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32. 再会の扉
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目が覚めるとすぐに扉の前まで行き、向こうにいるはずの監視役の使用人に声をかけた。
「おはようございます。昨日は、フレッドの無事を教えてくれてありがとうございました」
いつもなら、返事はないものの、使用人がそこにいることを示す僅かな足音や衣擦れの音が聞こえる。なのに、今日はその音すらしない。
「……?」
不思議に思い、耳を澄ませてみたけど、やはり何の気配も感じられない。
扉は外から鍵がかけられているため、開けて確認することはできない。食事が運ばれてくる時まで待って、改めてお礼を伝えようと決めた。
唯一の窓から差し込む光が、部屋の中をじわじわと明るくしていく。時計はないけれど、もうすぐお昼になろうとしていることは分かった。
そんな時、遠くから「コツコツ」とかすかな音が聞こえてきた。その規則正しい足音は徐々に近づき、階段を登ってきているのだとはっきりわかった。
いつもなら、扉の前の監視役の使用人と、一日に一度の食事を運んでくる使用人しかいない。お昼に人が来る予定はないから、誰なのかわからず、僕の心臓が高鳴る。
その足音は扉の前でピタリと止まると、少しの間が空いたあと、遠慮がちに扉がノックされた。
コンコン
誰か分からない不安が押し寄せ、心臓の音がバクバクと響き渡る中、聞こえてきたのは想像もしていなかった人の声だった。
「ミッチェル……」
「お母様……っ!?」
この塔に閉じ込められてから、ずっと聞くことのなかった声に、僕は一瞬状況が理解できずに固まってしまったけど、すぐその声がお母様だと理解し、思わず大きな声をあげた。
「扉を開けても……?」
戸惑いや遠慮というものが含まれたような声に、僕は大きくうなずいた。無言でうなずいたところでお母様には伝わらないのに、久しぶりに聞いたお母様の声に胸が一杯になって言葉が出なかった。
「どうぞ、開けてください……」
やっと絞り出した返事を確認したのか、ガチャっと鍵を開ける音がして、ゆっくりと扉が開かれた。そこには、二年半ぶりのお母様の姿があった。
「……お母様っ!!」
僕は感極まって、思わずお母様に抱きつき、『お母様』と何度も呼びかけながら、小さな子どもに戻ったかのように、わんわんと声を上げて泣いた。
お母様は、そんな僕を突き放すことなく、ただ黙って、背中を静かにポンポンと優しく撫で続けてくれた。
「ミッチェル、会いたかったわ。……寂しい思いをさせてしまって、ごめんなさい……。あの時は、ああするしかなかったの……。でも、ずっと会いたかった」
お母様の声は震えていて、あの日の後悔の念が伝わってきて、僕の心に深く響いた。
『僕もお母様に会いたかったです』って伝えたいのに、涙が止まらない僕の口からは嗚咽ばかりで言葉が出て来ることはなく、ただお母様の温もりに包まれひたすら涙を流していた。
もしかしたら、家都合の政略結婚のために僕をここから連れ出し、もう二度と戻ってこないようにと言うためにここへ来たのかもしれない。
でもなぜか僕は、そんな可能性は一ミリも考えず、お母様が僕に会いに来てくれたんだと信じて疑わなかった。
ここに閉じ込められたあの日からずっと緊張したままだった心が、お母様の匂いと温もりに包まれて、久しぶりに心の底から安らぎを得たような気がした。
「おはようございます。昨日は、フレッドの無事を教えてくれてありがとうございました」
いつもなら、返事はないものの、使用人がそこにいることを示す僅かな足音や衣擦れの音が聞こえる。なのに、今日はその音すらしない。
「……?」
不思議に思い、耳を澄ませてみたけど、やはり何の気配も感じられない。
扉は外から鍵がかけられているため、開けて確認することはできない。食事が運ばれてくる時まで待って、改めてお礼を伝えようと決めた。
唯一の窓から差し込む光が、部屋の中をじわじわと明るくしていく。時計はないけれど、もうすぐお昼になろうとしていることは分かった。
そんな時、遠くから「コツコツ」とかすかな音が聞こえてきた。その規則正しい足音は徐々に近づき、階段を登ってきているのだとはっきりわかった。
いつもなら、扉の前の監視役の使用人と、一日に一度の食事を運んでくる使用人しかいない。お昼に人が来る予定はないから、誰なのかわからず、僕の心臓が高鳴る。
その足音は扉の前でピタリと止まると、少しの間が空いたあと、遠慮がちに扉がノックされた。
コンコン
誰か分からない不安が押し寄せ、心臓の音がバクバクと響き渡る中、聞こえてきたのは想像もしていなかった人の声だった。
「ミッチェル……」
「お母様……っ!?」
この塔に閉じ込められてから、ずっと聞くことのなかった声に、僕は一瞬状況が理解できずに固まってしまったけど、すぐその声がお母様だと理解し、思わず大きな声をあげた。
「扉を開けても……?」
戸惑いや遠慮というものが含まれたような声に、僕は大きくうなずいた。無言でうなずいたところでお母様には伝わらないのに、久しぶりに聞いたお母様の声に胸が一杯になって言葉が出なかった。
「どうぞ、開けてください……」
やっと絞り出した返事を確認したのか、ガチャっと鍵を開ける音がして、ゆっくりと扉が開かれた。そこには、二年半ぶりのお母様の姿があった。
「……お母様っ!!」
僕は感極まって、思わずお母様に抱きつき、『お母様』と何度も呼びかけながら、小さな子どもに戻ったかのように、わんわんと声を上げて泣いた。
お母様は、そんな僕を突き放すことなく、ただ黙って、背中を静かにポンポンと優しく撫で続けてくれた。
「ミッチェル、会いたかったわ。……寂しい思いをさせてしまって、ごめんなさい……。あの時は、ああするしかなかったの……。でも、ずっと会いたかった」
お母様の声は震えていて、あの日の後悔の念が伝わってきて、僕の心に深く響いた。
『僕もお母様に会いたかったです』って伝えたいのに、涙が止まらない僕の口からは嗚咽ばかりで言葉が出て来ることはなく、ただお母様の温もりに包まれひたすら涙を流していた。
もしかしたら、家都合の政略結婚のために僕をここから連れ出し、もう二度と戻ってこないようにと言うためにここへ来たのかもしれない。
でもなぜか僕は、そんな可能性は一ミリも考えず、お母様が僕に会いに来てくれたんだと信じて疑わなかった。
ここに閉じ込められたあの日からずっと緊張したままだった心が、お母様の匂いと温もりに包まれて、久しぶりに心の底から安らぎを得たような気がした。
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