魔女見習いの義妹が、私の婚約者に魅了の魔法をかけてしまいました。

星空 金平糖

文字の大きさ
10 / 11
真実

第10話 魔法

しおりを挟む

怒りで白い肌を真っ赤に染めるリリアに、ヨウォンは戸惑う。その横で、憤慨した様子の義母はいい加減我慢ならなくなったのか、言い聞かせるようにリリアの前に仁王立ちした。

「あなたは、少し調子に乗りすぎているようだわ。私がどれだけ愛情を注いでも、あなたは私に反抗するばかりで言うことを聞きもしないし、暴れるばかり。一体、亡くなったあなたのお母様はどんな教育を施しておられたのかしら」

声音は幾分穏やかなようだったが、その表情は憤怒に歪んだ悪鬼そのもの。取り繕うように身につけられた美しい仮面が落ちて粉々に砕かれ、真の顔が現れたようだった。

母を馬鹿にされたリリアは、しかしそんな義母の顔を見ても戸惑うことなく、怒りを顕に反論する。元々、この女の本性など、リリアにはお見通しだったのだ。

「少なくとも、あなたのような母親が施す教育よりはましな教育を受けてきたわ!他人の男を奪うことしか能のない女にならずにすんだもの!」

言い放ったその言葉に、義母の怒りも頂点に達したのだろう。振り上げられた手に、リリアは痛みを覚悟する。

しかし──……。

「やめなさい!!」

意外にも義母の行為に声を荒らげたのはリリアの父、ヨウォンだった。

そして振り上げられた手を掴んでいたのは──……。


「……ジル?」


リリアのか細い声に、ジルは反応しない。しかしその手は間違いなく義母の細い手首を握っていた。

「な、なにを……」

義母は戸惑うようにジルを見た後、状況を理解したのか、顔を赤くする。愛する夫が先妻の娘を庇うような発言をしたこと。そして愛娘が憎たらしい先妻の娘から奪った男が、自分の行動を阻んだこと。

すべてが許せなかった。


「離しなさい!!」


義母の金切り声に、ジルは答えない。そして義母の腕を決して離そうとはしなかった。

なにか、様子が可笑しい。

リリアが怪訝に思ったその時。驚くべき現象が起きた。

「……ひっ……ひ、あぁ」

義母の腕が、枯れ枝のように干からびていく。徐々に、徐々に、茶色く変色し、細くなっていく。腐った老木のような腕だ。そして変化は腕だけではなく、全身に広がっていた。リリアの母に似ていた容貌はいまや見る影もなく。隈が濃く、両の目は窪み、頬は垂れて……その風貌はまさしく。

まさしく、童話でよく見る魔女そのもの──……。

「お……お母さま……?」

ミラの声が裏返る。先程まで若々しさを保っていた己の母のあまりの変わりように本人かどうか聞かずにはおれなかったのだろう。


しかし、その問いかけに義母は答えない。いや、答えることができないだけかもしれなかった。
    
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】なぜ、お前じゃなくて義妹なんだ!と言われたので

yanako
恋愛
なぜ、お前じゃなくて義妹なんだ!と言われたので

私の婚約者でも無いのに、婚約破棄とか何事ですか?

狼狼3
恋愛
「お前のような冷たくて愛想の無い女などと結婚出来るものか。もうお前とは絶交……そして、婚約破棄だ。じゃあな、グラッセマロン。」 「いやいや。私もう結婚してますし、貴方誰ですか?」 「俺を知らないだと………?冗談はよしてくれ。お前の愛するカーナトリエだぞ?」 「知らないですよ。……もしかして、夫の友達ですか?夫が帰ってくるまで家使いますか?……」 「だから、お前の夫が俺だって──」 少しずつ日差しが強くなっている頃。 昼食を作ろうと材料を買いに行こうとしたら、婚約者と名乗る人が居ました。 ……誰コイツ。

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。

尾道小町
恋愛
登場人物紹介 ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢  17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。 ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。 シェーン・ロングベルク公爵 25歳 結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。 ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳 優秀でシェーンに、こき使われている。 コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳 ヴィヴィアンの幼馴染み。 アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳 シェーンの元婚約者。 ルーク・ダルシュール侯爵25歳 嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。 ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。 ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。 この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。 ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳 ロミオ王太子殿下の婚約者。 ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳 私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。 一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。 正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。

パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました

Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。 伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。 理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。 これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。

どうして私にこだわるんですか!?

風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。 それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから! 婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。 え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!? おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。 ※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

処理中です...