置き去りにされた恋をもう一度

ともどーも

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48話 蓮と私2

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 お互いの涙が落ち着いたころ、蓮が『渡したいものがある』といって、本棚から長細いベルベット生地の箱を持ってきた。
 形状から何が入っているかは想像できた。

「ネックレス……」

 そう。ネックレスだった。

『7年前の、あのコンクールの後に渡そうと思ってたんだ。やっと渡せた』

「ありがとう」

 小さなリングチャームが可愛いネックレスで、何か文字が刻まれている。

 『for  M』(美咲へ)と。

『美咲、大学は県外の音大を希望してただろ?だから……その……美咲は俺の彼女だって示したくてだな……その……恥ずかしいな』

 蓮、顔が真っ赤だ。
 この可愛い表情は本当に変わらないな……。

『高校のときに短期バイトで買ったものだから、そこまで良いものじゃない。無理に使わなくてもいいから、もらってほしい』

 頬を搔いて視線を外すのも、昔の蓮と変わらない。
 コンクールの後、本来だったら、こんな風に2人でドキドキしながら甘酸っぱい時間を過ごしていたのかもしれない。
 私はすぐにでも着けたくなった。

『蓮。ネックレスを着けてくれない?』

 蓮は驚いた顔をしたけど、はにかみながら笑って頷いた。私は少し身体をずらして、髪を持ち上げて蓮が着けやすいようにすると、蓮は緊張した手付きで着けてくれた。

「どう?」

 蓮に聞くが、真っ赤な顔をして固まっている。
 少しフリーズしてから、蓮は慌てて腕で顔を隠した。
 耳まで真っ赤なのに、今さら顔を隠す仕草が面白くて、イタズラしたくなった。
 がら空きの胸に頭を預ける。
 蓮の身体が面白いくらい跳ねた。
 手をどうしてよいのか迷っているのも、可愛い。

 ダメだ。
 好きだな~。

 蓮がゆっくりと肩に手を乗せた。
 大きくて温かい。
 安心する。
 私はずっと、この温もりを求めていたのかもしれない。

「みっ、みさき」
 蓮の苦しそうな声がした。
 重かったかも。
 すぐに頭を戻して、蓮に謝ろうとしたが、蓮が両肩に手を置いてきた。
 真っ赤だけど、真剣な顔。
 目が離せない……。
 徐々に近づいていく距離。
 あと少しで唇が──

 ──ピロンッ!
 ラインの通知音。
 赤と白のランプの光が部屋を騒がしく彩る。
 お互いに性急な動作で距離を取り、互いにスマホを確認する。
 香澄とこはるちゃんとのグループラインに通知が来た。

 『準備できたよ』

 香澄の短いお知らせがあった。


 ◇◇◇


 蓮と2人でBar con suonoにやって来た。
 隣に立つ蓮は『バーに行くなら』とスーツを着ている。香澄のお店だから、そんなに畏まらなくても大丈夫だと言ったのに、『始めてだから』とネクタイまでしっかり着けてる。

「香澄。来たよ~」
 店のドアを開けて中に入るけど、誰もいない。
「香澄?こはるちゃん?」

 突然、グランドピアノ前にスポットライトが灯った。
 蓮が私の手を引いて、スポットライトの下に連れてきた。
 懐から手紙を取り出し、私に差し出してきた。
 驚いて蓮の顔と手紙を交互に見てしまう。
 
「みさき」
 少し緊張した蓮の声。顔は真剣で、まっすぐ私を見ている。手紙を受け取り、読めと言うことだろう。
 私はその場で封を開け、ゆっくりと手紙を取り出した。

『美咲へ

 俺は美咲が好きです。
 離れていた7年間で、美咲が他の男と付き合ってたと知ったときは、正直ショックで、複雑な気分になった。
 だけど、気持ちは揺らがなかった。
 何度でも言うよ。

 美咲が好きだ。

 俺と結婚を前提に付き合ってください。

 蓮より』

「えっ……」
 驚きで言葉が出ない。
 蓮からの手紙はこれで25通目だな~なんて、全く余計なことを考えてしまう。それほど混乱しているのだ。
 
 手紙を持って固まっていると、蓮が跪く。
 ポケットから箱を取り出して、開けた。
 そこには指輪が入っていた。

「美咲。好きです。結婚してください」
 蓮のハッキリとした声で言われた。
 顔を真っ赤にして、でも、真剣な顔。

 本当、ひどいよ……。
 私から『付き合ってほしい』と告白しようと思ってたのに。
 蓮ばかり、かっこいいよ。

 私は大きく頷いて「はい!」と答えた。
 そして、跪いている蓮を抱き締めた。
  
「「おめでとう~!!」」
 店の奥から香澄とこはるちゃん。天音さんや、ゲストでピアノ演奏をしているピアニストたち、お店のスタッフの子が拍手しながら現れた。

 香澄とこはるちゃんの顔を見るに、蓮がここでプロポーズするのを知っていたのだろう。
 蓮を見ると、イタズラが成功した子どもみたいな顔をしている。

 まったく、お節介な友人たちめ!
 嬉しいよ。本当にもう。
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