4 / 93
一
1.5話 存在意義
しおりを挟む
あの日から僕は。いや、僕たちは正式な恋人関係となった。正直、今でも赤城と付き合った事実は信じ難い。
遡る事3日前、僕は赤城から返事をもらってからどう帰ったのかほとんど覚えてない。あの後、赤城は佐々木くん達と約束があると言って先に教室を出たところまではなんとか覚えている。
「どんな顔で教室に行けばいいんだ。」
そんな小言を言いながら学校の支度を進める。なんとか準備を終え、家を出る。いつもは長く感じる電車も今日は早く感じた。
...そもそも今まで学校で話してなかったわけだし、どうするもなにも普通に。いつも通りの生活をすればいいんじゃん。そうじゃん。
心で自分と会話しながら下駄箱に靴を入れる。
「なににそんな頷いてるの?」
後ろから不意に声をかけられてびっくりした。
赤城がイヤホンを外しながら上履きに履き替える。
「あ、赤城おはよう。金曜日ぶりです。ありがとうございます。」
「...はよ。それ言ったらほとんどの人金曜日ぶりだと思うけど、どうも...。こちらこそです?」
謎の挨拶から始まったけど、その後一緒に階段を上がっていた。沈黙の中赤城が口を開いた。
「そういえば、聞いてなかったんだけどさ...」
「おー!赤城じゃん。はざーす!ちょい自販行くから付き合ってくんねー?」
遮って佐々木が赤城の肩を組み連れて行った。
「行ってしまわれた...。」
1人取り残された恋はクラスに向かい自席に着いた。
「なにを言いかけたんだろう。」
ぼーっと考え事をしていると、仲川と相馬暁人が声をかけてきた。
「おはよ。芦野、今日珍しく早いじゃん。委員会でもあったの?」
「いや、ないよ。いつも通りの電車だったんだけどなんか早く着いたっぽい。」
そんな会話からいつも通りのくだらない話になっていった。
午前中は移動教室が多く、仲川たちといることがほとんどだった。お昼がきて購買に向かった。いつもあるメロンパンが売り切れで、しょうがないからラスト一個だった焼きそばパンを買った。弁当の会計待ちをする相馬を待っていた時、赤城たちが前から歩いてきた。
一瞬目があった気がしたけど、すれ違い行ってしまった。赤城の後ろ姿を眺めていると振り返った赤城がそれに気がついて、後ろで小さく手を振ってくれた。
やばい、嬉しい。勘違いじゃなかったー!てか...やる事もイケメンかよ。
余韻に浸ってる恋に隣にいた仲川が声をかけた。
「そういやさっき聞いたんだけど、赤城好きなやつできたらしいぞ。佐々木があの恋愛だるいって言ってた赤城が遂に!って言いに回ってて、女子達が誰か探し回ってるって話。」
「マジか...。」
少しというかだいぶ焦った。
その好きな人ってさ、もしかしなくても僕の事だったりするよね...?嬉しいけど...けど、敵多すぎるて。
複雑な気持ちが混ざり合って対処し切れなかった。
「いいよな。あーやってお高くとまった人たちって、いるだけでチヤホヤされて。女にも困らず苦労なんてありませんよーってか?周りの人間なんて見えてないんだろうし、自分たちが1番って思ってんだろうよ。」
すれ違う人たちの会話が聞こえてきた。
きっと赤城たちのことを言ってるんだろうな。自分のことを言われてるわけじゃないのに、心が痛くなった。弁当を買った相馬が帰ってきて、その後僕たちは教室に戻った。
「もしさ、もしだよ?好きな人が自分の見てる目の前で悪く言われてたらどうする?」
突然の恋の質問に仲川がお茶を溢した。
「え?お前の好きな人の話?てか居たの?」
半笑いになりながら聞いてくる。
「違う!もしもだって言ったじゃん。てか質問を質問で返してくるなよ。」
「あー。ね?なるほど。そう言うことにしておくよ。んー。言ってる相手によるかな。それがもし自分の仲良い人なら気分悪いからやめてって言うだろうし、そうでもない人ならなにも言わないかな。」
「気分悪くなるの?」
「そりゃいい気にはならんでしょ。自分が好きな人のこと悪く言われてすっきりする馬鹿がどこにいるって話よ。」
仲川が笑って答えた。
「じゃあなにも言わないってやつは?」
「やっぱり関わりたくないのがでかいよ。あんまり知りもしない人に絡んでいきたくもないしな。でも1番は知らなくてラッキーってことだよ。好きな人なら尚更。いいところが見えすぎて好きになられたくないし、そもそも悪いところばっか目がいくのは自分に自信がない証拠だよ。」
仲川の言葉にやけに納得してしまった。
「そっか。」
恋の反応に仲川は背中を押すように続けた。
「人を愛するときは完全に信じることだ。誰か忘れたけど偉人が言ってた言葉だよ。これは恋人の言葉を信じろってことなんだけど、俺はそれだけじゃないと思ってるよ。好きになった理由、それを信じ抜けってことなんだよ。付き合っていくとだんだん疎かになっていくことだからな。初心に戻って考える事も大事ってことだ。」
くさい事を話し合う自分たちに2人して笑ってしまった。
寝ていた相馬が笑いを聞いて起きてきたけど、掘り返すことはなく終わっていった。
午後の授業は上の空で、なにも頭に入ってこなかった。先生が忘れ物を取りに教室を出ると斜め後ろの席の佐々木くんと赤城が話を始めた。
なんの話か分からなかったけど楽しそうな赤城の声にとても安心した。その時赤城が僕の手の上に自分の手を重ねた。不覚にもドキッとしてしまった。結局授業終わりギリギリに先生が帰ってきて、プリントが配られて今日の授業は終わった。赤城の手もそっと離れていく。
帰ろうとする僕に、
「今日の委員会、会議終わるまでちょい待ってろだってさ。」
目が合わないまま赤城から伝えられた。
「今日委員会だったの知らなかった!ありがとう。そっか早く終わる系だといいね。」
僕が答えると、赤城が佐々木くんたちの元に行ってしまった。
「お待たせ。」
赤城が1人で教室に帰ってきた。
「おかえり!まだ先生来てないよ!長引いてるのかな...。」
「どうだろうね。会議はもう終わってるんじゃない?」
「じゃあなんでまだ...」
静まり返った教室で赤城が僕を抱きしめた。
「委員会なんてパチ。ただの口実だよ。ずっとこうしたかった。」
温かい赤城の腕の中で自分の心臓の音がうるさく感じた。
「早く帰りたかった?」
赤城の声が授業の時より近く聞こえる。
「ぜ、全然。赤城が早く帰りたいって思うかなって。だからあー言いま...した。」
「そっか。」
安心したように微笑んで恋の頭を撫でた。
「今日なんかあった?」
赤城が机にもたれ掛けながら恋に聞いた。
「なにかって...なに?」
「いや、お昼いつもパンの時はメロンパンじゃん。違ったから。」
下を向きながら気まずそうに赤城が言った。
「今日は売り切れだったの。一足遅かったみたい。赤城は周りのことよく見てるね。」
褒める恋の手を引いて、赤城が自分の傍に恋を寄せた。
「周りを見てるんじゃないよ。芦野を見てるの。今日もずっと考えてたよ。話せるタイミングもなかったからこうやって嘘ついてでも2人きりになりたかった。」
...い、イケメンだ。モテる男の格の違いを見てる気がする...僕も伝えたい。赤城が僕に気持ちを示してくれるみたいに。
「僕は信じてるよ。」
突然の恋の発言に赤城が固まる。
「えっと...ごめん。なにを信じるって?」
そりゃそんな反応になるわ。めっちゃ自己解決しちゃってたし。
「付き合っていくとだんだん気持ちも変わっていくんだって。それで好きが減っていくって。でもね、僕はそうならないように赤城を信じるし...。幸せだって思ってもらえるように頑張るから!」
誇らしく語った恋に赤城が笑って返した。
「って言う誰かの言葉に対しての芦野さんのアンサーですかね?」
「...マザーナカガワのありがてえお言葉です。」
赤城が声を出して笑った。
「久々こんな笑ったわ。うん、芦野さん、君最高だわ。マジで。」
赤城が楽しそうに笑うから、つられて僕も笑った。
「でもさ、なにも頑張る必要ないって。ほんとに。いてくれるだけでいいから。俺は幸せにしたい派の人間なんで、芦野はそのままでいて。」
そう言われて気持ちが晴れた気がした。
僕は赤城の悪口を言われて嫌だったと同時に、自分の存在について引っかかっていたんだと思った。赤城はかっこいい。その上こうやって相手に安心を与えてくれる。...でもその相手が本当に僕でいいのか。きっとその答えが出なかったんだ。ここの場所に立つ人間は他にもたくさんいる。
でも違くて、赤城は数ある選択肢の中で僕を選んで、そのままでいていいと言ってくれた。自分そのものに存在する意味がある事を教えてくれた。それがすごく嬉しかったんだ。
「赤城...本当に幸せにするの上手だね。」
赤城が泣きそうになる僕を抱きしめて頭を撫でた。
「そりゃそうよ。ちなみに愛するのも得意なんで大人しく愛されてといてね。」
赤城の言葉が全部優しい。
今なら仲川の言っていた言葉の意味がよくわかる。知られたくない。この表情もこの言葉も全部僕だけに向けられたものだから。
でもね...正直僕は。仲良い人でも知らないで欲しいと思ってしまうよ。
遡る事3日前、僕は赤城から返事をもらってからどう帰ったのかほとんど覚えてない。あの後、赤城は佐々木くん達と約束があると言って先に教室を出たところまではなんとか覚えている。
「どんな顔で教室に行けばいいんだ。」
そんな小言を言いながら学校の支度を進める。なんとか準備を終え、家を出る。いつもは長く感じる電車も今日は早く感じた。
...そもそも今まで学校で話してなかったわけだし、どうするもなにも普通に。いつも通りの生活をすればいいんじゃん。そうじゃん。
心で自分と会話しながら下駄箱に靴を入れる。
「なににそんな頷いてるの?」
後ろから不意に声をかけられてびっくりした。
赤城がイヤホンを外しながら上履きに履き替える。
