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地獄のような日々
第5話 縮まる距離
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ミラによってかけられた魅了の魔法の効果は絶大だった。
「見舞いに来たよ、ミラ。体調はどうかな」
あれから3日が経つが、その間ジルが公爵邸を訪れたのは3回。
つまり、ジルは毎日必ずミラの元を訪ねていた。
ミラは魅了の魔法をかけた張本人であって、決して彼女自身が魔法をかけられたわけではないのだが「姉の婚約者に魅了の魔法をかけてしまった」ことを気に病んで、自室に閉じこもっている。
そんなミラを心配して、ジルは毎日屋敷を訪れるのだ。本当の婚約者であるリリアのことを差し置いて。
「まぁ、ジル様。今日もいらしてくださったの?」
そんなジルに対して、ミラは嬉しそうに「ありがとうございます。ジル様のためにも早く元気にならないといけませんね」と健気に答える。
そんなやりとりを、わざわざ引き籠もるリリアの部屋の前で繰り広げられて、悔しいやら悲しいやら。リリアは毎日毎日、寝台の枕を部屋の壁に投げつける日々を過ごしていた。
もちろん、リリアだっていつまでも引き籠もって何もしなかったわけではない。
「いい加減にして!早く、魅了の魔法を解く魔法使いか、魔女を連れてきてよ!お父様!」
今回の件に関して無関心を貫くヨウォンをせっついて、国1番の魔法使いにジルにかけられた魅了の魔法を解くよう命じたり、自らの伝手で遠い親戚筋の魔女に魅了の魔法について教えてもらったり、できる限りのことはした。
しかしながら「魅了の魔法」については、古い文献から最新の文献にかけてすら大した記録はなく「魅了とは単なる個性である」とまで定義づけて夢幻と言い切る者が多く、リリアがヨウォンの伝手を駆使してつかまえた魔法使いや、魔女達は皆して「魅了の魔法なんてものはないのだから、解き方もなにもない」と言うばかりだった。
そして唯一掴めた手がかりは、親戚筋の魔女曰く「魔法というものはずっとその効果が続くものではない。1番効果が長いと言われる催眠の魔法でも2年保たないのだから……時が経つのを待ってみるのはどうか」ということだけだった。
(待つだけなんて……そんなの無理よ)
日一日と、ジルとミラが惹かれ合って行く様子を見続けるなんて絶えられない。
リリアには、文字通り……ジルしかいないのだ。添い遂げたいと思う人も。心から尊敬出来る人も。愛せる人も。
彼しかいない。
(だから……お願いだから、早く魔法が溶けて欲しい)
しかし、そんなリリアの願いは道端の石が如くに虚しく転がり、日を追うごとに距離を縮めるミラとジルによって蹴られてしまうのだった。
「見舞いに来たよ、ミラ。体調はどうかな」
あれから3日が経つが、その間ジルが公爵邸を訪れたのは3回。
つまり、ジルは毎日必ずミラの元を訪ねていた。
ミラは魅了の魔法をかけた張本人であって、決して彼女自身が魔法をかけられたわけではないのだが「姉の婚約者に魅了の魔法をかけてしまった」ことを気に病んで、自室に閉じこもっている。
そんなミラを心配して、ジルは毎日屋敷を訪れるのだ。本当の婚約者であるリリアのことを差し置いて。
「まぁ、ジル様。今日もいらしてくださったの?」
そんなジルに対して、ミラは嬉しそうに「ありがとうございます。ジル様のためにも早く元気にならないといけませんね」と健気に答える。
そんなやりとりを、わざわざ引き籠もるリリアの部屋の前で繰り広げられて、悔しいやら悲しいやら。リリアは毎日毎日、寝台の枕を部屋の壁に投げつける日々を過ごしていた。
もちろん、リリアだっていつまでも引き籠もって何もしなかったわけではない。
「いい加減にして!早く、魅了の魔法を解く魔法使いか、魔女を連れてきてよ!お父様!」
今回の件に関して無関心を貫くヨウォンをせっついて、国1番の魔法使いにジルにかけられた魅了の魔法を解くよう命じたり、自らの伝手で遠い親戚筋の魔女に魅了の魔法について教えてもらったり、できる限りのことはした。
しかしながら「魅了の魔法」については、古い文献から最新の文献にかけてすら大した記録はなく「魅了とは単なる個性である」とまで定義づけて夢幻と言い切る者が多く、リリアがヨウォンの伝手を駆使してつかまえた魔法使いや、魔女達は皆して「魅了の魔法なんてものはないのだから、解き方もなにもない」と言うばかりだった。
そして唯一掴めた手がかりは、親戚筋の魔女曰く「魔法というものはずっとその効果が続くものではない。1番効果が長いと言われる催眠の魔法でも2年保たないのだから……時が経つのを待ってみるのはどうか」ということだけだった。
(待つだけなんて……そんなの無理よ)
日一日と、ジルとミラが惹かれ合って行く様子を見続けるなんて絶えられない。
リリアには、文字通り……ジルしかいないのだ。添い遂げたいと思う人も。心から尊敬出来る人も。愛せる人も。
彼しかいない。
(だから……お願いだから、早く魔法が溶けて欲しい)
しかし、そんなリリアの願いは道端の石が如くに虚しく転がり、日を追うごとに距離を縮めるミラとジルによって蹴られてしまうのだった。
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