【本編完結】再び巡り合う時 ~転生オメガバース~

一ノ瀬麻紀

文字の大きさ
63 / 86

62. 慈善事業

しおりを挟む
 再び泣き出してしまった僕を、フレッドはごめんと大丈夫を繰り返しながら、優しく撫でてくれた。

 もとはと言えば、僕の心無い言葉が原因だった。フレッドはただ僕を助けたいという一心で行動を起こしただけなのに、その僕が、婚約の取り消しはまだ間に合うからなんていってしまったんだ。声を荒げてしまうのは無理もない。フレッドが謝る必要なんてこれっぽっちもない。
 それでも、フレッドはごめんと大丈夫を繰り返す。

 そしてやっと僕が落ち着いたのを感じて、抱きしめている腕を緩めた。

「ごめんね、びっくりしちゃって……」
「俺の配慮が足りなかった。公爵家まで巻き込んでのことだと考えると、驚くよな。……でも、俺の気持ちは変わらないよ。ミッチと二人で、アーホルン公爵家を守り、ハイネル伯爵家の再建と、より良くするために尽力していきたいんだ」
「そう、だよね……」

 僕は目を真っ赤に腫らしたまま、フレッドを見て力なく笑みを浮かべた。

 フレッドは、僕の様子を気にしながらも、続きの話をした。

 ハイネル家を出て程なくして、ひとりの人物が訪ねてきた。それはフレッドと同じく、ハイネル家で使用人をしていたペーターだった。
 僕が塔の部屋を出るのと同じくらいのタイミングで、使用人をやめさせられたのだけど、お母様に呼び止められたらしい。
 ペーターは僕がオメガで、お父様からの命令であの塔の部屋に閉じ込められたことも知っている。なのでお母様は、フレッドとともに、お父様についての調査をするように指示をしたそうだ。

 ことあるごとに、ミッチは大丈夫だろうかと心配をするので、ペーターはフレッドからの言伝ことづてを、代わりに伝えてくるとハイネル家へ向かった。フレッドが裏で動いていることはまだ伏せていたので、名前を言えずに申し訳ないとペーターは気にしていたそうだ。

 けれど、あの時ペーターが訪ねてきてくれて、必ず助けに来るから待っていてほしいと言われた言葉は、本当に励みになった。もしかしたらフレッドかもしれないという期待が、さらに僕に生きる希望を与えていた。

「調査の中で、色々と判明したんだ。旦那様がお一人で決めたフィルの婚約相手の家の、リヒター公爵家。あの家はまず、自分たちの豪遊のための金遣いが荒かった。公爵家なのに財政難で、どうしようかと思案しているうちに、ハイネル家がアルファの婿探しをしていると知った。そこでうまく話をまとめ婚約に至った。婚約前から、結婚資金や慈善事業などと称して、次から次へと金の請求をされた。そこで困った旦那様は、使用人を減らし始めたんだ」
「だから、僕が使用人としてでもいいから塔の部屋を出たいと言ったら、出してもらえたんだね」
「格上の公爵家とつながりを持つことは、ハイネル家にとっては箔も付くし、他の繋がりも持てるから、この婚約は願ったり叶ったりだった。多少お金がかかってもと思っていたのに、想定外だったんだろうな」

 挙句の果てに、急に婚約が白紙となった。フィルに婚約を破棄されるような規約違反も心当たりがないし、コニーになにかあったとしか思えない。けどそれならば、違約金が発生して、ハイネル家が請求できるはずだ。なのに、お父様は無条件で白紙とした。

「その問題は後々調べるとして、問題はそのリヒター公爵家なんだ」
「……犯罪に……?」

 恐る恐る口にした僕の言葉に、フレッドは力強くうなずいた。

「リヒター公爵家が慈善事業として資金援助をしていた孤児院が、裏では孤児の労働力の搾取、時には人身売買にあたるような行為をしていたんだ」
「どうして、そんな……」
「身寄りがなかったり、親に見放されたりした子供というのをいいことに、孤児の働き先として斡旋していたんだ。時には待遇の良い家もあったが、たいていは奴隷のような扱いをするものが多かった」
「え……それって……」
「そう。……俺の育ったグレース孤児院も、その中のひとつだ……」

 フレッドの表情は曇り、僕は言葉を失った。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

【本編完結済】神子は二度、姿を現す

江多之折(エタノール)
BL
1/7外伝含め完結 ファンタジー世界で成人し、就職しに王城を訪れたところ異世界に転移した少年が転移先の世界で神子となり、壮絶な日々の末、自ら命を絶った前世を思い出した主人公。 死んでも戻りたかった元の世界には戻ることなく異世界で生まれ変わっていた事に絶望したが 神子が亡くなった後に取り残された王子の苦しみを知り、向き合う事を決めた。 戻れなかった事を恨み、死んだことを後悔し、傷付いた王子を助けたいと願う少年の葛藤。 王子様×元神子が転生した侍従の過去の苦しみに向き合い、悩みながら乗り越えるための物語。 ※小説家になろうに掲載していた作品を改修して投稿しています。 描写はキスまでの全年齢BL

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

きっと、君は知らない

mahiro
BL
前世、というのだろうか。 俺は前、日本という国で暮らしていて、あの日は中学時代にお世話になった先輩の結婚式に参列していた。 大人になった先輩と綺麗な女性の幸せそうな姿に胸を痛めながら見つめていると二人の間に産まれたという女の子がひとりで車道に向かい歩いている姿が目に入った。 皆が主役の二人に夢中で子供の存在に気付いておらず、俺は慌ててその子供のもとへと向かった。 あと少しで追い付くというタイミングで大型の車がこちらに向かってくるのが見え、慌ててその子供の手を掴み、彼らのいる方へと突き飛ばした。 次の瞬間、俺は驚く先輩の目と合ったような気がするが、俺の意識はそこで途絶えてしまった。 次に目が覚めたのは見知らぬ世界で、聞いたことのない言葉が行き交っていた。 それから暫く様子を見ていたが、どうやら俺は異世界に転生したらしく………?

聖女の兄で、すみません!

たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。 三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。 そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。 BL。ラブコメ異世界ファンタジー。

嘘つき王と影の騎士

篠雨
BL
「俺の役割は、貴方を守ることだ。……例え、貴方自身からも」 国の平穏を一身に背負い、十二年間「聖王」という偶像を演じ続けてきたセシル。 酷使し続けた心身はすでに限界を迎え、その命の灯火は今にも消えようとしていた。 そんな折、現れたのは異世界からの「転移者」。 代わりを見つけた国は、用済みとなったセシルからすべてを剥奪し、最果ての地へと追放する。 死を待つためだけに辿り着いた冬の山。 絶望に沈むセシルの前に現れたのは、かつて冷徹に王を監視し続けていた近衛騎士団長、アルヴィスだった。 守るべき王も、守るべき国も失ったはずの二人が過ごす、狭い小屋での夜。 無価値になり、壊れかけた自分を、なぜこの男は、そんな瞳で見つめるのか。 なぜ、そんなにも強く、抱きしめるのか。 これは、すべてを失った「聖王」が、一人の男の熱に暴かれ、再生していくまでの物語。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

秘匿された第十王子は悪態をつく

なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。 第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。 第十王子の姿を知る者はほとんどいない。 後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。 秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。 ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。 少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。 ノアが秘匿される理由。 十人の妃。 ユリウスを知る渡り人のマホ。 二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

処理中です...