
フレッドを家に連れ帰ってから、五日目の朝のことだった。
僕たちはフレッドの様子をうかがうために、フレッドを休ませている離れに向かった。
本来は、みすぼらしい少年を簡単に家には入れないのだろうけど、フレッドは恩人である上に、高熱を出していたため急を要すると判断された。離れの方に運び込み診察をし、体を拭いて身綺麗にすると、そのまま療養させることになった。
毎日僕たちは、朝一番に様子を見に行くのが日課となっていて、今日もフィルと二人でドキドキしながらドアを開けた。
そこで見た光景は、僕たち二人の気持ちを一気に押し上げるものだった。
「「フレッド!!」」
僕たちの声はピッタリとハマり、部屋中に響き渡った。
まだベッドに横たわったままだけど、たしかにフレッドはしっかりと目を開けこっちを見ていた。
「ここは……どこ?」
自分の置かれている状況がわからないフレッドは、やっと聞き取れるようなか細い声で聞いた。
それでも見知った顔を見つけたのは、不安の中でもホッと安心できる要素だっただろう。
「僕たちの家だよ」
「ぼくたちのいえだよ」
再び、僕とフィルの声が重なった。
普段は、前世の十八歳の記憶がある僕の言葉は少し大人びていて、本当の八歳のフィルの言葉は年相応なため、双子でも言葉がピッタリ合うことは少ない。だけど今日は、フレッドを思う気持ちがそうさせたのか、ピッタリと息が合う。
「なんでここに……?」
フレッドは不思議そうに首を傾げた。
それもそのはず、あの馬小屋のような……いや多分、本当に元は馬小屋なのだろう。窓と言ってもただ木枠があるだけで、ガラス戸もなければ、代わりになる扉のようなものはなかった。
そんな場所でも、フレッドにとっては寝起きする場所。具合が悪くなったフレッドはその小屋で横になったところまでは記憶があるはず。なのに気付いたら、知らない場所のベッドの上で目を覚ました。状況がつかめなくても仕方がない。
「フレッドがめをさましたって、いってくる!」
フレッドからの質問に答える前に、フィルが急いで部屋を出ていった。こういう時は大人に報告するのはとても大切な事だ。
けど、今までのフィルだったら、フレッドのそばにいたいって駄々をこねて動かなかったかもしれない。それが自ら進んで呼びに行ってくれるなんて、成長したなぁって僕は嬉しくなった。
その後すぐ先生と、続いてお父様とお母様も部屋に入ってきた。
先生は僕たちの家の専属医師で、緊急時にも対応できるように、この屋敷に住み込みで働いている。
先生はフレッドの診察をし、いくつか質問をしたあとニッコリと微笑んだ。
「もう大丈夫だね」
一ヶ月ほど前に初めて会った少年に、そんなに執着するつもりはないのに、なぜか気になって仕方がない。もしかしたら助けてもらった恩を勘違いしているのかもしれないけど、この胸のざわつきは何なのだろうと考えていた。
そして、やっと再び対面する約束を取り付けることができ、もう一度ちゃんとお礼が言えると、今度はもっと話ができると、気持ちが高鳴る中会いに行った。それなのに、目の前にいるのは、熱が下がらず、目も覚まさないフレッドだった。
「先生。あれからもう三日も過ぎてるのに、全然良くならないじゃないですか」
「そうだよ。せんせいがみてくれるから、もうだいじょうぶだっていったのに!」
僕とフィルは、先生が悪いわけではないのが分かっているのに、どうして? と、問い詰めてしまう。先生に診てもらえさえすれば、きっと大丈夫って信じてたのに。
「ミッチェルくん、フィラットくん。今フレドリックくんは頑張って戦っているんだよ。病気に勝ったら、元気なフレドリックくんに会えるよ」
幼い僕たちの、高ぶる感情をなだめるように話しかけながら、先生はフレッドの診察をした。
相変わらず高熱は続いているけど、呼吸は安定しているから大丈夫だろうと言った。
僕たちは、先生の言葉を信じて待つことしかできなかった。
◇
フレッドを家に連れ帰ってから、五日目の朝のことだった。
僕たちはフレッドの様子をうかがうために、フレッドを休ませている離れに向かった。
本来は、みすぼらしい少年を簡単に家には入れないのだろうけど、フレッドは恩人である上に、高熱を出していたため急を要すると判断された。離れの方に運び込み診察をし、体を拭いて身綺麗にすると、そのまま療養させることになった。
毎日僕たちは、朝一番に様子を見に行くのが日課となっていて、今日もフィルと二人でドキドキしながらドアを開けた。
そこで見た光景は、僕たち二人の気持ちを一気に押し上げるものだった。
「「フレッド!!」」
僕たちの声はピッタリとハマり、部屋中に響き渡った。
まだベッドに横たわったままだけど、たしかにフレッドはしっかりと目を開けこっちを見ていた。
「ここは……どこ?」
自分の置かれている状況がわからないフレッドは、やっと聞き取れるようなか細い声で聞いた。
それでも見知った顔を見つけたのは、不安の中でもホッと安心できる要素だっただろう。
「僕たちの家だよ」
「ぼくたちのいえだよ」
再び、僕とフィルの声が重なった。
普段は、前世の十八歳の記憶がある僕の言葉は少し大人びていて、本当の八歳のフィルの言葉は年相応なため、双子でも言葉がピッタリ合うことは少ない。だけど今日は、フレッドを思う気持ちがそうさせたのか、ピッタリと息が合う。
「なんでここに……?」
フレッドは不思議そうに首を傾げた。
それもそのはず、あの馬小屋のような……いや多分、本当に元は馬小屋なのだろう。窓と言ってもただ木枠があるだけで、ガラス戸もなければ、代わりになる扉のようなものはなかった。
