置き去りにされた恋をもう一度

ともどーも

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34話 連絡がこない

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「はぁ~……」
 スマホを無造作にカウンターに置き、天井を見上げた。この3日間、同じ動作を何度行ったか……。
 3日間の朝9時に蓮にラインを送った。
 その日は日曜日だから、すぐに返信が来ると思ったのに、既読にすらならない。
 
 『おはよう。聞きたいことがあるんだけど』
 
 メッセージが虚しく表示されている。
 何か気に障った?
 いや、気に障るような文面じゃないよね。

「はぁ~……」
 思考がぐるぐる回り、いろいろとおぼつかない……。

「また見てる」
 香澄がカウンターの隣に座った。
 Bar con suonoは本日も営業中だ。
 いつもゲスト出演してくれていたピアニストたちに声をかけて、普段香澄が演奏していた時間をカバーするように営業を行っている。
 私もその一人だ。

「既読スルーされて何日よ」
「……3日」
「追撃メッセージは?」
「……まだ」
「はぁ、もう。さっさと送んなよ」
「だって、前のメッセージも既読になってないのに、送ってもさ……」
「なら、もう連絡を待つのやめなよ」
「う~ん……」
「はぁ、そういうとこ、昔と変わらないわね」
 香澄は手に持っているブルームーンを飲み始めた。
 呆れられている。

「それ、ブロックされてるんじゃないかな?」
 香澄とは反対側の椅子にこはるちゃんが座った。
「「え?」」
 思わず香澄と一緒にこはるちゃん登場に驚いた。
「どうしてここに……」
「美咲お姉ちゃんが今日ピアノを弾くって聞いてたので、会いに来ちゃいました」
 可愛くウインクされた……。
 あの夜から妙に懐かれてしまったのよね。

「それより、まだ既読にすらならないなら、ブロックされた可能が高いですよ。スタンププレゼントはしました?」
「え?それでわかるの?」
「はい。ブロックされてるなら、スタンプは贈れないですよ」
 そう言われて、蓮にスタンプをプレゼントしようとしたら『このユーザーには送れません』と表示が出た。
「やっぱり」
 こはるちゃんは少し得意気な顔をした。
「昔、達也を狙ってた女に嫌がらせラインしたとき、まったく既読にならないことがあったんで、ピンって来ましたよ」
「うわ~……」
 香澄が引いている。
  
 達也とこはるちゃんは、婚約解消に向けて話し合っていると聞いた。私にはわからないが、家同士の話し合いが必要らしい。 
 それは今は置いといて。
 
 何でブロック? 

 不可解なことに困惑する。
 蓮とは7年ぶりに再会した。
 突然の音信不通は事故で、お互いに悪いところがあったと和解した。
 昔のように、蓮からサッカーの試合を見にきて欲しいと誘われて、観覧しに行って、婚約者の白石菜月に「もう蓮に関わるな」と釘を刺された。
 仮に白石さんに「元カノに連絡しないで」と言われたとしても、普通「菜月が嫌がったからもう連絡できない」など、一言でもメッセージを送るべきじゃない?
 突然の音信不通は、私にとってある意味トラウマで、蓮との間なら、なおさらだ。
 私、何でこんなに振り回されなきゃいけないの?
 7年前の、あの地獄のような絶望を、蓮はまた私に味わわせている。そう考えると、怒りがこみ上げてきた。
 
 てかさ、社会人としてどうなのよ?
 礼儀ってあるでしょ?
 なんか……イライラしてきた。

「美咲?」
 私の変化に気がついたのか、香澄が話しかけてきた。
「……ムカツク」
「「え?」」
 香澄とこはるちゃんが驚いた顔をした。

「ブロックするにしてもさ、一言メッセージを送るのが礼儀じゃない?別に喧嘩別れした訳じゃないんだから。そう考えたら、なんかムカついてきた」
 香澄とこはるちゃんが顔を見合わせた。
「確かに、礼儀がなってないわね」
 と、香澄。
「これは無理矢理にでも、連絡をとってやるべきですよ!」
 こはるちゃんが声を上げる。さらに
「ライン以外で連絡の手段はないんですか?電話とかSNSとか。あとは会社名とか住んでるところとかも。私のネットワークで見つけますよ!」と。
 ネットワーク?お金持ちのこはるちゃんのネットワークはなんだか怖──

「そういえば……」

 7年ぶりに蓮と連絡取ったときに使った、会社へのメールを思い出した。
 普段から連絡はラインを使ってる。それに、スマホのメールは迷惑メールが多いから、通知も切っていたことを思い出した。
 メールを開くと、相変わらず迷惑メールフォルダに99件以上の未読メッセージがあり、受信ボックスには広告メールが数件──あ……。

 蓮からのメールが来ていた。
 しかも約2ヶ月前。サッカーの試合を見に行ったあの日の日付だった。
「メッセージ、来てた」
 ボソッと呟くと、横から香澄とこはるちゃんがスマホ画面を覗いてくる。

『試合に来てくれてありがとう。
 実はスマホを失くして、ラインのデータが全部消えてしまった。
 美咲と連絡が取れなくて困ってる。
 具合が悪くなったって聞いたけど、大丈夫?』

「これって……」
 ラインデータが失くなったってどういう意味?
「この人、機種変してラインのアカウントの再取得に失敗したのかな?新しいアカウントを作ったなら、ブロックした感じになるんだよね」
 こはるちゃんが言った。
 何でそんなこと知ってるのかと不思議に思い、彼女を見つめると「嫌がらせでラインのアカウントを何度も新規登録してたら、友だちに指摘されたの」と照れたように説明された。
 本当、この子は……。
 恐ろしい子!

 とにかく、蓮は私をブロックしていた訳じゃないんだとわかり、さっきの怒りは消えた。その代わり、私……約2ヶ月、蓮のメッセージを無視していたってことになるよね。
 
 うわっ。
 私、最悪じゃん……。
 このメッセージ……どう返信しよう。
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