ノンフィクション

犀川稔

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33話 新山さんの家族

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 新山のベットで目を覚ました千隼は隣で携帯を弄っている新山を見て「おはよう。」声をかけた。千隼が起きた事に気付くと、画面を消し携帯を置いた後で新山は千隼の体調を心配した。
「腰が痛いのと心なしかダル重い気がするけど大丈夫だよ。そんなことよりお腹すいた。」
 マイペースにそう言い出した千隼に新山は面白可笑しそうに笑うと「昨日買ってきたやつでいいなら冷蔵庫入ってるわ。」と言って千隼を連れてリビングに向かった。

 リビングには先に起きて朝食を摂っていた父親と愛美がいて、二人は楽しそうにテレビを見ながら話をしていた。
「あぁ秋冬と千隼くん、おはよう。二人とも早いね。まだ眠っているかと思ったよ。」
「おはよ。父さんこそ土曜なのに朝早くね?」
「あ、いやぁ...歳をとると休日でも早起きになるもんなんだよ。」
 あくびをしながら千隼をソファに座らせると新山はキッチンに向かいながら父親に話をした。そんな新山の話を聞いて愛美は横から口を出した。
「...お父さん、お兄ちゃんの恋人が来てるからだらしなく思われたくなくて目覚ましかけて早く起きたらしいよ~。それで暇になって私のことも叩き起こしてきたの!本当厄介だよ~!」
「おっ、おい!バラすなよ...!」
 愛美に真相を明かされると、父親は恥ずかしそうに耳を赤く染めた。新山さんの緊張した時に耳が赤くなるのはお父さんの遺伝子なのかと父親を見て悟った千隼がクスッと家族の会話を聞いて笑っているとそんな千隼を見て父親は照れて頭を掻いた。
「昨日は突然のことで驚いてあまり良い反応はできなかったけれど、私は千隼くんに会うことができてとても嬉しかったんだ。それに息子が恋人を紹介するの初めてでね。つい興味が湧いてしまったよ。」
 好奇心旺盛な子供のように瞳をキラキラさせて言った父親に笑顔を向けると「そう言ってもらえて嬉しいです。」と千隼は返した。
 そんな二人の会話を安堵の表情を浮かべて見ていた新山がパッと冷蔵庫を開けると、昨日買ってきたはずのサンドイッチとデザートがなくなっていた。
「は?誰食ったの。」
「あー、わたしわたし!」
「おい...あれ、千隼の朝用だったんだけど。」
 キレ口調で新山が言葉を漏らすとそれに対し愛美は呆れたようにため息を吐いた。
「だと思ったよ~。お兄ちゃん、正直に言うけどさ...初めて家に来てくれた恋人に前日買ったコンビニのサンド出すとかまじでないからね?作れるんだから手料理作ってあげればいいじゃん。流石に興醒め案件だよ?」
 ガチトーンで話す愛美に新山が何も言い返せずにいるとそれを聞いていた千隼が驚いた顔で「え、新山さんご飯作れるの?」と聞いた。
「作れるどころか主婦並みにパパッと仕上げちゃうくらいの腕前だよお兄ちゃん。えっと...千隼、さんも作って~って言えばいいのに!」
 余計なことを言い出した愛美を新山が睨んでいるとその横から千隼が自分の方を見ているのに気付き目を向けると、明るい表情をして「作って!」と千隼が言い出した。そんな千隼を見て父親と愛美がニヤニヤと笑っていると「まじでお前ら...。」と愚痴を溢しながら新山は朝食を作り出した。

