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二
18話 最悪の再会
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夏休みに向けて新山さんがバイトを立て続けに入れていることもありおれたちは顔を合わす事なく三日が過ぎていた。期末テストが終わったらと思ったらバイト三昧で本当にちゃんと休めているのかが不安になるけど、新山さんのことだからおれが心配なんてすると逆に気を遣わせるから、とりあえず時が過ぎるのをただただ待つことにしていた。
兄貴の学校の方が今日は早く終わっていたらしくおれが帰るより先にもうリビングから笑い声がしていた。どうせまた「いかにも陽キャです。」と言わんばかりのツラが並んでいるんだろうと思うと、おれは特に声をかけることもなくまっすぐと自分の部屋に向かった。
そしてダラダラ漫画を読んで過ごしていると兄貴が部屋に入ってきて「ビニコン行くけどなんかいるかー?」と機嫌よく話しかけてきた。
バナナオレを頼むと気前よく「ういー!」と言う兄貴を見てやけに優しくて、気色悪く感じた。
玄関を開ける音が聞こえてからまもなくして部屋がノックされるとおれは漫画を読みながら適当に返事をした。しかしドアを開け入ってくる人物を見て返事をした事を後悔した。
もう二度と会いたくないと思っていた。おれにトラウマを植え付けたあの人だった。
そいつは顔色を悪くして目線を逸らすオレを見て「あ、覚えててくれたんだ。嬉しいな。」と笑って言った。何を言っているのか理解できないほど冷静になれなかったおれが無言でいると部屋の中に入ってきておれの隣に座った。そしてそいつがおれの腰に手を当てた瞬間一気に背筋が凍ったような感覚になり、おれは思いっきりそいつの手を払った。
「え~ちょっと酷くない?前にキスまでした中なのに...今日帰り道で偶然佐々木に会ってさ。千隼くんにも会いたかったし来ちゃったよ。...わざとゲーム負けてさ、金渡してみんなコンビニ行ったから今家誰もいないし大丈夫だよ?ちょっと緊張しちゃったよね。」
ヘラヘラと笑って話すそいつの気持ちが理解できずに黙っていると兄貴たちが帰ってきた。
「ほら、佐々木たち帰ってきたよ。そんな顔してたら何があったのか細かく聞かれちゃうよ。」
どんどん近づいてくる足音を聞きながらそいつはおれを見て笑って言った。
頼んでいたバナナオレを持って二階に上がってくるとおれとそいつが部屋で一緒にいるのを見て兄貴は驚いて部屋から出ていこうとした。しかし隣に立っていた新山さんはおれたちのことを見て「...は?」と思わず声を漏らしていた。
「え、なんで新山さんいるの?」
「いや、店長がシフトミスって人員多すぎるから先に上がったってさっきL◯NEしたんだけど......。」
気まずい雰囲気が流れるその沈黙をおれの隣に座るそいつがぶち壊した。
「千隼くんと久々に話したくて部屋来たんだけど、なんかすごい意気投合しちゃってさ!つい話し込んでたわ...ね?千隼くん。」
そう声をかけられるとおれは無理矢理に笑顔を取り繕った。そんなおれを見ていた新山さんは
「へー、よかったじゃん。」
そう言ってすぐに一階に降りて行った。そんな新山さんを追いかけて兄貴が降りていくとそいつもようやく立ち上がった。
そして部屋を出る間際に「また二人でお話しようね!」と言って出て行った。
緊張とやっと居なくなったと言う安堵で全身の力が抜けて千隼は床にしゃがみ込むとそのままボロボロと涙を溢した。
この涙の意味はよく分からない。あの人への恐怖心なのか新山さんに誤解された苦しさなのか将又そのどちらもなのか。
しばらくそのまま涙を溢し続けていると友達を家から返した佐々木が千隼の部屋に戻ってきた。
「なに、どうしちゃったのよ。新山なら大丈夫だよ、どうせ土間が一方的にお前に話しかけてただけだって言ったら理解してたし頭冷やして普通に接するって言ってたから時が過ぎれば元通りになるべ。」
佐々木が泣きじゃくる千隼の鼻にティッシュを押し当てると千隼はそのまま鼻を噛んだ。そしてそのティッシュをゴミ箱に捨てようと佐々木が立ち上がるとその佐々木の手を千隼が掴んだ。
