生涯年収

コユメ

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最寄りの駅につく頃には大分遅い時間になっていた。

「グー」

腹が鳴った。

「はぁ」

考えてみれば朝から何も食べていない事を思い出した。
スマホを取り出し時刻を見ると行き付けのスーパーが後30分で閉まる焦って走って何とかギリギリにスーパーに滑り込んだ。
店内には誰もおらずガランとしていた。
お客は僕一人だのようで足早に惣菜コーナーに行き半額シールの惣菜をカゴの中に入れレジに向かうとレジには男性が一人居るだけだった。
ここには良く来るけどこの男性を見るのは初めてだった。
男は僕を見るとニコニコと愛想良く

「いらっしゃいませ」

頭を下げ手際良く惣菜をレジに通した。
僕はお金を払おうと財布を取り出すと

「ちょっと、いつまで店やってんのよ!早く閉めなさいよ、電気代勿体ないじゃないのよ!」

怒りながら女性が店の奥から出て来た。
するとレジに居た男性は慌てながら僕を見て
「まだ、お客さんいるから!」

女性は僕を見て鼻を鳴らし馬鹿にした顔で

「さっさとしなさいよ!こっちは忙しいんだから!」

男性は女性にヘラヘラと笑いながら

「ごめんね直ぐにお店閉めるからちょっと待ってて?」

「本当に愚図なんだから!」

すると女性は僕と男性を睨みながら奥に消えた。

あんなのが奥さんなんだろうかと思っていると男性のエプロンの名札が見えた。
そこには店長上田とあった。
でもここはスーパースズキだったはず?
店長と目が合うと店長は申し訳なさそうに頭を下げ

「ごめんなさいね?嫌な気分にさせてしまって」

僕は慌てて手を振り

「いや大丈夫ですから」

言うと店長はレジから走って行ったかと思うと直ぐ帰って来て手に持っていた唐揚げを

「これ、ほんの気持ちなんで」

「いいですよ!そんな気にしてませんし」

断ったが店長はいいからと僕に唐揚げを押し付けた。
僕はそれじゃあと、ありがたく貰う事にした。
そして惣菜をリュックに詰めてスーパースズキを出た。
ふと空を見ると月が出ていた。

「月…綺麗だな」

一人ごちた。
そしていつも近道に使っている南公園が見えて来た。
南公園は昼間は子供やら人が賑わっているのだけれど夜になると、街灯が少ないせいで人気が無いそれに公園なのにやたら木々が密集していて暗闇だと更に怖い、でもこの公園を突っ切ると直ぐアパートだからいつも近道に使っていた。
今日も南公園を突っ切ろうと入ると人の話声が聞こえた。
僕は咄嗟に辺りを見渡すと木々に隠れるように誰かが居る。
どうやら2人組の男達が小さな声でヒソヒソと喋っべりながら身を屈め何かを探しているようだった。
こんな夜中に何を探しているのかと思っていると男達は喋りながらこっちに来た。
僕は咄嗟に木の影に隠れた。
すると

「本当に何やってんだよ!お前はよ!」

男が怒鳴った。
するともう一人が

「うるせ黙れ!仕方ねえだろ落としたもんは、さっさと探せよ!」

「はぁ!探してんだろうが!うぜ、そもそも何で俺がお前の免許証探さないといけねーんだよ!」

「ああ?別にいいけどよ、もしあの事件がバレたら俺はお前の事も警察に言うぞ?それでもいいのらもう帰れよ!」

言うともう一人の男は舌打ちをし

「チッ!探せばいいんだろう!」

近くの木を蹴った。
2人の言葉に僕は朝のニュースを思い出した。
ニュースで聞いた犯人はこいつらだ。
だったら余計に見つかるのは不味い僕は後退った瞬間足元にあった何かを踏んだ咄嗟に見ると免許証の様だった。
僕は手に取り見ると免許証には男の名前が

