【完結】フィクション

犀川稔

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2.5話 恋の柵

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 恋は悩んでいた。
「行きたいところあったらL◯NEで教えて。」
 赤城にそう言われたけど...。
「どこが良いも何も...デート自体初めてなんだけど...。」
 いくら考えてもどこ行くべきなのかわからんし、調べても「オススメデートスポット5選!」
 そんな選択肢を与えてくれるなよ。ここだ!って断定してくれよ。なかなか決まらず焦っていた。このまま決まりませんでしたじゃ絶対赤城困らせるし、かと言ってデートもしたことのない僕が決めるなんて難易度高すぎる。
「む、無理すぎる...。」
「弟よ、何を悩んでるんだ?」
 ソファで潰れてる僕に姉が声をかけた。
「なんでもありません...至って普通です。」
「なーんかあるじゃん、なによなによ優し~いねぇねにお話してみなさいな。」
「笑わない?」
「笑いませんとも。」
 少し無言になって恋が詳細を話した。

「えー!!!待って待って!れんれんに彼女いたのお姉ちゃん初知りなんだけど!」
 突然大きな声で話だして恋は美鈴みすずの口を塞いだ。
「声が大きいって。」
「ごめんって!え、学校の子?」
「まあ...うん。」
 嬉しそうに聞く美鈴は温かいお茶の入ったマグを恋に渡した。
「へぇ~。いいね。青春って感じ。で?候補はどこがあるの?」
「んー...色々調べたんだけど、水族館も動物園も遊園地も。全部赤城が好きかわからないし。第一、僕と行って楽しんでもらえるかどうか...。」
 携帯と睨めっこする恋にクスッと笑い、少し考えてから話出した。
「正直さ、どこでもいいんじゃない?きっと行きたいところが決まってるなら、その子自分から泊まり誘ってくるくらい積極的なんだからここ行きたいって言うと思うよ?でもそうしなかったってことはさ、れんれんとならどこでもいいよ~ってそう言うことなんじゃない?」
 美鈴の的確すぎるアドバイスに頷き、前に赤城が好きで何回も借りて観たと言っていた映画を思い出した。
「...あ!」
 急いで携帯で上映スケジュールを確認する。その映画の二期がしっかりとやっていた。しかもまだ公開されて数日。
「これだ...。」
 キラキラした眼で携帯を見る恋に美鈴が呆気に取られる。
「ね!ビデオ!ビデオ借りに行きたい!!」
 恋は美鈴の手を引いて急いで借りに行こうとする。
「ちょい待って、なんて言うやつ?携帯見せて、もしかしたらサブスクにあるかも...えーっと...ほら!あったよこれでしょ?」
 テレビに繋いでもらい一期を観た。赤城が好きだって言ってた映画。それだけで興味も出てきたし、何よりこの映画を見に行った時の赤城の顔がとても楽しみになった。
 嬉しそうに観る恋に美鈴が近づいて言った。
「本当に好きなんだね。その子のこと。」
 その言葉に少し焦った顔をした後、まるで新しいおもちゃを買ってもらった子供のような無邪気な顔で恋が笑った。
「好きだよ。大好き。」
 美鈴は恋の表情にただ笑って返した。
 その時リビングのドアが開いて母が帰ってきた。
「おかえり~。遅かったね。」
「近くのスーパー、食べたかったお菓子売り切れで別のお店まで買いに走っちゃったのよ。」
「あ!あのクリームのやつ!?食べたかったの~流石ママ!」
 嬉しそうにキッチンに行く美鈴。映画を観ている恋を見て母が声をかけた。
「れんちゃん何観てるの?」
「...あ、これは...」
「私が友達にオススメされた映画。れんれんも好きそうだから教えたの~!」
 なんて答えるか尻込んでいる恋に美鈴が割って入った。
「あらそうだったの!お腹空いたでしょ?待っててね。今ご飯作るから。」
 母はすぐに夜ご飯の準備を始めた。美鈴が口元で人差し指を立てた。ここぞとばかりに頼りになる姉に感謝をし映画を観きってご飯を食べた。そして、明日赤城を映画に誘う事を決めゆっくりと眠りについた。