そんな場所でも、フレッドにとっては寝起きする場所。具合が悪くなったフレッドはその小屋で横になったところまでは記憶があるはず。なのに気付いたら、知らない場所のベッドの上で目を覚ました。状況がつかめなくても仕方がない。
「フレッドがめをさましたって、いってくる!」
フレッドからの質問に答える前に、フィルが急いで部屋を出ていった。こういう時は大人に報告するのはとても大切な事だ。
けど、今までのフィルだったら、フレッドのそばにいたいって駄々をこねて動かなかったかもしれない。それが自ら進んで呼びに行ってくれるなんて、成長したなぁって僕は嬉しくなった。
その後すぐ先生と、続いてお父様とお母様も部屋に入ってきた。
先生は僕たちの家の専属医師で、緊急時にも対応できるように、この屋敷に住み込みで働いている。
先生はフレッドの診察をし、いくつか質問をしたあとニッコリと微笑んだ。
「もう大丈夫だね」
196
あなたにおすすめの小説
【本編完結済】神子は二度、姿を現す
江多之折(エタノール)
BL
1/7外伝含め完結
ファンタジー世界で成人し、就職しに王城を訪れたところ異世界に転移した少年が転移先の世界で神子となり、壮絶な日々の末、自ら命を絶った前世を思い出した主人公。
死んでも戻りたかった元の世界には戻ることなく異世界で生まれ変わっていた事に絶望したが
神子が亡くなった後に取り残された王子の苦しみを知り、向き合う事を決めた。
戻れなかった事を恨み、死んだことを後悔し、傷付いた王子を助けたいと願う少年の葛藤。
王子様×元神子が転生した侍従の過去の苦しみに向き合い、悩みながら乗り越えるための物語。
※小説家になろうに掲載していた作品を改修して投稿しています。
描写はキスまでの全年齢BL
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
きっと、君は知らない
mahiro
BL
前世、というのだろうか。
俺は前、日本という国で暮らしていて、あの日は中学時代にお世話になった先輩の結婚式に参列していた。
大人になった先輩と綺麗な女性の幸せそうな姿に胸を痛めながら見つめていると二人の間に産まれたという女の子がひとりで車道に向かい歩いている姿が目に入った。
皆が主役の二人に夢中で子供の存在に気付いておらず、俺は慌ててその子供のもとへと向かった。
あと少しで追い付くというタイミングで大型の車がこちらに向かってくるのが見え、慌ててその子供の手を掴み、彼らのいる方へと突き飛ばした。
次の瞬間、俺は驚く先輩の目と合ったような気がするが、俺の意識はそこで途絶えてしまった。
次に目が覚めたのは見知らぬ世界で、聞いたことのない言葉が行き交っていた。
それから暫く様子を見ていたが、どうやら俺は異世界に転生したらしく………?
聖女の兄で、すみません!
たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。
三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。
そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。
BL。ラブコメ異世界ファンタジー。
嘘つき王と影の騎士
篠雨
BL
「俺の役割は、貴方を守ることだ。……例え、貴方自身からも」
国の平穏を一身に背負い、十二年間「聖王」という偶像を演じ続けてきたセシル。
酷使し続けた心身はすでに限界を迎え、その命の灯火は今にも消えようとしていた。
そんな折、現れたのは異世界からの「転移者」。
代わりを見つけた国は、用済みとなったセシルからすべてを剥奪し、最果ての地へと追放する。
死を待つためだけに辿り着いた冬の山。
絶望に沈むセシルの前に現れたのは、かつて冷徹に王を監視し続けていた近衛騎士団長、アルヴィスだった。
守るべき王も、守るべき国も失ったはずの二人が過ごす、狭い小屋での夜。
無価値になり、壊れかけた自分を、なぜこの男は、そんな瞳で見つめるのか。
なぜ、そんなにも強く、抱きしめるのか。
これは、すべてを失った「聖王」が、一人の男の熱に暴かれ、再生していくまでの物語。
不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)
秘匿された第十王子は悪態をつく
なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。
第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。
第十王子の姿を知る者はほとんどいない。
後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。
秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。
ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。
少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。
ノアが秘匿される理由。
十人の妃。
ユリウスを知る渡り人のマホ。
二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる