【完結】フィクション

犀川稔

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13話 僕と新山くん

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 あの後赤城に抱きしめられてずっと心臓が煩かった。もうこのまま止まっちゃうんじゃないかってくらい早く動いてた。勘違いかもだけど赤城の言葉もいつもより甘くて優しかったし、あのまま出前の人が呼び鈴を押さなかったら、多分今僕は生きていないとまで思う。
「芦野、準備できた?」
「あ......うん。」
 朝起きてリビングで寝ていた赤城を起こして一緒に朝ごはんを食べて支度をした。
 結局色々考えてて一睡もできずに朝を迎えた時は結構やらかしたと思ってたけど、普段見れない学校に向かう前の赤城が見れたことはなかなかに嬉しい。
 そんな事を考えながらワイシャツに着替えてネクタイを締める赤城を見ていると、その視線に気づいた赤城が話しかけてきた。
「...ん?何?」
「あ、いや。なんでもない......。」
 ......か、かっこいい...。ソファで寝る赤城を見た時から思ってたけど寝顔から始まって朝イチのビジュ良すぎないか。僕なんか寝癖でボサボサだったから急いで濡らして直してから起こしに行ったのに...。イケメンは何しても映えるって言うけどこう言う事なのか...。
 一心に見つめる恋に赤城近づいて恋のネクタイに手をかけた。
「...っえ?」
「ネクタイ曲がってる。......なんだ。朝からそんな熱い視線向けられて...キスしたいのかと思ったよ。」
 微笑みかけながら恋のネクタイを直す赤城に恋はキスをした。
「......っ。芦野......?」
「キ...キスは......したいと思ってたから。......正解かも...です。」
 恋が照れて赤城から離れると赤城が恋の腰を掴んで引き寄せた。
 恋の首元のワイシャツの襟をずらし口を近づけ、首を強く吸った。
「ん...っ。...え......?」
 驚いて取り乱す恋に赤城が優しく笑って恋のワイシャツを直した。
「芦野さん恋人ヅラとか言って誰のモノか理解してなかったみたいだからマーキング。俺のワイシャツだから少しデカくて見えちゃうかもね。」
 そう言うと恋の唇に触れて指でなぞった。
「そろそろちゃんと自覚してください。あなたは俺のだって。......さぁ、そろそろ向かいましょう。」
 赤城は状況が理解できず立ち尽くす恋の手を引き、二人は家を出た。
 隣を歩く赤城の顔を見て恋が「ねぇ。」と話し出した。
「昨日今日といい、ちょっとハードモードすぎない...?全然嫌じゃないしむしろ嬉しいけど、僕ちゃんとついていけてる......?」
 不安そうに聞く恋に目を向けて赤城が答えた。
「誰かさん俺といろんな事したいって言ってくれてたから色んなことしただけ。家じゃないと芦野緊張して逃げ出しちゃいそうだし、前回も今回もちゃんと恋人っぽいことできてるよ。芦野天才、えらすぎる。」
 そう言って恋の頭を撫でた。
 恋は赤城の言葉に安心したようにフワッと笑みを浮かべた。

「じゃ、また後でそっち話しかけに行くね。」
「うん...。あ、あの。泊まり楽しかった......あり...がと。」
 俯きながら話す恋に「うん。俺も。」と答えて、赤城は自席に荷物を置いて佐々木たちがいる方に行った。
 ......あああああああああ。刺激が、強すぎた......。確かに恋人っぽいことしたいって言ったのも赤城の周りの人たちみたいに距離近くって思って抱きついたり少女漫画で勉強して、キスの時に手回してみたりしたのも自分だけど。だけど...難易度高いって...。他のカップルってこんなの普通にできてるもんなの?心臓強すぎない?いや赤城全然いつもと変わらない顔してたし普通の事なのか...追いつくので一杯一杯すぎる......。
 席で頭を抱えたり振ったりと明らかに不審な行動をする恋に仲川は話しかけるのを辞め、自分の席に着き赤城の方を見た。恋のことを愛らしそうに見る赤城に「原因お前かよ...。」と呟き笑った。