「あ、赤城おはよう。金曜日ぶりです。ありがとうございます。」
「...はよ。それ言ったらほとんどの人金曜日ぶりだと思うけど、どうも...。こちらこそです?」
謎の挨拶から始まったけど、その後一緒に階段を上がっていた。沈黙の中赤城が口を開いた。
「そういえば、聞いてなかったんだけどさ...」
「おー!赤城じゃん。はざーす!ちょい自販行くから付き合ってくんねー?」
遮って佐々木が赤城の肩を組み連れて行った。
「行ってしまわれた...。」
1人取り残された恋はクラスに向かい自席に着いた。
「なにを言いかけたんだろう。」
ぼーっと考え事をしていると、仲川と相馬暁人が声をかけてきた。
「おはよ。芦野、今日珍しく早いじゃん。委員会でもあったの?」
「いや、ないよ。いつも通りの電車だったんだけどなんか早く着いたっぽい。」
そんな会話からいつも通りのくだらない話になっていった。
午前中は移動教室が多く、仲川たちといることがほとんどだった。お昼がきて購買に向かった。いつもあるメロンパンが売り切れで、しょうがないからラスト一個だった焼きそばパンを買った。弁当の会計待ちをする相馬を待っていた時、赤城たちが前から歩いてきた。
一瞬目があった気がしたけど、すれ違い行ってしまった。赤城の後ろ姿を眺めていると振り返った赤城がそれに気がついて、後ろで小さく手を振ってくれた。
やばい、嬉しい。勘違いじゃなかったー!てか...やる事もイケメンかよ。
余韻に浸ってる恋に隣にいた仲川が声をかけた。
「そういやさっき聞いたんだけど、赤城好きなやつできたらしいぞ。佐々木があの恋愛だるいって言ってた赤城が遂に!って言いに回ってて、女子達が誰か探し回ってるって話。」
「マジか...。」
少しというかだいぶ焦った。
その好きな人ってさ、もしかしなくても僕の事だったりするよね...?嬉しいけど...けど、敵多すぎるて。
複雑な気持ちが混ざり合って対処し切れなかった。
「いいよな。あーやってお高くとまった人たちって、いるだけでチヤホヤされて。女にも困らず苦労なんてありませんよーってか?周りの人間なんて見えてないんだろうし、自分たちが1番って思ってんだろうよ。」
すれ違う人たちの会話が聞こえてきた。
きっと赤城たちのことを言ってるんだろうな。自分のことを言われてるわけじゃないのに、心が痛くなった。弁当を買った相馬が帰ってきて、その後僕たちは教室に戻った。
「もしさ、もしだよ?好きな人が自分の見てる目の前で悪く言われてたらどうする?」
突然の恋の質問に仲川がお茶を溢した。
「え?お前の好きな人の話?てか居たの?」
半笑いになりながら聞いてくる。
「違う!もしもだって言ったじゃん。てか質問を質問で返してくるなよ。」
「あー。ね?なるほど。そう言うことにしておくよ。んー。言ってる相手によるかな。それがもし自分の仲良い人なら気分悪いからやめてって言うだろうし、そうでもない人ならなにも言わないかな。」
「気分悪くなるの?」
「そりゃいい気にはならんでしょ。自分が好きな人のこと悪く言われてすっきりする馬鹿がどこにいるって話よ。」
仲川が笑って答えた。
「じゃあなにも言わないってやつは?」
「やっぱり関わりたくないのがでかいよ。あんまり知りもしない人に絡んでいきたくもないしな。でも1番は知らなくてラッキーってことだよ。好きな人なら尚更。いいところが見えすぎて好きになられたくないし、そもそも悪いところばっか目がいくのは自分に自信がない証拠だよ。」
仲川の言葉にやけに納得してしまった。
「そっか。」
恋の反応に仲川は背中を押すように続けた。
「人を愛するときは完全に信じることだ。誰か忘れたけど偉人が言ってた言葉だよ。これは恋人の言葉を信じろってことなんだけど、俺はそれだけじゃないと思ってるよ。好きになった理由、それを信じ抜けってことなんだよ。付き合っていくとだんだん疎かになっていくことだからな。初心に戻って考える事も大事ってことだ。」
くさい事を話し合う自分たちに2人して笑ってしまった。
寝ていた相馬が笑いを聞いて起きてきたけど、掘り返すことはなく終わっていった。
午後の授業は上の空で、なにも頭に入ってこなかった。先生が忘れ物を取りに教室を出ると斜め後ろの席の佐々木くんと赤城が話を始めた。
なんの話か分からなかったけど楽しそうな赤城の声にとても安心した。その時赤城が僕の手の上に自分の手を重ねた。不覚にもドキッとしてしまった。結局授業終わりギリギリに先生が帰ってきて、プリントが配られて今日の授業は終わった。赤城の手もそっと離れていく。
帰ろうとする僕に、
「今日の委員会、会議終わるまでちょい待ってろだってさ。」
目が合わないまま赤城から伝えられた。
「今日委員会だったの知らなかった!ありがとう。そっか早く終わる系だといいね。」
僕が答えると、赤城が佐々木くんたちの元に行ってしまった。
「お待たせ。」
