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一
1話 赤城said
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くだらない戯れ事に費やす平凡な日常の浪費。俺にとって人生はその程度だった。友人付き合いは多い方で、毎日馬鹿をやっていた。
男女関係は続いて半年だった。みんな上辺だけ見て告白してくる。付き合ってみても結局は周りにチヤホヤされたいだけ。高校に入ってからは一度試しに付き合ったら、2回の浮気をされて別れた。そこからは全ての告白を流すようになっていった。運命の相手だとかずっと一緒だとかほんとくだらない。その場の嘘に一喜一憂して何が楽しんだ、理解ができない。
「お前C組の美優ちゃんに手出したってマジ?」
友達の誰かが佐々木楓に聞いている。
「いやいや。ただ借りてた教科書返すついでに飯行ってそのまま家に連れて帰っただけだよ。」
「うわー。それヒャク寝たやつ。」
盛り上がる恋愛話にため息を吐いた。
「お前もさ、とりあえず一発いっとけよ。その顔面で遊ばないのはマジで人生無駄にしてるぞ。」
佐々木に肩を組まれる。
「お前らサルと一緒にされてたまるか。」
「キレんなよ。青春なんて今だけだぜ?一発やってドーンよ。」
「お前ガチで最低だな。」
俺と佐々木の会話に周りから笑いが起きる。恋愛自体に興味がない俺と対照的に佐々木は常日頃彼女が代わると学校中で噂される。全く似ても似つかないが、佐々木はいい意味で正直で思ったことを口にするタイプだ。その言い切りが俺にとってはとても気が楽で第一、こいつとは色んな面で馬が合う。恋愛面は別として。
「あーあ、新入生可愛い子狙っちゃおうかな。おい赤城一学年階行こうぜ。」
「興味ない。勝手に行ってこい。」
肩に組まれる手を払い除け俺は自席に向かった。
廊下の窓から教室に入ってくる桜がゆらゆらと赤城の足元に落ちる。その桜を拾いあげると同時に教室の窓辺に目をやると目を紅くして少し辛そうに机に顔を埋める君がいた。怒っているのかと思ったら笑ったり表情がコロコロと変わる君から何故か目が離せなかった。
この気持ちがただの好奇心なのかわからないまま、そのまっすぐな君の瞳に夢中になった。まだどんな人間なのかもわからない。ましてや男。
「純潔..か。」
満開なその花に包まれる君に背を向け佐々木たちのいる教室に足を運んだ。
「趣味は昼寝です。苦手なことは夜更かしです。」
自己紹介で君が言っていた言葉。かわいい。不覚にもそう思ってしまった。
気づいたら君の事を目で追っていた。そして、君が知りたくてわざと席から動かず佐々木たちを自分の席に集めた。後ろの席で寝てる君にも聞こえる声で美化委員会になるつもりでいること。体育の選択はサッカーにすること。放課後は佐々木の家で集まって遊んでいること。火水土は主にバイトをしてること。なんでも良かった。少しでも君の気を引いてどんな表情をするのか見てみたかった。きっと声をかければ話してくれるし俺にもあの可愛い笑顔を向けてくれる。しかしそれをするつもりはない。鑑賞する分にはタダだ。魚は素手で触ると火傷してしまうのと同じで、君を傷つけてしまうのが怖くて近づけなかった。そんなことを考えて過ごしていたけど、意外にも早く触れることができた。君が俺と同じ委員会を選択した。
「委員会同じ!よろしくね。」
無意識なのか俺の手を取り、こちらに向けるその笑顔はとても眩しかったのをよく覚えている。俺の返事を聞く前に友達の元へ帰ってしまった。油断した。自分でもパーソナルスペースは狭い方だと自覚していたが、こんなにも心地がいい入り方をされると焦る。嫌味も下心もないまっすぐな気持ちでこっちに気遣い、すぐに離れる。ここまでストライクゾーンを突かれたことはなかった。
