【本編完結】再び巡り合う時 ~転生オメガバース~

一ノ瀬麻紀

文字の大きさ
13 / 86

12. 提案

しおりを挟む
 先生の「大丈夫」という言葉をもらったその日から、フレッドはみるみるうちに回復していった。

 熱が長引いたのは栄養不足など、もともとの健康状態が不安定だったことが大きな要因だった。
 フレッドは一目でわかるほど痩せていたし、身なりもあまり良くなく、生活環境が良いとは到底思えなかった。その上、あんな場所で高熱で倒れていたのに、医者にも診てもらえなかった。
 詳しい事情はわからないけど、訪ねたあの家には何か問題があるのかもしれないと、お父様もお母様も、とても心配そうな顔をしていた。


「このままぼくたちのいえで、フレッドといっしょにいられないの?」

 フレッドの体調もすっかり良くなった頃、フレッドは「お世話になりました」と、お礼の言葉を口にした。その言葉に続けて、「もう帰らないと」と言い出したので、不安そうにフィルが口を挟んだ。
 幼いフィルにだって、フレッドの生活環境がおかしいということくらい分かるだろう。またあの家に戻ったら、何があるかわからないと思ってしまうのは、僕も一緒の気持ちだ。

「その話なんだけど……」

 お母様は、少し悩んだように言葉を止めたあと、ゆっくりと再び口をひらいた。

「住み込みの使用人として、うちで働いてもらうというのはどうかしら?」
「使用人?」
「しようにん?」

 僕もフィルも、イマイチ意味がわからず、首を傾げた。

「ミッチェルとフィラットの話し相手とか……。そうね、ふたりの身の回りのお世話をしてもらおうかと思うの」

 お母様は、僕たちの会話のあとに、そのままフレッドに向き合って、ニッコリと微笑んだ。

「今の雇い主さんとは、話はついているから、心配しなくて大丈夫よ」
「え、でも……。本当に良いんですか……?」

 フレッドは困惑したようにそう言うと、目を大きく開いたまま、僕たち双子とお母様の顔を交互に見た。

「もちろんよ。同じ歳くらいの方が話しやすいこともあるだろうし、うちの子達のお世話係として働いてくれるなら、こちらとしても助かるわ」

 お母様はそう言うと、もう一度ニッコリと微笑んだ。

 フレッドはあんな状況で働いていたとはいえ、正式雇用されていたはずだ。それを勝手に連れて来るわけにはいかないから、不安要素としてはそこだろう。けれどお母様が言うように、あちらの雇い主として話がついているのなら、何ら問題はない。
 僕もフィルも、ドキドキしながらフレッドの返事を待った。

「……お世話に、なります」

 まだ少し戸惑いながらも、フレッドはそう言って深く頭を下げた。

 「やったー!」

 その言葉を待ってましたと言わんばかりに、僕とフィルは歓声をあげて抱き合った。
 高熱を出して倒れていたフレッドを発見した時は、どうなるかと思ったけど、もっと一緒にいたいという願いが叶うなんて、夢みたいだ。

「フレッド、僕たちはもう家族だね!」

 僕はとても嬉しい気持ちになって、晴れ晴れしい気持ちでフレッドにそう言った。
 特に深い意味があったわけでなく、とにかく嬉しくて放ったその言葉だったけど、なにか懐かしいような感覚に包まれた。
 温かな気持ちのままフレッドを見ると、同じように僕を見て、少し照れたように微笑んだ。

 フィルは、お母様にありがとうって言いながら抱きついていたので、僕たちのこのやり取りには気付いていないようだった。だから僕とフレッドの二人だけの秘密のように感じて、くすぐったいような不思議な気持ちになった。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

【本編完結済】神子は二度、姿を現す

江多之折(エタノール)
BL
1/7外伝含め完結 ファンタジー世界で成人し、就職しに王城を訪れたところ異世界に転移した少年が転移先の世界で神子となり、壮絶な日々の末、自ら命を絶った前世を思い出した主人公。 死んでも戻りたかった元の世界には戻ることなく異世界で生まれ変わっていた事に絶望したが 神子が亡くなった後に取り残された王子の苦しみを知り、向き合う事を決めた。 戻れなかった事を恨み、死んだことを後悔し、傷付いた王子を助けたいと願う少年の葛藤。 王子様×元神子が転生した侍従の過去の苦しみに向き合い、悩みながら乗り越えるための物語。 ※小説家になろうに掲載していた作品を改修して投稿しています。 描写はキスまでの全年齢BL

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

きっと、君は知らない

mahiro
BL
前世、というのだろうか。 俺は前、日本という国で暮らしていて、あの日は中学時代にお世話になった先輩の結婚式に参列していた。 大人になった先輩と綺麗な女性の幸せそうな姿に胸を痛めながら見つめていると二人の間に産まれたという女の子がひとりで車道に向かい歩いている姿が目に入った。 皆が主役の二人に夢中で子供の存在に気付いておらず、俺は慌ててその子供のもとへと向かった。 あと少しで追い付くというタイミングで大型の車がこちらに向かってくるのが見え、慌ててその子供の手を掴み、彼らのいる方へと突き飛ばした。 次の瞬間、俺は驚く先輩の目と合ったような気がするが、俺の意識はそこで途絶えてしまった。 次に目が覚めたのは見知らぬ世界で、聞いたことのない言葉が行き交っていた。 それから暫く様子を見ていたが、どうやら俺は異世界に転生したらしく………?

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

嘘つき王と影の騎士

篠雨
BL
「俺の役割は、貴方を守ることだ。……例え、貴方自身からも」 国の平穏を一身に背負い、十二年間「聖王」という偶像を演じ続けてきたセシル。 酷使し続けた心身はすでに限界を迎え、その命の灯火は今にも消えようとしていた。 そんな折、現れたのは異世界からの「転移者」。 代わりを見つけた国は、用済みとなったセシルからすべてを剥奪し、最果ての地へと追放する。 死を待つためだけに辿り着いた冬の山。 絶望に沈むセシルの前に現れたのは、かつて冷徹に王を監視し続けていた近衛騎士団長、アルヴィスだった。 守るべき王も、守るべき国も失ったはずの二人が過ごす、狭い小屋での夜。 無価値になり、壊れかけた自分を、なぜこの男は、そんな瞳で見つめるのか。 なぜ、そんなにも強く、抱きしめるのか。 これは、すべてを失った「聖王」が、一人の男の熱に暴かれ、再生していくまでの物語。

秘匿された第十王子は悪態をつく

なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。 第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。 第十王子の姿を知る者はほとんどいない。 後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。 秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。 ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。 少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。 ノアが秘匿される理由。 十人の妃。 ユリウスを知る渡り人のマホ。 二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

処理中です...