 学校に着いて携帯を見ると赤城から連絡が来ていた。
「おはよう学校着いた。」
 この一文に対して僕も、と返した。
 赤城は見た目では想像ができないくらいに柔らかく笑ってくれるし、連絡もまめにしてくれる。夜は佐々木くんの家に居ることが多かったり、バイトがある日は連絡頻度が少ない分その日は電話をしてくれる。学校帰り一緒に遊びに行って、外が暗くなった時は近くまで送ってくれるし...いい所なら溢れるくらいに出てきてしまう。気づいたら赤城のことばかり考えてるし...。
 いや、違う。デートのこと言わないと...。
 教室に着くと仲川が近づいてきた。
「おはよー。相馬朝からL◯NE来ないからこれ寝てるわ。」
 席について鞄から荷物を出す恋に話しかけた。
「あいつまた徹夜でゲームしてたな。」
「...そういえば憂鬱だって言ってた三連休どうするの?諦めて悟りでも開いた?」
 朝からスッキリとした顔をする恋に仲川が聞いた。
「あ、そうそう。それ解決した!ご心配おかけしまして~。」
 何か聞き出したそうな仲川に少し悩んだ末に恋が全てを話した。
「恋人宅でデートすることになった!?しかも泊まり?誘われた!?」
 吃驚して仲川が大きな声を出した。
「あーあーあー!うるさいうるさい。ねえちゃんと似たような反応するなよ。」
「え、お前恋人のこと姉貴にも話したの?...親にも?」
「あー...真ん中の姉の方ね。1番上と親には言ってないよ。多分ねえちゃんも...言わないでいてくれてるみたい。」
「そっか。よかった、安心したわ。」
 困った顔をした仲川だが、恋の話に安堵の表情を浮かべた。そして少し間が空いてから淡々とと口を開いた。
「相手には?家族の話したの?」
「...いや、まだ。もう少し様子見てから...と言うか。うーん...。」
「歯切れ悪いな。」
「まだあんまり言いたくないんだよね...いや、わかってるよ。家族のこと話してそれで離れていくような人じゃないってことも。でも話したことで、今までとは違った態度を取られる事も、めんどくさいって思われるかもって思うことも...全部怖いんだよ。」
 いつもに増して消極的になる恋に、仲川がうーん、と考え込んだ。
「俺の彼女の父親、生まれつき軽い障害があるんだよ。」
「...え?」
 恋が吃驚して仲川の顔を見た。
「で、遺伝かわからないけど、彼女のお姉さんも。付き合って少し経った時に彼女に言われたよ。将来は姉の面倒をみたり家族を支えないといけないし、もし結婚して子供ができても同じく障害をもった子が生まれる可能性もあるから。だから俺の将来を考えて長くは付き合えないってね。でも俺は嬉しかったよ。彼女が自分との将来を考えてくれてた事も俺のために流してたその時の涙も。全部俺が守らないとって思えたよ。だからその話を聞いた上でもこの先別れる気はないって伝えた。結局はさ、俺は彼女だから好きになったわけだし、それ以外に一緒にいる意味なんていらないでしょ。」
 普段あまり彼女の話をしない仲川がこんなに真面目な顔して話をするから僕も自然と聞き入ってしまった。

 結局相馬は2限終わりに来たけど、お昼までずっと授業は爆睡してた。前の席の僕まで寝息が聞こえてたし、つられて眠たくなってしまった。2列挟んで斜め後ろに座る赤城も、少し眠たそうにしていた。
 仲川にされた話が頭をよぎった。
 ......話そう。ちゃんと。今じゃなくても、そのうちしっかりとしたタイミングで。
 朝よりも軽い気持ちで迎えた昼休み。僕は赤城に連絡を入れた。
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