「やばいな....」
小声でそう呟いて俺は自販機に向かった。
人の懐に入るのが得意なのか、君はよく友達に抱きしめられたり撫でられたり愛されているのを目にした。
愛嬌がよく人との距離感を理解しているんだろう。仲川と一緒にいるのを見かけることが多く、前に小学生の頃の話をしているのを耳にした。そんな昔からの親密な仲なんだと知った。そして他にも君のことで気づいたことがある。
体育のあとの授業は、君は後ろで眠りについていること。他人の雑用を快く引き受けていること。そして君もよく俺のことを見ていること。
自意識過剰なわけじゃない。目で追うようになって気づいたことで最初は気のせいだと思った。疑念が晴れたのは昼休みの時だ。
中庭でいつも通り佐々木たちと飯を食べてる時、ふと視線を感じた。
話の流れで上の教室に目を向けると君が首を傾げてこちらを見ていた。その辺の女子から感じる視線とは違い、嫌に感じないものだった。
「んで、その時俺思ったのよ。やっぱ誰か1人に優しくするより、みんな平等に愛を注いだほうが世界平和もたらすし俺の欲求も満たされるんだわ。」
今日も上機嫌な佐々木が物申してる。
「まあそれが1番楽な生き方だよな。高校で一途とか空理空論だから。赤城もそう思うべ?」
佐々木の言葉に周りが反応し俺に聞いてくる。
「...結局は好きな相手がどうして欲しいかじゃない?そいつが自分だけに優しくして欲しいならそうするし、みんなに優しくって望むならそうするよ。」
一斉に周りが静まり返る。
「待て待て待て!どうした赤城?熱でもあんの?」
佐々木が笑いながら赤城の元に駆け寄る。
「お前なにがあった?もしかして恋人でもできた?」
新山秋冬が重ね重ねに聞いてくる。
「...まあ、好きなのかもな。」
一気に周りが騒がしくなる。
「おいおいマジかよ女子達泣くな、これは。誰よ、言ってみ言ってみ。」
「この学校?待って、これはちょい周りに広めるわ。」
「マジでやめろ。」
嫌そうにその場から立ち去る赤城の顔は心なしか笑っていた。
「あいつ、まじか。」
佐々木が拍子抜けしたようにベンチに座った。
恋心。やはりこの気持ちは間違っていない。泥沼に堕ちてしまうとそう簡単には抜け出せない。なら一緒に相手も沈めて仕舞えばいい。この時新しい感情が芽生えた。この世で最も厄介で面倒なもの。
「独占欲」だった。
でも今じゃない。ゆっくり時間をかけて。着実に。
6月の雨で蒸し暑い日のことだった。
3年の先輩から呼び出されて別棟の教室に来ていた。香水臭い身体を纏わりつかせながら好きだと言われた。
「すみませんが無理です。あとそうやって近づいてくるの俺苦手なんで。」
「なんで~。だって今彼女とかいないんでしょ?なら出来るまででいいし~!私もそのくらいの方が気が楽だな~って。」
「結構です。お引き取り下さい。」
「......っ。そんなに軽い気持ちじゃない......。本当に、本当に好き。一回だけ試しでもいいから。」
泣きそうになる先輩を1人残し教室を出ると、佐々木たちが俺を囲った。
「なになになに!モテ男は先輩にも好かれてんの?で、どーすんの?お試しワンチャンすんの?」
「ない。振った。はい終わり。早く帰りたい、めんどくさい。」
先に歩き出す俺に佐々木が後ろから乗ってくる。
「マジで言ってんの?お前やっば。もったいねー。ちょい俺慰めてくるわ。先家行ってて!」
「お前盛る気じゃん。」
佐々木を残し俺たちは先に下駄箱に向かった。
「本気でお前好きなやつできたん?」
機嫌悪そうに歩く俺を見て、新山が携帯をイジりながら聞いてくる。
「まあ。でもどうなりたいとかはないよ。そもそも全然興味なさそうに聞いてくるのやめろ。」
笑いながら、「悪い」と謝る新山の方に顔を向けると窓際に佇む君が見えた。
その表情はどこか寂しそうで雨の中に溶け込んでいるようだった。
「悪い、用事思い出した。先行ってて。」
そう言い残し俺は君の元へ向かった。
必死だった。なぜかこの瞬間を逃してしまったら、もう君との距離を縮めることができないとまで思えてしまった。さっき新山に言ったことはただの戯言だ。君の目の中に映りたい。そしてあわよくば1番近くの存在でありたい。それは我儘すぎるのだろうか。
理科室に着くと君は静かに1人で6限で使った道具を片付けていた。少しの間、教室に入らず君を眺めた。
遠くから人の声が聞こえてきて咄嗟に君に声をかけた。突然のことで焦ったのかよくわからない事を言い出す君。それがとても可愛らしかった。自分でもびっくりした。いつも思いつきで言の葉を発する自分が、ここまで発言に気を遣って話していることも、踏み込んだ話をしようとしていることも。しかし君の顔がだんだんと曇ってきて、俺の話を遮って否定してきた時、君の元へ近づきすぎてしまっていることにようやく気がついた。
急いでここの場の話を切り上げるつもりで一歩君から引いたその時、
「好きだ。」
君の口から出た言葉。驚いて身体が止まった。
都合よく自分の耳が解釈しているのか、将又本当に好きだと言ったのか。
逃げようとする君を急いで追いかけた。壁に押し当てた君の手が震えているのが分かった。冗談だと言う君の顔は焦りと狼狽でいっぱいになっていた。君を困らせたかったわけじゃない。ただ最後に、脳裏に焼き付ける思いで君を見つめた。
「赤城...好き。」
さっきの言葉もこの言葉も全て空想ではないとこの時確信した。そしてこの君の手の震えも、この後俺からどんな言葉をかけられるのか、不安と惨懐であるのだと悟った。
「付き合おうか。」
俺の言葉に静かに君は頷いた。安堵で溢れる顔が愛おしかった。今日だけ。今この瞬間だけは、雨が自分達を覆い隠してくれる。ならばそれに抗わず、ゆっくり君と溶け込んでしまえばいい。
男女関係は続いて半年だった。みんな上辺だけ見て告白してくる。付き合ってみても結局は周りにチヤホヤされたいだけ。高校に入ってからは一度試しに付き合ったら、2回の浮気をされて別れた。そこからは全ての告白を流すようになっていった。運命の相手だとかずっと一緒だとかほんとくだらない。その場の嘘に一喜一憂して何が楽しんだ、理解ができない。
「お前C組の美優ちゃんに手出したってマジ?」
友達の誰かが佐々木楓に聞いている。
「いやいや。ただ借りてた教科書返すついでに飯行ってそのまま家に連れて帰っただけだよ。」
「うわー。それヒャク寝たやつ。」
盛り上がる恋愛話にため息を吐いた。
「お前もさ、とりあえず一発いっとけよ。その顔面で遊ばないのはマジで人生無駄にしてるぞ。」
佐々木に肩を組まれる。
「お前らサルと一緒にされてたまるか。」
「キレんなよ。青春なんて今だけだぜ?一発やってドーンよ。」
「お前ガチで最低だな。」
俺と佐々木の会話に周りから笑いが起きる。恋愛自体に興味がない俺と対照的に佐々木は常日頃彼女が代わると学校中で噂される。全く似ても似つかないが、佐々木はいい意味で正直で思ったことを口にするタイプだ。その言い切りが俺にとってはとても気が楽で第一、こいつとは色んな面で馬が合う。恋愛面は別として。
「あーあ、新入生可愛い子狙っちゃおうかな。おい赤城一学年階行こうぜ。」
「興味ない。勝手に行ってこい。」
肩に組まれる手を払い除け俺は自席に向かった。
廊下の窓から教室に入ってくる桜がゆらゆらと赤城の足元に落ちる。その桜を拾いあげると同時に教室の窓辺に目をやると目を紅くして少し辛そうに机に顔を埋める君がいた。怒っているのかと思ったら笑ったり表情がコロコロと変わる君から何故か目が離せなかった。
