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30. 記憶の扉(フレッド視点)
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気付くと俺は、深い海の中……いや、広い空の上?
ここがどこで、俺は何をしているのか分からなかったけど、とにかくふわふわとして気持ちが良かった。
この広い空間をあてもなく彷徨っていると、ひとつの大きな扉の前にたどり着いた。
「なんだ、これは……?」
あんぐりと口を開けて見上げるほど、大きな扉だった。
取っ手には手が届かないし、押すことも引くことも無理だとわかっているのに、その扉を開けなければならないと心が訴えかけてくる。
その心に従うようにふっと手を伸ばすと、ゆっくりと大きな扉は開いて、まばゆい光に包まれた。
その瞬間、今まで知らなかった記憶や感情が、一気に体中に流れ込んできた。
「これ……は……俺の記憶……?」
もともとは自分の記憶なのだから、説明など必要はなかった。
それが前世の自分『リク』の記憶だと、瞬時に理解した。
走馬灯のように、『ミチ』との出会い、過ごした日々、恋に落ちて、将来を誓いあう。……そんな場面が次から次へと映し出された。
そして、場面の移り変わりがゆっくりになり、部屋でリクとミチが仲良さそうに肩を寄せ合いながら、話をする場面へ。
『なぁ、生まれ変わりを信じるか?』そう言うリクに、ミチは『ファンタジーの世界みたいだね』そう言って微笑む。
『生まれ変わっても、俺たちは再び出会って、また恋に落ちるんだ。絶対ミチを見つけ出すから、俺になにかあっても、後追いなんか考えるんじゃないぞ』リクには予感があって、ミチに強めの口調で念を押すように言った。
『じゃあ、リクも約束して? 僕のために自分の命を大切にしてね』そう言うとミチは、リクにぎゅっと抱きついた。
リクが前世で突然『なぁ、生まれ変わりを信じるか?』と言ったのには理由があった。
リクは小さな頃から不思議な体験をすることが多かった。母親の話によると、胎児の頃の記憶もあったらしく、リクが知り得ないはずのことを、突然話しだしたこともあったと言っていた。
人は誰しも一度は不吉な予感というのを感じたことがあると思う。予知夢なのか、お告げなのか、たまたまなのかわからないけど、それがリクは特に強かった。
生まれ変わりの話をする前の日、リクは夢を見ていた。明らかに今自分たちが生きている世界とは違う、まるでおとぎ話のような世界。
ひとつのストーリーを動画で見ているというより、静止画がどんどん切り替わるスライドショーのようだった。
ただの夢なのかもしれない。けどリクは自分に何かが起こって、生まれ変わるのだろうと確信をした。
なので、何かが起こってしまう前にと、ミチに生まれ変わりの話をした。思い過ごしなら、それに越したことはないと思いながら……。
けれど、あの日……。俺が漠然と感じていた不吉な予感は、見事に的中してしまった。
また場面がパッと変わった。
『もう知らない! 触らないで!』ミチは悲しみをぶちまけるように、吐き捨てた。
あの時、サプライズに拘らずに、真実を話すべきだった。『誤解なんだ。ミチにサプライズで指輪を贈って、プロポーズをするつもりだったんだ』って、ちゃんと伝えることが出来たら、先の未来は変わっていたのだろうか。
ミチはそのまま手を振り払い、逃げるように走り出した。そして車にはねられそうになって……。
ブツッと電源を切ったテレビ画面のように、真っ暗になって何も見えなくなった。
俺の……リクだった頃の記憶は、ここまでだった。
ここがどこで、俺は何をしているのか分からなかったけど、とにかくふわふわとして気持ちが良かった。
この広い空間をあてもなく彷徨っていると、ひとつの大きな扉の前にたどり着いた。
「なんだ、これは……?」
あんぐりと口を開けて見上げるほど、大きな扉だった。
取っ手には手が届かないし、押すことも引くことも無理だとわかっているのに、その扉を開けなければならないと心が訴えかけてくる。
その心に従うようにふっと手を伸ばすと、ゆっくりと大きな扉は開いて、まばゆい光に包まれた。
その瞬間、今まで知らなかった記憶や感情が、一気に体中に流れ込んできた。
「これ……は……俺の記憶……?」
もともとは自分の記憶なのだから、説明など必要はなかった。
それが前世の自分『リク』の記憶だと、瞬時に理解した。
走馬灯のように、『ミチ』との出会い、過ごした日々、恋に落ちて、将来を誓いあう。……そんな場面が次から次へと映し出された。
そして、場面の移り変わりがゆっくりになり、部屋でリクとミチが仲良さそうに肩を寄せ合いながら、話をする場面へ。
『なぁ、生まれ変わりを信じるか?』そう言うリクに、ミチは『ファンタジーの世界みたいだね』そう言って微笑む。
『生まれ変わっても、俺たちは再び出会って、また恋に落ちるんだ。絶対ミチを見つけ出すから、俺になにかあっても、後追いなんか考えるんじゃないぞ』リクには予感があって、ミチに強めの口調で念を押すように言った。
『じゃあ、リクも約束して? 僕のために自分の命を大切にしてね』そう言うとミチは、リクにぎゅっと抱きついた。
リクが前世で突然『なぁ、生まれ変わりを信じるか?』と言ったのには理由があった。
リクは小さな頃から不思議な体験をすることが多かった。母親の話によると、胎児の頃の記憶もあったらしく、リクが知り得ないはずのことを、突然話しだしたこともあったと言っていた。
人は誰しも一度は不吉な予感というのを感じたことがあると思う。予知夢なのか、お告げなのか、たまたまなのかわからないけど、それがリクは特に強かった。
生まれ変わりの話をする前の日、リクは夢を見ていた。明らかに今自分たちが生きている世界とは違う、まるでおとぎ話のような世界。
ひとつのストーリーを動画で見ているというより、静止画がどんどん切り替わるスライドショーのようだった。
ただの夢なのかもしれない。けどリクは自分に何かが起こって、生まれ変わるのだろうと確信をした。
なので、何かが起こってしまう前にと、ミチに生まれ変わりの話をした。思い過ごしなら、それに越したことはないと思いながら……。
けれど、あの日……。俺が漠然と感じていた不吉な予感は、見事に的中してしまった。
また場面がパッと変わった。
『もう知らない! 触らないで!』ミチは悲しみをぶちまけるように、吐き捨てた。
あの時、サプライズに拘らずに、真実を話すべきだった。『誤解なんだ。ミチにサプライズで指輪を贈って、プロポーズをするつもりだったんだ』って、ちゃんと伝えることが出来たら、先の未来は変わっていたのだろうか。
ミチはそのまま手を振り払い、逃げるように走り出した。そして車にはねられそうになって……。
ブツッと電源を切ったテレビ画面のように、真っ暗になって何も見えなくなった。
俺の……リクだった頃の記憶は、ここまでだった。
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