灰かぶり君

渡里あずま

文字の大きさ
2 / 96

イマココ1

しおりを挟む
 1+1は2。
 太陽は東から昇り、西へ沈む。人は生まれて、いずれ死ぬ。

 そんな風に、世の中には絶対にありえないって言うか、覆らないことってあると俺は思う。
 ……そう、例えばなんだけど。
 新作のネタって言うか、資料として色々、読ませて貰いはしたけどさ?

「僕の笑顔を見破るなんて……気に入りましたよ、真白ましろ
「何言っ……んんっ!?」

 仮に俺達に気づいていないとしても、朝っぱらから男(眼鏡)が、同じ男(眼鏡でボサボサ頭)にキスしたとすると。

「痴漢……変質者?」

 どちらがより的確かは悩むが、見てしまった者に悪印象を与えるのは間違いない。そう、ちょうど今の俺に対してみたいに。

「このっ……ふざけんなっ!」

 怒声、次いで鈍い音。
 俺の不快感は次の瞬間、キスされた方が相手の腹に見事な蹴りを叩き込むのを見て、スッキリ解消された。
 そんな俺に気づくことなく、モジャ男――は酷いか、王道君は足早に立ち去った。蹴られて吹っ飛び、気絶した犯罪者――副会長?を残して。
 出迎えた副会長が、鬘と眼鏡で変装した王道転校生に偽笑顔を見破られ、嬉しさのあまりキスする――以上、王道学園物のお約束だ。
(そうか。出迎えイベントでの王道君の反撃は、この爽快感の為に必要なんだな)
 読んだ時は過剰防衛じゃないかって思ったけど、可愛い我が子に手を出された書き手としては、中途半端だとむしろイラッとする。
 成程、と納得した俺はまだ気を失ったままの副――解らないから変態でいいか、の元へ駆け寄った。流石に、外に放置はまずい。
 そして肩に担いで校舎へ連れて行こうとしたら、今まで黙ってた守衛さんから声をかけられた。

「おい、チビが無理すんな。俺が、運んでおいてやるし……ちゃんと、お前のことも伝えておくから」

 紺色の警備服に身を包んだ守衛さんは二十代後半くらいだろうか? 黒髪短髪の、精悍なイケメンさんだった。担いだ変態も、顔だけは綺麗だし――流石、金持ち&美形で構成され、リアル王道学園って噂されるだけはある。
 ……そこまで考えて、俺はあることに引っかかった。断っておくが、チビってところではない。悔しいが、事実だからだ。
(守衛さんに運ばせる? この変態に、俺のことを伝える……自分が楽して、金持ちのボンボンに恩売るとか、そういう意味か?)
 思いがけないことを言われて、俺は首を傾げた。そんな俺に、守衛さんもまた首を傾げる。年上だけど可愛いな、おい。
 とは言え、いつまでも無言でコントも何なので俺は答えた。

「守衛さんは、仕事中ですよね? だったら手が空いてる俺が、運びますよ……って言うか、伝える必要ないです。むしろ、気絶してるうちに運びたいんで、失礼します」

 放っておいて恨まれるのも、知られて色々勘ぐられるのも困る。だからそう続けたら、何故か守衛さんが噴いた。
 忙しい人だなぁと思いつつ、肩の変態を引きずって行こうとしたら、不意に軽くなる。
 驚いて顔を上げると、守衛さんが変態を軽々と横抱きにして口を開いた。

「巡回の『ついで』に運ぶから、大丈夫……お前は、さっきの奴追いかけろよ。同じ転校生だから、行き先はお前も行く理事長室だ」
「……ありがとう、ございます」

 ここまで言われたら、断れない。仕事を増やして申し訳ないが、俺は素直に守衛さんの言葉に甘えることにした。
 お礼を言って頭を下げた俺に、守衛さんがふ、と切れ長の双眸を細めて笑う。