この気持ちがただの好奇心なのかわからないまま、そのまっすぐな君の瞳に夢中になった。まだどんな人間なのかもわからない。ましてや男。
「純潔..か。」
満開なその花に包まれる君に背を向け佐々木たちのいる教室に足を運んだ。
「趣味は昼寝です。苦手なことは夜更かしです。」
自己紹介で君が言っていた言葉。かわいい。不覚にもそう思ってしまった。
気づいたら君の事を目で追っていた。そして、君が知りたくてわざと席から動かず佐々木たちを自分の席に集めた。後ろの席で寝てる君にも聞こえる声で美化委員会になるつもりでいること。体育の選択はサッカーにすること。放課後は佐々木の家で集まって遊んでいること。火水土は主にバイトをしてること。なんでも良かった。少しでも君の気を引いてどんな表情をするのか見てみたかった。きっと声をかければ話してくれるし俺にもあの可愛い笑顔を向けてくれる。しかしそれをするつもりはない。鑑賞する分にはタダだ。魚は素手で触ると火傷してしまうのと同じで、君を傷つけてしまうのが怖くて近づけなかった。そんなことを考えて過ごしていたけど、意外にも早く触れることができた。君が俺と同じ委員会を選択した。
「委員会同じ!よろしくね。」
無意識なのか俺の手を取り、こちらに向けるその笑顔はとても眩しかったのをよく覚えている。俺の返事を聞く前に友達の元へ帰ってしまった。油断した。自分でもパーソナルスペースは狭い方だと自覚していたが、こんなにも心地がいい入り方をされると焦る。嫌味も下心もないまっすぐな気持ちでこっちに気遣い、すぐに離れる。ここまでストライクゾーンを突かれたことはなかった。
「やばいな....」
小声でそう呟いて俺は自販機に向かった。
人の懐に入るのが得意なのか、君はよく友達に抱きしめられたり撫でられたり愛されているのを目にした。
愛嬌がよく人との距離感を理解しているんだろう。仲川と一緒にいるのを見かけることが多く、前に小学生の頃の話をしているのを耳にした。そんな昔からの親密な仲なんだと知った。そして他にも君のことで気づいたことがある。
体育のあとの授業は、君は後ろで眠りについていること。他人の雑用を快く引き受けていること。そして君もよく俺のことを見ていること。
自意識過剰なわけじゃない。目で追うようになって気づいたことで最初は気のせいだと思った。疑念が晴れたのは昼休みの時だ。
中庭でいつも通り佐々木たちと飯を食べてる時、ふと視線を感じた。
話の流れで上の教室に目を向けると君が首を傾げてこちらを見ていた。その辺の女子から感じる視線とは違い、嫌に感じないものだった。
「んで、その時俺思ったのよ。やっぱ誰か1人に優しくするより、みんな平等に愛を注いだほうが世界平和もたらすし俺の欲求も満たされるんだわ。」
今日も上機嫌な佐々木が物申してる。
「まあそれが1番楽な生き方だよな。高校で一途とか空理空論だから。赤城もそう思うべ?」
佐々木の言葉に周りが反応し俺に聞いてくる。
「...結局は好きな相手がどうして欲しいかじゃない?そいつが自分だけに優しくして欲しいならそうするし、みんなに優しくって望むならそうするよ。」
一斉に周りが静まり返る。
「待て待て待て!どうした赤城?熱でもあんの?」
佐々木が笑いながら赤城の元に駆け寄る。
「お前なにがあった?もしかして恋人でもできた?」
新山秋冬が重ね重ねに聞いてくる。
「...まあ、好きなのかもな。」
一気に周りが騒がしくなる。
「おいおいマジかよ女子達泣くな、これは。誰よ、言ってみ言ってみ。」
「この学校?待って、これはちょい周りに広めるわ。」
「マジでやめろ。」
嫌そうにその場から立ち去る赤城の顔は心なしか笑っていた。
「あいつ、まじか。」