「暮林 晴人」

口に出して読んで咄嗟に口をつぐんだ。
ヤバイ物を見つけてしまった。
急に冷や汗が吹き出してきた。
僕は元に戻そうと屈むと

「おい、確かここら辺じゃ無かったか?」

いつの間にか近くまで来ている見つかるとヤバイ

「ああ、そうだここでアイツボコッたわ」

「何で見てた俺が覚えていてお前が覚えてねーんだよ」

「うるせーな、いいだろ別に」

2人の会話している隙に少しずつ離れた木の影に隠れ様子を伺っているといきなりポケットのスマホが鳴った。

「♪」

慌ててスマホを止めようとしたが静かな公園でその音は響いた。
すると男達は

「おい、誰か居んのか!」

「探せ!あっちの方からしたぞ!」

男達は大声で自分を探している心臓がうるさくて余りの恐怖で思わず走ってしまった。
すると

「おい、アイツだ捕まえろ!」

後ろから男達が追って来る僕は必死に走った。
ハァハァと息を切らせながら限界が近かった。
寝不足で足がもつれるし息も苦しい

「おい、アイツ俺の免許証持ってやがる!」

そう言われ手を見ると免許証をまだ持っていた。
慌てて捨てようとするけど頭が回らない、するとスマホから

「ダウンロードが完了しました。アプリを起動します。」

音声が流れ僕はスマホを切ろうとしたが、上手く出来ない。
内心イライラとしながら取り敢えず身を隠そうと木々が生い茂っている垣根の中に身を隠した。
身を潜め荒くなった息を手で押さえ心の中で
静かに静かにと目をつぶった。
ガサガサと男達は僕の近くで

「アイツ、何処いったんだ!」

「知らねぇよ!チッ見失ったか!ぶっ殺してやる!」

暮林は舌打ちし僕が隠れている垣根を思いきり蹴った。
僕はビクッとなったが暮林は気付かず

「どうすんだよ、アイツ俺の免許証持ってるぞ!」

「アイツが警察に行ったら不味いぞ」

「分かってる!まだここいらに居る筈だ探せ!」

「アイツに、俺らの顔も見られたし、やるしかねーな」

そう言うと2人はまた僕を探し始めた。
しばらく様子を見ていると奥の方にと行ってくれた。
僕は取り敢えずの危機は去ったとホッとしていると手の持ったスマホがチカチカと点滅している僕は画面を開くと入れた覚えの無いアプリが入っていた。

「何だこれ?」

疑問に思ったがふと思い出した。
昼間航が自分のスマホ触って遊んでいたと、その時に航が間違ってダウンロードしてしまったのだろうと僕は、しょうがないなと思いながらアプリを消そうとタップすると

「生涯年収?」

アプリにはそれしか表示されていない。

生涯年収とは人間が人生の内に稼ぐ金額の事。
そんな分かりきった事がアプリになるんだろうか?
僕は男達の様子を伺うとここは探し終わったとだいぶ遠くにいる
このままじっとしていれば見つからないだろうとそれにしばらくは動かない方が良いだろうと
スマホの「生涯年収」を見た。
恐る恐る生涯年収を押して見ると画面に

「ようこそ8人目さん」

「8人目?」

画面は直ぐ切り替わり

「ようこそ、生涯年収へ」

画面には燕尾服姿で手にはステッキ頭には帽子を被った黒猫がいた。
黒猫は紳士のお辞儀をし

「初めましてボクはこの生涯年収の案内をしているクロだよ!よろしくにゃ」

挨拶をするとクロは香箱座りで

「それじゃ、誰を殺しますかにゃ?」

可愛い黒猫がいきなり誰を殺したいと物騒な事をいい戸惑っているとクロは首を傾げ

「あれ?お金要らないのにゃ?」

お金?
何かのイタズラなのかと僕はアプリを消そうとタップすると急にガサガサと音がした。
僕は咄嗟にスマホを隠すと

「おい、本当にここら辺か?」

「ああ、間違いねぇよ、こんなに暗いのに、さっき見たら明るかった」

しまった!
スマホを見てた明かりが外に漏れていたんだとするとスマホから

「仕方無いにゃ!たまにいるんだよね自分で手を下せない人間がでも安心してくださいにゃ!そんな人間の為に!初回のみ手伝てあげる!でも手伝うのは初回のみだにゃ!それじゃ名前でいいから教えるにゃ!ソイツ直ぐに殺してあげるににゃ」

「…………………。」

「オイ!」

暮林が僕の隠れている垣根を勢い良く蹴った。
そこに僕が隠れているのを知って僕は蹴られたお腹を押さえ恐怖に震えていると暮林は垣根を覗き込むように

「みーつーけーた!」

ニヤリと笑った。
僕は必死に逃げようと垣根から這い出ると暮林に頭を捕まれ髪の毛を引っ張られ殴られた。

「ぐっ!」

殴られた拍子に鼻血が出た。
それを見た暮林は楽しそうに

「お前も、あのサラリーマンみたいにしてやるよ」

暮林はポケットからナイフを取り出した。

「!」

僕は必死に暮林を振り払い走った!

「オイ!また逃げられてんぞ!」

「うるせ!追え!」

「ハァハァ!」

殴られたせいで頭がグラグラするけど死に物狂いで走った。
こんな所で死にたくない航を残して行けない!
するとスマホから

「ねぇ?まだかにゃ?名前は?」

今はそれどころじゃないと走りながら手に持っていた免許証を見て、もしかするとこれに名前を入れると助かるのか?
無我夢中で画面に打ち込んだ。
すると

「承りましたにゃ、只今暮林晴人の生涯年収を確認しているのにゃ、しばらくお待ちくださいにゃ」

「オーイ!」

その声後ろを振り返ると暮林がギラギラと血走った目で

「ぶっ殺してやる!」

ナイフを持って追いかけてくる。
捕まったら死ぬ
僕は追い付かれない様に公園の出口まで走った。
このまま行けば逃げられる!
そして公園の前の道路を横切った瞬間後ろから

「ドン!」

「グッ!ウッ!」

と大きい音がし咳き込みしゃがむと足元に石が転がっていた。
どうやらこれが僕の背中を直撃したらしい、ゲホッゲホッと後ろを振り返ると暮林がニヤリと笑いながら僕に近付いて来る
早く逃げないとマズイのに痛くて息が上手く出来ない

「本当に手間掛けさせやがって!」

暮林ニヤニヤしながら僕の脇腹を蹴った。
その衝撃で植え込みに倒れ込んでしまった。
ヒューヒューと息をしながら顔を上げると暮林がニヤニヤとこっちに来る植え込みから起き上がろうにも木が服に絡んで起き上がれない

「これで終わりだな?」

暮林の言葉に僕はもう駄目だと目をつぶった。

「ドン!」

すると次の瞬間強い光と大きな音がした。
何事かと目を開けるとそこにいる筈の暮林が居ないそして走り去るバイクが見えた。

「え?」

そして暮林の連れの男が青い顔で遠くを見ている。
僕も男と同じ方を見ると人だった物がそこに落ちていた。
そして僕のスマホから

「暮林晴人の死亡が確認されました。只今より暮林晴人の生涯年収は月村圭様の口座に入金致しました。確認をお願い致します。」

何が起こったのかさっぱり分からないけど尋常じゃない事が起こったのは理解した。
震える足で立ち上がり人じゃなくなった物に近付くとやっぱり予想通りの者があった。

「ウップ!オェ!」

それを見た瞬間えずき吐いたが朝から何も口にしていなかったせいで胃液しか出なかった。
僕はふと、もう一人の男を見ると男は震えながら走って逃げた。
そんな状況を僕は薄情だなと思いながら見て、ふと殺したのはもしかして自分なんだろうか?

「…!」

もしかしてとは思ったが本当だったなんて……。
足がカクリと落ちた。

「何で?こんな事が?」

分からない…頭を振りどうにか立ち上がりふらつく体を引きずり取り敢えず早く一人になりたかった。
僕は足早にアパートに帰った。

「……。」

足早に帰る後ろを男がジッと見ていた。
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