 ものの数分で作り終えた新山は千隼をダイニングテーブルに呼ぶと、作った料理をテーブルに置いた。その料理を見た千隼は驚いて料理と新山を交互に何度も見た。
「え、ごめん。苦手なものでもあった?」
「全然...いや、え...?これ全部今作ったの?」
「うん?そうだけど...。」
 プレート皿に乗っていたフレンチトーストにスクランブルエッグ、よくオシャレなカフェとかで添えられているようなサラダにトマトとチーズのカプレーゼ。極普通の高校生男子が作ったとは思えない朝食にぽかんと拍子抜けしていると新山が横からナイフを入れてフレンチトーストを切った。
「...そんなサービスまで付いているんですか?」
「恋人限定のサービスっすね。普段はセルフです。ちなみにキスも付けれますが如何すか?」
 ご機嫌に新山が笑いながら返すと千隼は顔を赤く染めながら「そっちに関しては寝起きからは重いかも。」と遠回しに遠慮した。
 普段は無口な新山がわかりやすくデレているのを見た家族は新山のことを見て呆れて笑っていた。
 美味しいと何度も言いながら食べている千隼のことを前から見ながらその様子を携帯で撮っていた新山は思い出したように愛美に話しかけた。
「そういや言ってなかったけど千隼、お前と同じ歳だよ。」
「え、そうだったの~!?じゃあ、千隼くんって呼んでもいい?」
 嬉しそうにそう聞いてきた愛美に動揺しながらも千隼は「是非!」と笑って返した。
 三人で盛り上がってる話にそわそわしていた父親もその後は話に加わりしばらくの間たわいもない話を交わしていると、リビングの扉が開き母親が入ってきた。
「...あら?お客さんが来てたの?」
 状況を何も知らない母親が部屋に入って早々テーブルで楽しそうに話していた家族と千隼を見て話しかけた。
「あ、お母さんおはよう~!うん、千隼くん。お兄ちゃんのお客さんだよ。私と同じ歳なんだって~!」
「あら、そうなの。顔も...とても整った顔してる子ね。秋冬と同じ学校に通っているの?」
 母親が余計なことを言わないか新山を含め父親も愛美もヒヤヒヤしていたけれど特に普通に会話を始めたので一安心していた。
「あ、いえ...僕は 聖蘭せいらん高校に通ってます。僕の兄が新山さんと同じ学校に通っていてそれで...。」
「聖蘭!?とっても頭がいいのね、すごいわ!家族もさぞ誇らしいことでしょうね!...あ、あぁ...なのにお兄さんは君とは違って...ちょっと可哀想な感じなのね...。」
 馬鹿にしたように半笑いをしながら言った母親に千隼以外の三人が思わず口を開き何度も母親に謝るよう言い出したけれど、当の母親はなんの悪びれもなくケロッとした顔で澄ましていた。
 そんな母親を見ていた千隼はクスッと笑い、それを見ていた母親は「何が面白いのかしら?」と首を傾げた。
「いや...久々に学歴と偏見でしか判断できない人を見たのでつい面白くて...。すみません。悪意は全く無いんですが生憎、僕の周りにそんな個性ある人たちは居なかったので実際そんな無神経な人本当にいるんだなーと実感してしまいました。」
 先ほどの母親同様、なんの悪びれもなくペラペラと皮肉を交えて話した千隼の話を聞いて怒りを露わにした母親は「ちょっと!その言い方はあまりにも...」と逆上し言うとそれに被せるようにして「失礼ですよね。」と千隼が言った。
 それを聞いて動揺していた母親に千隼は冷静なトーンで言葉を続けた。
「発言は一度してしまうとそう簡単には消せないんです。この後どんなに僕が良いことをしたとしても、きっとお母さんからすると僕は失礼なことを言ったただの厄介な人だと思ってしまうのと同じで、僕の中では物事がどうひっくり返ってもお母さんは僕の大切な兄のことを侮辱した人間だと思ってしまうんです。だから今後はご自分の発言に今一度気を遣ってみるのもいいかもしれません。初対面の分際で生意気なことを言ってすみません、準備をしたらすぐ出て行きますね。お邪魔しました。」
 そう言って頭を下げると千隼は席から立ち上がり新山の部屋に向かって歩き出した。そんな千隼の後を追うように立ち上がった新山は、母親のことを鋭く睨みつけると「今度俺の恋人に何か変な事言ったらそん時はまじで縁切るからね。」と言い母親の肩にぶつかりながらリビングを出て行った。
 残された父親と愛美が大きくため息を吐いて呆れていると少し時間が立ってから理解をしたのか、母親が「え、恋人...え?どう言う事?」と頭を抱えだした。そんな母親にかける言葉がなかった二人は何も言わずに無言で立ち上がり新山の部屋に向かった。
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