「......お前芦野くんに何したの?」
 教室に入ってくるところからずっと二人を見ていた佐々木が問いただした。
「...特になんも。」
 友達と話しながら適当に返す赤城。
「んなわけあるか。すげぇ頭抱えてんじゃん。一緒に教室きたから喧嘩とかじゃないでしょ。」
「いやだから何もないって。」
 赤城が少し苛立たしそうに答えた。
「まぁいいけど。...で、なんで新山は機嫌悪いの?」
 朝から険悪な表情を浮かべる新山に佐々木が笑って聞いた。
「あー...まじで上手くいってるカップル全員消えてほしい。」
「いやまた喧嘩かよ。」
「今回ばかりは俺マジめに悪くないからね。」
 気怠そうに話しながらため息を吐く新山。それを見た赤城が携帯を手に取って動き出した。
「......後で俺にも聞かしてね。......俺、自販機行くわ。お前らも行くっしょ?」
 そう言って赤城は佐々木と新山だけ残し他の人たちを連れて教室を出て行った。

「昨日お前らと話した後千隼の事学校まで迎え行ったんだけどさ。そん時終わったって言ってんのに3.40分出てこなくて、電話かけたら友達と話してたって言ってて今から行くって言うから待ってたら男と楽しげに話しながら出てきて、俺の事見たそいつにもっと千隼の事大事にしてやってくれって言われたんだわ。」
「そもそも待たしてんのうぜーね。あいつ調子乗ってんな。」
 新山の話に軽く答える佐々木。
「待つのはまだいいんだよ別に俺が好きで行ってるんだし。んじゃなくて、全く俺の事知りもしないそいつにとやかく言われんのがムカつくんだわ。しかもそいつが俺に話してんの嬉しそうに千隼が見ててさ。お前もなんなんだよって思って。でイライラしすぎてそのまま無視して家帰ったわ。」
「わーお、しっかり喧嘩になってんね。あー...だから昨日俺があいつの携帯の充電器使ってただけであんなキレてたのか、納得。」
 佐々木が新山にもたれかかりその写真を撮った。
「で、その後どーしたん?」
「なんも言ってこないよ。音沙汰無し。ガチで俺に興味ないのかもねあの子。ただ告白されたから付き合ってみた的な。こっちばっかで萎えるわ。」
 新山の言葉に「うーん。」と携帯を打ちながら言葉を濁す佐々木。
「まあ俺が言うのもなんだけどあいつも兄の俺に似て恋愛適当にしてきた人だからねー。いきなり変わんのは無理よ。俺と違って頭いいけど、そう言うのは無頓着だからはっきり言わないと気づけないよ。察してーは効かんタイプ。」
 そう言い残し佐々木は新山を残して赤城たちのいる中庭に向かった。残された新山は深いため息を吐き、保健室に向かい四限まで眠った。

 午前で授業が終わり周りが下校する中、恋は先生に頼まれ理科準備室で授業で使った道具の片付けをしていた。片し終わり理科室通って部屋を出ようとした時、廊下を歩いていた新山とぶつかった。
「...いっ...た。」
「ごめん!あ...新山くん、......ごめんね大丈夫?」
 床に倒れ込む恋はその場で立ち尽くす新山に声をかけた。新山は吃驚しつつも恋の首筋にあるキスマークに気付き、乾いた笑いをした。
「ふっ......芦野くん普通逆ね。倒れたの芦野くんじゃん。俺もごめん考え事してて前見てなかった。」
 そう言って手を差し伸べ恋を起こした。
「そっかそっか。確かにそうだねっ。......今日新山くん来てたんだね。教室で見なかったからお休みかと思ってたよ!」
「あー。ずっと保健室にいた。起きたら放課後で焦りました。」
 新山が笑ってそう言うと恋は新山の額に手を触れた。
「えっ、体調悪いの?大丈夫!?熱は......あっ...ごめん。」
 咄嗟に当てた手をすぐに引っ込め後退りした。
 その様子を見た新山が宥めるように声をかけた。
「大丈夫大丈夫。ただ気が乗らなかっただけだから。熱あるわけじゃないよ、心配かけてごめんね。」
 新山が浮かない顔をするのに気付き、立ち去ろうとする新山の手を恋は掴んだ。
「あ...の、よかったら途中まで一緒に帰りませんか?」
 新山はその恋の言葉に少し悩んだ表情をした後、「いいよ。」と返事をして一緒に教室に荷物を取りに行き昇降口に向かった。