「......今日おれの部屋に来た人...あの人のこともう家にあげないでほしい。もしあげる時はおれに言ってほしい、その時はおれ家から出ていく...。」
しゃっくりをしながらそう話す千隼の事を見ると佐々木はまた床に座り「あいつと何があった?」と聞いた。
しばらく黙秘をしていた千隼だったけれどなかなか引こうとしない佐々木の様子を見て話した方が気が楽だと悟り、小学生の頃に起こったあの話を佐々木に話した。
「お前さ~...そういうのはマジでその時に言ってくんね?普通に友達の弟に手出すあいつキモいしもう縁切る案件だわそれは。周りにもシェアしておくわ。」
困ったように頭を掻いた佐々木が呆れたようにそう言うと千隼は咄嗟に声を出した。
「待って、それはやめて。」
「は、なんで?お前ももう生理的にあいつ無理でしょ。」
「無理は無理だけどそれ周りに言ったら、新山さんにも知られちゃうじゃん。それは本当に...やだ。」
一生懸命説明する千隼に佐々木は「あいつに勘違いされたままの方がよほどまずいと思うけど。」と背中を摩りながら話した。しかし依然として考えを変えない千隼の意見を尊重して最後は「まぁわかったよ。他には言わないしもちろん俺はもうあいつと絡まないよ。」と言い残し部屋から去って行った。
佐々木がいなくなると、千隼はゆっくり立ち上がってベットに移動すると放置していた携帯を手に取りL◯NE開いた。
確かに新山さんから連絡が来ていた。それも「会いたいから今から家行くね。」と言う言葉も付けて。なのにおれは新山さんとの約束破った上に自分はあんなに他に人と話していると嫉妬をしているのに自分はそれをしてしまっていた。その事実が本当に許せなくて自分に腹を立てた。
電話をかけたかったけれどこんな状態でかけれる
わけもなく、おれはメッセージで謝った。できる限り素直に正直に丁寧に、一文字一文字心を込めて送った。
しかし送ったその日に既読の文字がつくことはなかった。新山さんから返事が来たのは翌日の夜中。
「別にいいよ。俺も馬鹿みたいに気にしてごめんね。もう怒ってないし期待するの辞めることにしたからへーき。」
あぁ、もう完全にダメなやつだ。絶対に許してもらえないしきっともう新山さんはおれから冷める。
そう思うともう全てがどうでもよくなってしまって、あんなに楽しみにしていた「夏休み」と言う言葉が苦しくて重いものに感じてしまった。
兄貴の学校の方が今日は早く終わっていたらしくおれが帰るより先にもうリビングから笑い声がしていた。どうせまた「いかにも陽キャです。」と言わんばかりのツラが並んでいるんだろうと思うと、おれは特に声をかけることもなくまっすぐと自分の部屋に向かった。
そしてダラダラ漫画を読んで過ごしていると兄貴が部屋に入ってきて「ビニコン行くけどなんかいるかー?」と機嫌よく話しかけてきた。
バナナオレを頼むと気前よく「ういー!」と言う兄貴を見てやけに優しくて、気色悪く感じた。
玄関を開ける音が聞こえてからまもなくして部屋がノックされるとおれは漫画を読みながら適当に返事をした。しかしドアを開け入ってくる人物を見て返事をした事を後悔した。
もう二度と会いたくないと思っていた。おれにトラウマを植え付けたあの人だった。
そいつは顔色を悪くして目線を逸らすオレを見て「あ、覚えててくれたんだ。嬉しいな。」と笑って言った。何を言っているのか理解できないほど冷静になれなかったおれが無言でいると部屋の中に入ってきておれの隣に座った。そしてそいつがおれの腰に手を当てた瞬間一気に背筋が凍ったような感覚になり、おれは思いっきりそいつの手を払った。
「え~ちょっと酷くない?前にキスまでした中なのに...今日帰り道で偶然佐々木に会ってさ。千隼くんにも会いたかったし来ちゃったよ。...わざとゲーム負けてさ、金渡してみんなコンビニ行ったから今家誰もいないし大丈夫だよ?ちょっと緊張しちゃったよね。」
ヘラヘラと笑って話すそいつの気持ちが理解できずに黙っていると兄貴たちが帰ってきた。
「ほら、佐々木たち帰ってきたよ。そんな顔してたら何があったのか細かく聞かれちゃうよ。」
どんどん近づいてくる足音を聞きながらそいつはおれを見て笑って言った。
