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壊れた愛情
第4話 奪われて
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国で1番美しいと評されるリリアに、ミラは常に劣等感を抱いていた。加えて、リリアの母はこの国の王女であるのに対して、ミラの母は王都から遠く離れた小さな領地しか持たぬ子爵家の末子。
父は同じであっても、母の身分にこれだけの差が生じると周囲の扱いも変わってくる。
なにより、現国王が実妹であるリリアの母を溺愛していた上に、彼女の忘れ形見でもあるリリアをとても大切にしていた。
それ故、周囲はリリアとミラが並べば、真っ先にリリアへ挨拶する。
それが気に入らなかったのだろう。
ミラは「ドジ」だと自称してあの手この手を使ってリリアに寄ってくる男達や父の知人達の気を引いた。
公爵家の令嬢として気高く美しいが、我儘で気が強く愛想のないリリアに対して、ミラは良く言えば親しみやすく、愛想もいい。
ミラはリリアほどの美貌ではないしても、それなりに愛らしい顔立ちをしている。榛色の髪に、青の瞳というのは、この国で最も多く見る人々の特徴で、ミラもその中の1人であった。加えて、誰に対しても明るく、愛想よく、そしてなにより彼女は男が欲する言葉をよく心得ているようで、徐々に男性貴族からの関心を買うようになった。
今、ジルの胸にしがみついて泣く彼女は「ごめんなさい……ごめんなさい」とボロボロと涙を流し、周囲の同情を上手く買っている。
けれどリリアは決して騙されなかった。
「泣く暇があったら、図書館にでも行って1日も早く魅了の魔法を解くことね」
「リリア……そんな言い方しなくてもいいだろう。彼女は謝っているじゃないか」
ミアをその胸に抱きしめながら、ジルは射抜くようにリリアを睨んだ。
「……っ」
ジルに睨まれたことなど一度もなかったリリアは、ビクリと肩を震わせて、歯を食いしばる。
鋭い視線の中に情愛のようなものは感じられない。今のジルにとってリリアは取るに足らない人間なのだろう。
「いいの……ジル様。私が悪いんだもの……。私、必ずあなたにかけた魔法を解いてみせますから」
ぐすぐすと涙を流しながらそう宣うミラを、ジルは愛おしげに見つめる。その視線は昨日までリリアにだけ向けられていたものだ。
「頑張らなくてもいいんだよ。まずは心を休めることに専念しないとね」
慈愛に満ちた微笑みを向けるジルに、ミラはうっとりと「……はい」と返事する。
2人のやり取りを見ていられず、リリアは顔を俯けた。涙なんて絶対に見せられなかった。
母を亡くし、ミラが公爵邸にやってきて以来、屋敷の中に甘えられる人間がいなくなったリリアには涙を我慢する癖がついてしまった。
それを知っているのはジルだけで、リリアはジルの前でだけ涙を流せる。
けれどジルがこうなってしまった以上、もうこの世にリリアを甘やかしてくれる人間は誰一人としていなくなってしまった……。
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