「芦野くんは何してたの?
 無言で歩く恋に新山が話を切り出した。
「あ、先生の手伝い...かな。」
「へぇー、えらいね。さすが真面目ちゃん。......あー、一緒に帰ろうって言うくらいだからなんか話があると思ったけど俺の気のせい?」
 ど直球に聞く新山に恋がビクッと反応して立ち止まった。
「新山くん元気なかったから。僕じゃ役不足かもだけど話相手でもとか...図々しいかもだけど思ったりして......。」
 小さな声で話す恋に驚いた後少し微笑んで新山が「歩こ。」と声をかけた。恋は新山の言葉に頷いて隣を歩き出した。
「......芦野くん恋人いるでしょ。」
「えっ...?」
「首...キスマークでしょそれ。」
 恋は新山言われ顔赤くし、慌ててワイシャツボタンを一つ締めた。
「やっぱり?だと思った。」
 恋の反応を見て新山は声を出し笑った。その後短い沈黙を挟んでまた話出した。
「芦野くんはさ、その自分の彼女が他の人と親しくしすぎてたらどーする?」
 突然の新山の質問に恋は驚いた。しかし新山の哀しげな表情を見て一度考え口を開いた。
「何も言わなかったと思います。」
 恋の回答に新山は「あ、そう...。」と言った。すぐ後に恋は「前の僕なら。」と付け足した。その言葉に新山が恋の顔を見つめた。
「きっと言わない方がいいって思っちゃってたと思います。嫌われたりウザイって思われるかもって。でも付き合ってる人に言われたんです、不安にさせてごめんって。...それって向こうも自分の悪かったことを自覚したから出た言葉だと思うんです。価値観も捉え方も違うからきっと向こうは許容できることも僕はできなかったりするからそれは言わないと伝わらないって最近になってやっとわかってきて。僕あまり恋愛経験なくて、だから毎回相手に頼りっぱなしで...向こうがそう言う環境を作ってくれたから僕も言い出せるようになったと言うか...。向こうもこうしてほしいって最近言ってくれるようにもなって、だから僕も答えれるようになったんです。だから今の僕ならできるだけはっきり嫌だって言うかも...です。......って自分語り長くてごめんなさい。」
 少し照れくさそうに恋が話すのを新山はポカンと口を開けて聞いていた。そして話終わってからテンパる恋に微笑みかけた。
「赤城たちが芦野くんたちのところ行く意味がわかった気がするわ。」
「え......?」
 驚く恋に新山が歩み寄った。
「今めっちゃ空気うまいもん、ここ。すげぇーね、俺めっちゃ納得しちゃったわ。その話。」
 恋は嬉しそうに笑いかけた。
「...新山くんの恋人さんすごく幸せだね。」
 新山が恋の言葉に驚嘆した。
「だって今日恋人さんのことで悩んでたんでしょ、きっと。そんなに思ってもらえるなんてとっても素敵だし幸せだよ。」
 透き通った綺麗な瞳で話す恋に新山が「ありがとう。」と、笑って言った。
 その新山の顔はさっきよりも明るくなっていた。

 駅で別れる時に新山が「俺も今度から絡みに行ってもいい?」と聞くと恋は「是非!!」と嬉しそうに返した。その表情に微笑み返して新山は帰って行った。
 恋は電車に乗り込み携帯を見ると、友達と遊ぶと先に帰った赤城からのちゃんと帰れたか心配のL◯NEが入っていた。それに返信しながら恋は今日あったことを思い返して微笑んだ。
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