頼んでいたバナナオレを持って二階に上がってくるとおれとそいつが部屋で一緒にいるのを見て兄貴は驚いて部屋から出ていこうとした。しかし隣に立っていた新山さんはおれたちのことを見て「...は?」と思わず声を漏らしていた。
「え、なんで新山さんいるの?」
「いや、店長がシフトミスって人員多すぎるから先に上がったってさっきL◯NEしたんだけど......。」
気まずい雰囲気が流れるその沈黙をおれの隣に座るそいつがぶち壊した。
「千隼くんと久々に話したくて部屋来たんだけど、なんかすごい意気投合しちゃってさ!つい話し込んでたわ...ね?千隼くん。」
そう声をかけられるとおれは無理矢理に笑顔を取り繕った。そんなおれを見ていた新山さんは
「へー、よかったじゃん。」
そう言ってすぐに一階に降りて行った。そんな新山さんを追いかけて兄貴が降りていくとそいつもようやく立ち上がった。
そして部屋を出る間際に「また二人でお話しようね!」と言って出て行った。
緊張とやっと居なくなったと言う安堵で全身の力が抜けて千隼は床にしゃがみ込むとそのままボロボロと涙を溢した。
この涙の意味はよく分からない。あの人への恐怖心なのか新山さんに誤解された苦しさなのか将又そのどちらもなのか。
しばらくそのまま涙を溢し続けていると友達を家から返した佐々木が千隼の部屋に戻ってきた。
「なに、どうしちゃったのよ。新山なら大丈夫だよ、どうせ土間が一方的にお前に話しかけてただけだって言ったら理解してたし頭冷やして普通に接するって言ってたから時が過ぎれば元通りになるべ。」
佐々木が泣きじゃくる千隼の鼻にティッシュを押し当てると千隼はそのまま鼻を噛んだ。そしてそのティッシュをゴミ箱に捨てようと佐々木が立ち上がるとその佐々木の手を千隼が掴んだ。
「......今日おれの部屋に来た人...あの人のこともう家にあげないでほしい。もしあげる時はおれに言ってほしい、その時はおれ家から出ていく...。」
しゃっくりをしながらそう話す千隼の事を見ると佐々木はまた床に座り「あいつと何があった?」と聞いた。
しばらく黙秘をしていた千隼だったけれどなかなか引こうとしない佐々木の様子を見て話した方が気が楽だと悟り、小学生の頃に起こったあの話を佐々木に話した。
「お前さ~...そういうのはマジでその時に言ってくんね?普通に友達の弟に手出すあいつキモいしもう縁切る案件だわそれは。周りにもシェアしておくわ。」
困ったように頭を掻いた佐々木が呆れたようにそう言うと千隼は咄嗟に声を出した。
「待って、それはやめて。」
「は、なんで?お前ももう生理的にあいつ無理でしょ。」
「無理は無理だけどそれ周りに言ったら、新山さんにも知られちゃうじゃん。それは本当に...やだ。」
一生懸命説明する千隼に佐々木は「あいつに勘違いされたままの方がよほどまずいと思うけど。」と背中を摩りながら話した。しかし依然として考えを変えない千隼の意見を尊重して最後は「まぁわかったよ。他には言わないしもちろん俺はもうあいつと絡まないよ。」と言い残し部屋から去って行った。
佐々木がいなくなると、千隼はゆっくり立ち上がってベットに移動すると放置していた携帯を手に取りL◯NE開いた。
確かに新山さんから連絡が来ていた。それも「会いたいから今から家行くね。」と言う言葉も付けて。なのにおれは新山さんとの約束破った上に自分はあんなに他に人と話していると嫉妬をしているのに自分はそれをしてしまっていた。その事実が本当に許せなくて自分に腹を立てた。
電話をかけたかったけれどこんな状態でかけれる
わけもなく、おれはメッセージで謝った。できる限り素直に正直に丁寧に、一文字一文字心を込めて送った。
しかし送ったその日に既読の文字がつくことはなかった。新山さんから返事が来たのは翌日の夜中。
「別にいいよ。俺も馬鹿みたいに気にしてごめんね。もう怒ってないし期待するの辞めることにしたからへーき。」
あぁ、もう完全にダメなやつだ。絶対に許してもらえないしきっともう新山さんはおれから冷める。
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