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61. 協力を請う
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「その言葉を聞いて、俺はアーホルン公爵家に行くことを決めた。俺を連れ帰るための手段なら、こんなにもすんなりと言葉が出てくると思わなかったからだ。いち従者が何のためらいもなく、『オメガも当主になれる』なんて軽々しく口にできるはずがない。これは、常日頃からアーホルン公爵や公爵夫人など上に立つ人間が、心に留めて生活をしているということだ。……俺は、そんな考えを持つアーホルン公爵家に強く興味を持った」
フレッドは、まだ無言のまま反応のない僕を見て、ふわりと微笑むと、話を続けた。
「実際訪ねてみて、さらにその思いは強くなった。屋敷で働いている人、訪ねてくる人、そして街に出て領土の様子も案内してもらったけど、皆とても生き生きとしていた。アーホルン公爵家の人と領民たちの距離も近く、信頼関係の強さを感じ取れた。……だから俺は、この家で新たな人生を歩みたいと思ったんだ」
「……うん」
「俺の気持ちが固まったところで、提示された条件ではなく、今俺が一番気にかけていることの解決のために、協力を請うことにしたんだ」
「協力?」
フレッドの話はどんどん進む。フレッドの台詞を繰り返すだけになってしまうけど、ちゃんと聞いていることを伝えるには十分だと思う。
僕の質問と言えるほどではないけど、短い問いかけに、フレッドは一呼吸を置いた。
そして、ゆっくりと言葉を続けた。
「アーホルン公爵家へ入り、いずれ当主となることを約束する代わりに、ハイネル伯爵家で不遇の扱いを受けている、長男ミッチェル・ハイネルの、救出の協力を請うことにしたんだ」
「僕の……?」
予想外の言葉に、僕は再び固まってしまった。
どう考えても、フレッドの人生、アーホルン公爵家の未来と、僕の救出なんて天秤にかけるような話ではない。
普通に考えたら、『頭がおかしいんじゃないのか?』そう言って笑われるのが落ちだ。
「なにを……言って……」
「初めてミッチに会ったときから惹かれていたけど、身分の違いに自分の気持ちに蓋をしていた。それが、助けられるかもしれないチャンスがやってきたんだ。言い方は悪いが、利用しない手はないと思った。……公私混同と言われてもいい。俺はあの家から、ミッチを助け出したかったんだ」
気持ちは嬉しいけど、はいそうですかって、嬉しいな、なんて聞き入れられるわけがない。
そんな条件を出して、周りを巻き込むのはやめて欲しい。まだ間に合うはずだ。フレッドには、自分を犠牲にしてほしくない……。
「そんなこと、しないで……。僕のためになんて……。まだ、間に合うよ? ほら、婚約だってまだ正式な文書を交わしてないし、これから……」
僕がことの重大さに気付き、オロオロし始めたのを、フレッドも感じ取っていたのだろう。
視線も定まらずにキョロキョロして、フレッドの気持ちをひとつも考えずに、僕はこのおかしな状況を修正しなきゃと必死になって、言葉を選ぶ余裕もなく口に出してしまった。
「ミッチ!!」
そんな僕の様子を見て、言葉を聞いて、フレッドは珍しく声を荒らげた。
「お願いだから、そんな事は言わないでくれ!」
口調は強いのに、今にも泣き出しそうな声で言うと、激しく僕を抱きしめた。
「……頼むから……俺の気持ちを、なかったことにしないでくれ……」
声を震わせるフレッドの腕の中で、僕は自分がいかに心無い言葉を向けてしまったのかと、やっと気付いた。
これでは、前世でリクの言葉を聞かずに、勝手に誤解して嫉妬してしまったときと同じじゃないか。ちゃんと話を聞かなかったからと後悔したのに、何も変わっていないじゃないか。
二人で思いを交わして、ずっと一緒にいたいって約束したんだ。もう、この手を離したくない。
「ごめん……ごめんね、フレッド。……もう、そんなこと言わないから。……僕は、ずっとフレッドと一緒にいたい……」
僕はフレッドの腕の中で、何度目かの涙を流した。
フレッドは、まだ無言のまま反応のない僕を見て、ふわりと微笑むと、話を続けた。
「実際訪ねてみて、さらにその思いは強くなった。屋敷で働いている人、訪ねてくる人、そして街に出て領土の様子も案内してもらったけど、皆とても生き生きとしていた。アーホルン公爵家の人と領民たちの距離も近く、信頼関係の強さを感じ取れた。……だから俺は、この家で新たな人生を歩みたいと思ったんだ」
「……うん」
「俺の気持ちが固まったところで、提示された条件ではなく、今俺が一番気にかけていることの解決のために、協力を請うことにしたんだ」
「協力?」
フレッドの話はどんどん進む。フレッドの台詞を繰り返すだけになってしまうけど、ちゃんと聞いていることを伝えるには十分だと思う。
僕の質問と言えるほどではないけど、短い問いかけに、フレッドは一呼吸を置いた。
そして、ゆっくりと言葉を続けた。
「アーホルン公爵家へ入り、いずれ当主となることを約束する代わりに、ハイネル伯爵家で不遇の扱いを受けている、長男ミッチェル・ハイネルの、救出の協力を請うことにしたんだ」
「僕の……?」
予想外の言葉に、僕は再び固まってしまった。
どう考えても、フレッドの人生、アーホルン公爵家の未来と、僕の救出なんて天秤にかけるような話ではない。
普通に考えたら、『頭がおかしいんじゃないのか?』そう言って笑われるのが落ちだ。
「なにを……言って……」
「初めてミッチに会ったときから惹かれていたけど、身分の違いに自分の気持ちに蓋をしていた。それが、助けられるかもしれないチャンスがやってきたんだ。言い方は悪いが、利用しない手はないと思った。……公私混同と言われてもいい。俺はあの家から、ミッチを助け出したかったんだ」
気持ちは嬉しいけど、はいそうですかって、嬉しいな、なんて聞き入れられるわけがない。
そんな条件を出して、周りを巻き込むのはやめて欲しい。まだ間に合うはずだ。フレッドには、自分を犠牲にしてほしくない……。
「そんなこと、しないで……。僕のためになんて……。まだ、間に合うよ? ほら、婚約だってまだ正式な文書を交わしてないし、これから……」
僕がことの重大さに気付き、オロオロし始めたのを、フレッドも感じ取っていたのだろう。
視線も定まらずにキョロキョロして、フレッドの気持ちをひとつも考えずに、僕はこのおかしな状況を修正しなきゃと必死になって、言葉を選ぶ余裕もなく口に出してしまった。
「ミッチ!!」
そんな僕の様子を見て、言葉を聞いて、フレッドは珍しく声を荒らげた。
「お願いだから、そんな事は言わないでくれ!」
口調は強いのに、今にも泣き出しそうな声で言うと、激しく僕を抱きしめた。
「……頼むから……俺の気持ちを、なかったことにしないでくれ……」
声を震わせるフレッドの腕の中で、僕は自分がいかに心無い言葉を向けてしまったのかと、やっと気付いた。
これでは、前世でリクの言葉を聞かずに、勝手に誤解して嫉妬してしまったときと同じじゃないか。ちゃんと話を聞かなかったからと後悔したのに、何も変わっていないじゃないか。
二人で思いを交わして、ずっと一緒にいたいって約束したんだ。もう、この手を離したくない。
「ごめん……ごめんね、フレッド。……もう、そんなこと言わないから。……僕は、ずっとフレッドと一緒にいたい……」
僕はフレッドの腕の中で、何度目かの涙を流した。
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