灰かぶり君

渡里あずま

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遭遇と画策と予想外と1

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 真白は、方向音痴だ。数日後に控えてる、新歓(一茶によると、王道学園物らしく『鬼ごっこ』らしい)が不安になるくらい、方向音痴だ。
(外に出てないといいんだけど)
 食堂を出てすぐ、校舎一階に向かう廊下と階段がある。足が早いのは知ってるが、姿が見えないとなると階段を上がったんだろうか?
 そこまで考えて、俺は携帯電話を取り出した。
 そして、真白に電話すると――二コールで出て、ちょっと驚いた。

『もしもし、谷!?』
「真白、今どこにいる?」
『えーと……三階!』
「……早いな。理事長室にでも、行く気だったのか?」
『違う! オレはただ、屋上にでもって……でも、ここだと屋上って無いよな』

 話しながら気づいたのか、電話で顔が見えないのにしょんぼりとしているのが解った。
(確かに、上二階が特別フロアだからな……今までも、何かあると屋上行ってたのかな?)
 煙と何とかは、高いところが好きで――馬鹿な子程可愛いって言葉もある。

「一緒に、教室戻らないか。今、二階行くから」
『……おう! 待ち合わせだなっ』

 途端に、真白の声が嬉しそうに声が弾む。単純だな、と思いつつ電話を切ると――待っていたかのようなタイミングで、声がかけられた。いや、ようにじゃなく待ってたんだろうけど。

「スルーか? おれとは、口もきけないって?」

 黒髪に、金のメッシュ。お坊ちゃま校の生徒とは思えない着崩しぶりと威圧感。そして何より美形っぷりに、廊下にいたのは気づいてたけど俺は無視を決め込んでいた。
 顔だけなら文句無しのSクラスだけど、この感じだと――Fクラス、不良クラスの生徒の可能性が高い。口調とか雰囲気からして、一匹狼って言うよりは不良のリーダー系か?

「いいえ。お手数おかけしたら、申し訳ないと思っただけです。失礼します」
「おれが怖いか?」

 そう言って、一歩踏み出そうとしたけど止められた。ったく、どうせなら真白に絡んで足止めしてくれりゃあ良かったのに。

「怖がるようなこと、されていません」
「何だ。見た目なんて気にしないってか?」
「まさか。見た目は大事ですよ」

 即座に答えたら、軽く目を見張られた。
 だけど、ガン見されたままだから――ちゃんと答えないと、解放してくれないか。仕方ない。
 第一印象は大事だ。それこそ今朝みたいに、悪印象を持たれたら始まるものも始まらない。

「大事ですけど……相手のことなんてある程度、やり取りしないと解りません。だからあなたのことも、会ったばかりなんで判断出来ません」

 だって俺、エスパーとかじゃないし。有名なのかもしれないけど、転校生だからこの人のこと知らないし。
 ……逆に言えば生徒会とか、あと真白。
 見た目じゃないとか、本当の自分を見てくれたとか思うのって――相当、見た目がコンプレックスって言うか、振り回されてるんじゃないのかな? だから、求めてるものが同じだから惹かれたんじゃないかと思う。
 そんな訳で目の前の、見た目について口にしたこの人も真白と仲良くやれるって思ったんだけど。
(っと、真白待ってるよな)

「失礼します」
「……おれは、安来刃金あきはがね。お前は?」
「北見真白」
「それは、さっきの毬藻の名前だよな?」
「……谷出灰、です」

 ちっ、覚えてたか――渋々答えて、一礼する。
 そしてもう会わないことを祈りながら、今度こそ階段を駆け上がった。
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