赤城が1人で教室に帰ってきた。
「おかえり!まだ先生来てないよ!長引いてるのかな...。」
「どうだろうね。会議はもう終わってるんじゃない?」
「じゃあなんでまだ...」
静まり返った教室で赤城が僕を抱きしめた。
「委員会なんてパチ。ただの口実だよ。ずっとこうしたかった。」
温かい赤城の腕の中で自分の心臓の音がうるさく感じた。
「早く帰りたかった?」
赤城の声が授業の時より近く聞こえる。
「ぜ、全然。赤城が早く帰りたいって思うかなって。だからあー言いま...した。」
「そっか。」
安心したように微笑んで恋の頭を撫でた。
「今日なんかあった?」
赤城が机にもたれ掛けながら恋に聞いた。
「なにかって...なに?」
「いや、お昼いつもパンの時はメロンパンじゃん。違ったから。」
下を向きながら気まずそうに赤城が言った。
「今日は売り切れだったの。一足遅かったみたい。赤城は周りのことよく見てるね。」
褒める恋の手を引いて、赤城が自分の傍に恋を寄せた。
「周りを見てるんじゃないよ。芦野を見てるの。今日もずっと考えてたよ。話せるタイミングもなかったからこうやって嘘ついてでも2人きりになりたかった。」
...い、イケメンだ。モテる男の格の違いを見てる気がする...僕も伝えたい。赤城が僕に気持ちを示してくれるみたいに。
「僕は信じてるよ。」
突然の恋の発言に赤城が固まる。
「えっと...ごめん。なにを信じるって?」
そりゃそんな反応になるわ。めっちゃ自己解決しちゃってたし。
「付き合っていくとだんだん気持ちも変わっていくんだって。それで好きが減っていくって。でもね、僕はそうならないように赤城を信じるし...。幸せだって思ってもらえるように頑張るから!」
誇らしく語った恋に赤城が笑って返した。
「って言う誰かの言葉に対しての芦野さんのアンサーですかね?」
「...マザーナカガワのありがてえお言葉です。」
赤城が声を出して笑った。
「久々こんな笑ったわ。うん、芦野さん、君最高だわ。マジで。」
赤城が楽しそうに笑うから、つられて僕も笑った。
「でもさ、なにも頑張る必要ないって。ほんとに。いてくれるだけでいいから。俺は幸せにしたい派の人間なんで、芦野はそのままでいて。」
そう言われて気持ちが晴れた気がした。
僕は赤城の悪口を言われて嫌だったと同時に、自分の存在について引っかかっていたんだと思った。赤城はかっこいい。その上こうやって相手に安心を与えてくれる。...でもその相手が本当に僕でいいのか。きっとその答えが出なかったんだ。ここの場所に立つ人間は他にもたくさんいる。
でも違くて、赤城は数ある選択肢の中で僕を選んで、そのままでいていいと言ってくれた。自分そのものに存在する意味がある事を教えてくれた。それがすごく嬉しかったんだ。
「赤城...本当に幸せにするの上手だね。」
赤城が泣きそうになる僕を抱きしめて頭を撫でた。
「そりゃそうよ。ちなみに愛するのも得意なんで大人しく愛されてといてね。」
赤城の言葉が全部優しい。
今なら仲川の言っていた言葉の意味がよくわかる。知られたくない。この表情もこの言葉も全部僕だけに向けられたものだから。
でもね...正直僕は。仲良い人でも知らないで欲しいと思ってしまうよ。
14
あなたにおすすめの小説
夜が明けなければいいのに(洋風)
万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。
しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。
そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。
長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。
「名誉ある生贄」。
それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。
部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。
黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。
本当は、別れが怖くてたまらない。
けれど、その弱さを見せることができない。
「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」
心にもない言葉を吐き捨てる。
カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。
だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。
「……おめでとうございます、殿下」
恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。
その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。
――おめでとうなんて、言わないでほしかった。
――本当は、行きたくなんてないのに。
和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。
お楽しみいただければ幸いです。
【完結】毎日きみに恋してる
藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました!
応援ありがとうございました!
*******************
その日、澤下壱月は王子様に恋をした――
高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。
見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。
けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。
けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど――
このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。
誰かの望んだ世界
日燈
BL
【完結】魔界の学園で二年目の学園生活を送るイオは、人知れず鶯色の本をめくる。そうすれば、必要な情報を得ることができた。
学園には、世界を構成するエネルギーが結晶化したといわれる四つの結晶石≪クォーツ≫を浄める、重要な家系の生徒が集っている。――遥か昔、世界を破滅に導いたとされる家系も。
彼らと過ごす学園生活は賑やかで、当たり前のようにあったのに、じわじわと雲行が怪しくなっていく。
過去との邂逅。胸に秘めた想い――。
二度目の今日はひっそりと始まり、やがて三度目の今日が訪れる。
五千年ほど前、世界が滅びそうになった、その時に。彼らの魂に刻まれた遺志。――たった一つの願い。
終末を迎えた、この時に。あなたの望みは叶うだろうか…?
――――
登場人物が多い、ストーリー重視の物語。学校行事から魔物狩り、わちゃわちゃした日常から終末まで。笑いあり涙あり。世界は終末に向かうけど、安定の主人公です。
2024/11/29完結。お読みいただき、ありがとうございました!執筆中に浮かんだ小話を番外編として収めました。
【完結】俺とあの人の青い春
月城雪華
BL
高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。
けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。
ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。
けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。
それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。
「大丈夫か?」
涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。
恋の闇路の向こう側
七賀ごふん
BL
学校一の優等生として過ごす川音深白には、大切な幼馴染がいる。
家庭の事情で離れ離れになった幼馴染、貴島月仁が転校してくることを知った深白は、今こそ昔守られていた恩を返そうと意気込むが…。
────────
クールで過保護な攻め×完璧でいたいけど本当は甘えたい受け
君が僕を好きなことを知ってる
大天使ミコエル
BL
【完結】
ある日、亮太が友人から聞かされたのは、話したこともないクラスメイトの礼央が亮太を嫌っているという話だった。
けど、話してみると違和感がある。
これは、嫌っているっていうより……。
どうやら、れおくんは、俺のことが好きらしい。
ほのぼの青春BLです。
◇◇◇◇◇
全100話+あとがき
◇◇◇◇◇
猫と王子と恋ちぐら
真霜ナオ
BL
高校一年生の橙(かぶち)は、とある理由から過呼吸になることを防ぐために、無音のヘッドホンを装着して過ごしていた。
ある時、電車内で音漏れ警察と呼ばれる中年男性に絡まれた橙は、過呼吸を起こしてしまう。
パニック状態の橙を助けてくれたのは、クラスで王子と呼ばれている千蔵(ちくら)だった。
『そうやっておまえが俺を甘やかしたりするから』
小さな秘密を持つ黒髪王子×過呼吸持ち金髪の高校生BLです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる