【完結】フィクション

犀川稔

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2話 誘いと葛藤

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「そういえば朝言おうとしたことって?」
「あーそれ、忘れるところだった。連絡先教えて。金曜聞き忘れてしくじったーって土日ずっと思ってたわ。」
 あの日赤城と連絡先を交換してから毎日連絡を取り合っている。
 最初は緊張で返すのに1時間以上かけていた僕も今では早めに返せるようになった。そしてもう一つ変わったことと言えば、赤城が学校でもおはようから始まり少しだけ時間が空いた時に話かけてくれるようになった。それはあのあとすぐに行われた席替えで場所が変わり遠くなっても変わらず赤城は続けてくれた。
 で、あまり触れたくはなかったけどもう一つ最近気になってることが...。
「ねえ聞いた?赤城の好きな人の話。あれやっぱりガチだったんだって。しかももう付き合ってるとか!やばー。狙ってたのにショックすぎ。」
 情報が早すぎる...。発信元は佐々木くんたちみたいだけど、こんなに早く広まるとは思ってなかった......。赤城は今頃みんなに聞かれてるんだろうな。

「で?恋人ちゃんとはどうなのよ?どこまで進んでる?」
 質問に遠慮がない佐々木が赤城に聞いた。
「お前ほんと容赦ないよな。別に普通に恋愛して普通に仲良くやってるよ。」
 顔色を変えない赤城に新山も横から口を出した。
「てか恋人の前でもそんな感じなの?相手マジでどこがいいんだよこいつの。」
「お前サラッと最低なこと言ってんな。俺の話はもういいよ。だるい。佐々木話変えろ。」
 赤城のその言葉で別の話題に切り替えられた。
「で?ぶっちゃけどんなもんよ。好き好きちゃんは。」
 周りがいなくなって2人きりになった時佐々木が赤城に聞いた。
「マジもんでさっき言った通りだよ。特になにも問題はないよ。今の所ね。」
 赤城の言葉に佐々木が笑った。
「そっか、よかったよ。...恋愛はお前が思ってるより悪いもんじゃないよ。」
 そう言い残すと佐々木は女子たちの輪に入っていった。

「そん時の酔っ払った客が兄さんって何回も言うからなに言ってんだよって思ってたらタバコの番号で213だったんだよ。俺ずっとガン無視かましてたわ。」
 昇降口で靴を履き替えながら赤城が恋に話した。
「赤城のバイトの話聞いてて面白いや。一緒に働いてる人たちも話聞く感じいい人そうだよね?」
「まあ近所で働きやすそうだと思って始めただたけだけど、もう一年以上やってるからね。それなりに仲は良くなってるかもね。」
「いいなー。僕は付き合いも少ない方だし、バイトもしてないからほんと話せる人も極々僅かですよ。」
 ため息を吐いて少し前を歩く恋の手を赤城が繋いだ。
「友達は量より濃さですよ。んで、少ないのもそれだけ1人に費やせる時間も長くてラッキーじゃね?」
「...手、いいの?帰り道まだ学校の人いるかもだよ。」
「平気っしょ。なんとでも言い逃れられるべ。」
 繋ぎたいって言いたかったけど赤城からしてくれた...。僕超絶ミラクルハッピーじゃん。
「...て、てか、今週三連休で3日も会えないの激萎えジャネ。!?」
 嬉しさと緊張で謎なテンションで話してしまった。
「突然のギャルでビビるけど...そーだね。まあ、電話もL◯NEもするよ。」
 自分で言って自分で思い出した。そうじゃん、今日は水曜日。あと2日終わっちゃったら、3日も赤城見れないんじゃん...。
 どこか寂しそうな恋の顔を見て赤城は立ち止まった。
「?赤城?」
「俺、弟いるんだよね。」
「うんうん、言ってたね。2個下って言ってたな!」
「...俺んちの近く、公園あるんだけどそこの滑り台ばかなげぇんだよ。」
「子供の頃毎日遊んでて雨の日もカッパきて滑ってた言ってたな。」
「......一昨日から家の最寄りに幻のプリンの出張販売きてたわ。」
「横浜で売ってるやつか!いいな~、横浜の方行く機会あったら是非お目にかか...」
「あのさ。」
 赤城が繋いだ手を自分の方に引いて恋を見つめた。
「家、誘ってるんだけど...。」
「...え。」
 恋が吃驚して赤城を見上げた。
「いや...別に嫌なら無理強いはしないっすけど。弟、勉強の強化合宿で親は夜勤と旧友ともだちとの旅行で朝までいない。なんで......まあ、家俺1人だけど。一応、泊まりで空いてるなら...って提案してる...はい。」
 赤城が顔を背けながら話した。夕日のせいか顔が赤く見える。
 ...待て待て待て。え、会えないと思ってた休み中会えちゃうってこと!?しかも泊まりってことは直接赤城に寝る前におやすみ言ってもらえるの!?嬉しいやばい...顔、にやけそう。
 ジワジワと笑みが溢れてきて、繋いだ手をご機嫌そうにブンブン横に振った。
「はい空いてます!!全然余裕でどこの日も空いてる!なんなら三連休以降も365日いつでも空いてる芦野です!」
 目を輝かせ楽しそうに話す恋。
「そりゃ空きすぎだわ。オモロい、でも良かった。地味に誘うの緊張したわ。」
 ふわっと笑った赤城の横顔が夕日に照らされてとても輝いて見える。
「あー!やばい楽しみだ。赤城んち実は行ってみたかったし、赤城からきていいよって言われるとなんこっちまで行ってよかったんだ~って安心するよ。」
 嬉しそうな恋の表情に赤城は困った顔をした。
「全然きてよ。あー、できるだけ一緒にいたいから日曜でもいい?土曜バイトあるから。で、月曜は一日出かけよ。行きたいところあったらL◯NEで教えてくださいな。」
 恋は赤城の話にたくさん頷いてゆっくりまた歩き出した。
 こないで欲しいと思った週末がこんなにも待ち遠しくなってしまった。
 初めての赤城家のお泊まり。めっちゃ楽しみー!

「...かし...赤城?...おい赤城!?」
 遠くを眺めたまま無反応な赤城に周りが声をかける。
「...あ。なに?」
「お前大丈夫か?どうした、めっちゃ顔暗いけど。」
 一斉に周りが赤城に注目する。
「確かに俺も、あれはどうみても犬だと思うよ。」
「誰もそんな話してねえよ、魂抜けてたぞ。もしや恋人と別れた?」
 明らかにいつもと違う赤城に新山が聞いた。
「縁起でもないこと言うなよ。むしろラヴ越して結婚だわ。」
「きしょすぎ。」
 赤城と新山のやりとりに佐々木が入ってきた。
「じゃあなんでそんなやつれてんの?」
 首を傾げながら聞く佐々木の顔をしばらく見つめ
「いやまあ恋人のことではあるけども...お前じゃ無理だ。参考にならん。」
 といい、ため息を吐いた。
「うん、恋愛相談佐々木にするのは確かに馬鹿だわ。」
 新山が赤城に賛同して立ち上がった。
「いや、お前たちの中で俺ってなんなん?」
「下半身バカ。」
 即答する新山に周りが爆笑した。
 そこからまた佐々木が馬鹿な事を言い始めいつも通り話始めた。
 昼休みが終わり赤城は一人で教室に向かっていると携帯がなり、足を止めた。
 恋からだった。
「赤城がこの前、続きが気になるって言ってた映画とかどうですか!」
 連休の行く場所の話だ。この一文だけでも、きっとたくさん悩んで決めたんだろうと考えるだけでとても愛くるしくて心臓に悪すぎる。
「...どうすっかな...。」
 頭を掻いて携帯を見ながら歩き出した。

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