佐々木が拍子抜けしたようにベンチに座った。
恋心。やはりこの気持ちは間違っていない。泥沼に堕ちてしまうとそう簡単には抜け出せない。なら一緒に相手も沈めて仕舞えばいい。この時新しい感情が芽生えた。この世で最も厄介で面倒なもの。
「独占欲」だった。
でも今じゃない。ゆっくり時間をかけて。着実に。
6月の雨で蒸し暑い日のことだった。
3年の先輩から呼び出されて別棟の教室に来ていた。香水臭い身体を纏わりつかせながら好きだと言われた。
「すみませんが無理です。あとそうやって近づいてくるの俺苦手なんで。」
「なんで~。だって今彼女とかいないんでしょ?なら出来るまででいいし~!私もそのくらいの方が気が楽だな~って。」
「結構です。お引き取り下さい。」
「......っ。そんなに軽い気持ちじゃない......。本当に、本当に好き。一回だけ試しでもいいから。」
泣きそうになる先輩を1人残し教室を出ると、佐々木たちが俺を囲った。
「なになになに!モテ男は先輩にも好かれてんの?で、どーすんの?お試しワンチャンすんの?」
「ない。振った。はい終わり。早く帰りたい、めんどくさい。」
先に歩き出す俺に佐々木が後ろから乗ってくる。
「マジで言ってんの?お前やっば。もったいねー。ちょい俺慰めてくるわ。先家行ってて!」
「お前盛る気じゃん。」
佐々木を残し俺たちは先に下駄箱に向かった。
「本気でお前好きなやつできたん?」
機嫌悪そうに歩く俺を見て、新山が携帯をイジりながら聞いてくる。
「まあ。でもどうなりたいとかはないよ。そもそも全然興味なさそうに聞いてくるのやめろ。」
笑いながら、「悪い」と謝る新山の方に顔を向けると窓際に佇む君が見えた。
その表情はどこか寂しそうで雨の中に溶け込んでいるようだった。
「悪い、用事思い出した。先行ってて。」
そう言い残し俺は君の元へ向かった。
必死だった。なぜかこの瞬間を逃してしまったら、もう君との距離を縮めることができないとまで思えてしまった。さっき新山に言ったことはただの戯言だ。君の目の中に映りたい。そしてあわよくば1番近くの存在でありたい。それは我儘すぎるのだろうか。
理科室に着くと君は静かに1人で6限で使った道具を片付けていた。少しの間、教室に入らず君を眺めた。
遠くから人の声が聞こえてきて咄嗟に君に声をかけた。突然のことで焦ったのかよくわからない事を言い出す君。それがとても可愛らしかった。自分でもびっくりした。いつも思いつきで言の葉を発する自分が、ここまで発言に気を遣って話していることも、踏み込んだ話をしようとしていることも。しかし君の顔がだんだんと曇ってきて、俺の話を遮って否定してきた時、君の元へ近づきすぎてしまっていることにようやく気がついた。
急いでここの場の話を切り上げるつもりで一歩君から引いたその時、
「好きだ。」
君の口から出た言葉。驚いて身体が止まった。
都合よく自分の耳が解釈しているのか、将又本当に好きだと言ったのか。
逃げようとする君を急いで追いかけた。壁に押し当てた君の手が震えているのが分かった。冗談だと言う君の顔は焦りと狼狽でいっぱいになっていた。君を困らせたかったわけじゃない。ただ最後に、脳裏に焼き付ける思いで君を見つめた。
「赤城...好き。」
さっきの言葉もこの言葉も全て空想ではないとこの時確信した。そしてこの君の手の震えも、この後俺からどんな言葉をかけられるのか、不安と惨懐であるのだと悟った。
「付き合おうか。」
俺の言葉に静かに君は頷いた。安堵で溢れる顔が愛おしかった。今日だけ。今この瞬間だけは、雨が自分達を覆い隠してくれる。ならばそれに抗わず、ゆっくり君と溶け込んでしまえばいい。
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