ノンフィクション

犀川稔

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28話 モテる男の恋愛論

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「......ごめん。マジに話、理解ができないから和訳求むわ。」
 よく集まる新山と佐々木の最寄り駅前のファミレスで集合し話をしていた時に思わず赤城が新山に言った。そんな赤城に対し新山は、炭酸飲料を飲み干した後でもう一度同じ説明をした。
「千隼がお前の話ばっかりするのがうぜぇからもうちょいお前は自分の存在の主張控えろって言ってんの。」
 堂々と無茶苦茶な要求をする新山に赤城が呆れていると、隣で佐々木は笑うのを必死で堪えていた。
「お前...この脳天イカれてるアホどうにかしろよ。お前の慣れ親しい旧友だろ?」
「悪いけどこんな意気地なしの嫉妬激しい友人はとうの昔にクーリングオフしたと思うわ。」
 まるで他人事のようにケラケラと笑いながら話す佐々木のことを横から軽く押すと赤城は、平然とドリンクバーに向かった新山の背中を見ながらため息を吐いた。
「...俺の恋人相手の事、あいつにバラしてないの?」
「言ってないけどー...え、何。言って欲しかったやつ?」
「そう言うわけじゃない。てっきりベラベラ周りに漏らすかと思ってたわ。」
「いやいや!俺そんな薄情な奴じゃないって。そもそも赤城の恋人の友達からも遠回しに他に言うなって釘打たれてるし一応俺もモラルは守れるタイプよ。それに言うにしても赤城の口から直接あいつに言ったほうが何かといいでしょ。」
 珍しく正論を突き付ける佐々木に驚き赤城が反応に困っているとそこに帰って来た新山が「なんの話?」と入ってきた。
「赤城が思う恋人の好きなところの話~!」
 ケロッと態度を変えて返した佐々木鬱陶しそうな顔を赤城が向けると、新山は「で?どこなの?」と乗ってきた。
「......そもそも嫌いなところがない。」
「うわぁー...。」
 明らかに赤城が滑ったような反応をした佐々木と何を言っているのか理解していないような表情を向けた新山はほぼ同じタイミングで「綺麗事すぎじゃね。」と口を開いた。
 そんな2人の事を流すように見ていた赤城の足元にハンカチが落ちてきた。
 赤城は手を伸ばして拾い上げ軽く汚れを叩くと、それを落とした自分と同じく高校生くらいの女の子に手渡した。
「あっ、ありがとうございます!!...えっと、その...すみませんっ!お礼をしたいので今度ご飯とか行きませんか!?」
 明らかに目をキラキラと輝かせた女の子に赤城は一秒と時間を空けずに返した。
「すみません、そういうのは恋人がいるのでちょっと...。あとただ近くに落ちたハンカチを拾っただけなのでお気になさらず。」
 そう言って目線も合わせようとしない赤城を見て女の子は諦めたのか「じゃあ連絡先だけ...。」と尻込みして言った。
「あんま連絡取るの好きじゃなくて必要最低限の人としか交換してないんで...はい、厳しいかもです。」
 ばっさりと連絡先の交換を切った赤城に顔を赤くしてその場を去っていった女の子は、自分の席に戻りと「作戦失敗した~!」と友達に漏らしていた。そんな会話を聞いていた新山と佐々木が呆然としていると赤城は何事もなかったかのようにさっきの話の続きをし始めた。
「結局は自分の理想とどんくらいかけ離れてるかでしょ。自分から見た恋人も他人から見える自分の恋人も感じ方は違うわけであって、だからこそその相手が少しでも自分の理想と違うように映ったらできるだけ自分の理想に近づいてほしいって願うのが人間の本能なんだよ。でもそれは相手にとってはただの厄介な願望だし、結局はその人本来の性格を好きになりきれてないって意味だと思うんよね。大事なのは本来の性格そのものを知った上で相手をどこまで受け入れられるかでしょ。俺は恋人のその全部を好きだと思えるから嫌いだと思う箇所はないって言っただけの話。」
 ペラペラと一方的に話をする赤城の事を佐々木はニヤニヤと笑みを浮かべながら聞き、新山はぽかんと口を開けて聞いていた。
「......あー、今のなし。完全に自分語りキモすぎたわ、消えたい。」
「うん、普通に言ってること理解度高いクソ真面目なイイ彼氏ムーブすぎてちょ寒いかもな。」
「...マジでお前くたばれよ。」
 茶々を入れる佐々木に当たり散らかした赤城は頭を冷やすようにドリンクを一気飲みして新しい飲み物を取りに行った。
 その間ずっと黙り込んでいた新山は遠い目でどこか一点を見つめていると、佐々木は席を移動し新山の隣に座った。
「らしいっすよ、新山さん。君が一方的にライバル視してる赤城からのありがたい助言なんじゃないっすかね?」
「......モテるやつは余裕があるって言うだけのただの自慢にすぎてねぇわ、アホらしい。」
「お前...あれをそう受け取るのはもうただの虚しいやつだぞ。」
 呆れたように佐々木が半笑いで言うと「冗談だよ。」と新山はため息を吐いて返した。

 この日はこの後赤城と佐々木がどちらもバイトだと言うから最後に週末の花火の予定だけ決めて解散した。
 別れる前にコンビニに寄った佐々木を外で待ってる時に赤城から「カッコつけてあの時あー言ったけど、俺はお前のペースでいいと思うよ。好きなやつの前で余裕なんて誰も無理な話ではあるからね、俺も含め。」と声をかけられた。
 家に帰りながら赤城から言われた事を考えていると自然となんだか笑えてきた。顔が良くわりかし頭が良くて極めつけにここまで相手に気を回せる。非の打ち所がないのないほど完璧な友人に対して嫉妬どころかぐうの音も出なかった。だからこそ少しでも恋人に接触をさせようものなら、その友人に意識を持っていかれるのではないかと不安と焦りを感じてしまう。そんな中でまだ解決し切っていない家族の問題もある。
 一つずつ解いていかないと頭では分かっていてもいざ面と向かって向き合おうとすると元の自分の生活上、面倒だと感じてしまう気持ちがどこかにあり行動を邪魔する。

 ぼーっと家までの道を歩いていると後ろから肩を叩かれて新山はゆっくりと後ろを振り向いた。明るい笑顔で目の前に立つ愛美を見て新山は「なんだお前か。」と冷たく遇らった。
「ねぇ~!確かにその感じの方がいいとは言ったけど流石に態度悪すぎじゃない!?目の前にいるの見つけてせっかくだしと思って声かけたのに。」
 頬を膨らしながらいじけた愛美はその後また歩き出した新山の隣に行くと無愛想な新山にそっと話しかけた。
「...あの男の子にはあ~んなに笑顔見せてしかも抱きしめてたくらいなのに、妹の私には笑って話もしてくれないわけ~?」
 その言葉を聞いて驚いて顔を上げると薄く笑みを浮かべる愛美のことを見て焦って目を逸らした。
「別に...あいつは関係ないでしょ。」
「あの子お兄ちゃんの友達とか?」
 真相はわかっているはずなのにシラを切るように言った愛美に新山は言い返そうとするとそのタイミングで携帯が鳴った。そして千隼から届いたメッセージを見ると柔らかく笑って話を中断してメッセージに返事を返した。
 その後で文句を言いたげな愛美にまた目を向けると新山は緩んだ表情のまま口を開いた。

「うん。友達のであって、俺の恋人だよ。」
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