「どう致しまして……俺は、岡田黒江おかだくろえだ。外部生は、馴染むまで大変だろうから……愚痴言いたくなったら、いつでも来い」

 すごいな。守衛だけじゃなく、生徒の心のケアまでしてるのか――保険医の仕事じゃないかと思うが、まあ、好意はありがたく受けよう。
 守衛さん――岡田さんにもう一度頭を下げて、俺は王道君を追いかけた。
(言動までイケメンな岡田さん、ありがとう。お礼に、カッコ良く書い……って駄目か、ホモにしちゃ)
 でも、守衛攻めってあんまり聞かないよな――などと考えていた俺には、岡田さんの呟きは聞こえてなかった。

「面白い奴だな……気に入った」

 王道君を追いかける俺、その目に飛び込んできた風景。
 視界に入りきらないくらい、だだっ広い敷地。
 そしてその先には、洋風の城(日本のだと、それはそれで驚くけど)としか思えない学校。
 良家ご子息御用達の全寮制男子校・白月しづき学園にどうして平凡庶民な俺・谷出灰たにいずりはが通うことになったのか。
 ……それは、数日前まで遡る。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

君が僕を好きなことを知ってる

大天使ミコエル
BL
【完結】 ある日、亮太が友人から聞かされたのは、話したこともないクラスメイトの礼央が亮太を嫌っているという話だった。 けど、話してみると違和感がある。 これは、嫌っているっていうより……。 どうやら、れおくんは、俺のことが好きらしい。 ほのぼの青春BLです。 ◇◇◇◇◇ 全100話+あとがき ◇◇◇◇◇

目立たないでと言われても

みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」 ****** 山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって…… 25話で本編完結+番外編4話

【完結】恋愛初学者の僕、完璧すぎる幼馴染に「恋」を学ぶ

鳥羽ミワ
BL
志村春希は高校二年生で、同い年の幼馴染・須藤涼太のことが大好き。その仲良しぶりといったら、お互い「リョウちゃん」「ハルくん」と呼び合うほどだ。 勉強が好きな春希には、どうしてもひとつだけ、全く理解できないことがあった。それは、恋心。学年一位の天才でもある涼太にそのもどかしさを愚痴ったら、「恋」を教えようかと提案される。 仮初の恋人になる二人だけど、春希が恋を知ったら、幼馴染の友達同士のままではいられない。慌てる春希に「パラダイムシフトを起こそうよ」と提案する涼太。手を重ねて、耳元で囁く涼太。水族館デートに誘う涼太。あまあまに迫られて、恋愛初学者の春希が陥落しないはずもなく……。 恋を知ったら友達でいられない。でもこの思いは止められない。 葛藤する春希の隣で涼太だけが、この関係は両片思いだと知っていた。 幼馴染の溺愛恋愛ケーススタディ、開幕! 最後はもちろんハッピーエンド! ※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうへ投稿しています

天の求婚

紅林
BL
太平天帝国では5年ほど前から第一天子と第二天子によって帝位継承争いが勃発していた。 主人公、新田大貴子爵は第二天子派として広く活動していた亡き父の跡を継いで一年前に子爵家を継いだ。しかし、フィラデルフィア合衆国との講和条約を取り付けた第一天子の功績が認められ次期帝位継承者は第一天子となり、派閥争いに負けた第二天子派は継承順位を下げられ、それに付き従った者の中には爵位剥奪のうえ、帝都江流波から追放された華族もいた そして大貴もその例に漏れず、邸宅にて謹慎を申し付けられ現在は華族用の豪華な護送車で大天族の居城へと向かっていた 即位したての政権が安定していない君主と没落寸前の血筋だけは立派な純血華族の複雑な結婚事情を描いた物語

夜が明けなければいいのに(洋風)

万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。 しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。 そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。 長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。 「名誉ある生贄」。 それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。 部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。 黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。 本当は、別れが怖くてたまらない。 けれど、その弱さを見せることができない。 「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」 心にもない言葉を吐き捨てる。 カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。 だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。 「……おめでとうございます、殿下」 恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。 その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。 ――おめでとうなんて、言わないでほしかった。 ――本当は、行きたくなんてないのに。 和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。 お楽しみいただければ幸いです。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

処理中です...