灰かぶり君

渡里あずま

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リアルは俺には手強すぎる1

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 二階奥にあるFクラスは、三学年まとめて一つのクラスになっている。一茶によると、親が寄付金を払って素行の悪い息子を押しつけてるんで、そもそも授業をやらないらしい。
 そんなFクラスに呼び出された俺は、何故かキングこと安来さんのボタンつけをやっていた。

「ソーイングセット……?」
「庶民は買い直せないから、持ち歩いてんのか?」
「違います」

 周りの不良から、なかなか失礼なツッコミが入る。まあ、確かに男が珍しいかもしれないけど、意外と便利なんだぞ? 安全ピンとか、値札の糸切ったりとか。
 ただ、やっぱり男だとあんまり常備してないと思うから、何で俺が呼び出されたかは謎だ。あ、平凡庶民への無茶振りって言う嫌がらせか。

「それを言うなら、金持ちだったら執事とかメイドがつけてくれるんじゃないですか?」
「「「何だよ、その偏見?」」」
「お互い様ですよ」

 強面不良達と、そんなやり取りをしながらボタンをつけ終わる。

「はい、どうぞ。じゃあ、失礼します」
「待て」

 そしてブレザーを安来さんに渡し、立ち去ろうとしたけど――制するように、腕を引っ張られた。

「……何ですか?」

 いや、本当に何だよ。何で俺、安来さんの膝の上に座らされてんだよ。

「ほら、食え」

 そんな俺の質問には答えず、安来さんがポテトチップスを差し出してくる。
(食うべきか、食わざるべきか)

「いただきます」
「「「はぁっ!?」」」

 考えたのは一瞬で、どっちにしても怒られると思った俺は素直に口に入れた。お菓子は別腹だからな。
 当然、周りはどよめいたけど、意外と怒鳴られたりはしなかった。よく訓練されてるよな。生徒会ファンも見習えばいいと思う。

「……これも食う?」
「はい」

 そんな俺に、今度はさっきの青頭がポッキーを差し出してきた。
 まだ腹には余裕があったんで食おうと口を開けたら、安来さんに抱き竦められて阻止された。だから何だ、この状況は。
(こう言うのは、真白にやってくれないかな……でも、下手に言い返すと何かムキになりそうだし)
 どう言えば、穏便に帰れるんだろう――なんて、安来さんの腕に収まったまま考えてたら、不意に青頭が噴き出した。この学校の人達って本当、笑いの沸点低いよな。

「キ、キングに抱き着かれてんのに平然としてる……」
「え? 十分、驚いてますよ?」
「棒読みで言うなって……な? 面白いだろ?」
「いや、キングのキャラ崩壊も十分おかしいって」

 目尻に浮かんだ涙を拭って青頭が言うと、周りも同感とばかりに頷いた。あんた達が仲良しなのは解ったから、そろそろ解放して下さい。

「……谷、無事かっ!?」

 そんな俺の祈りは、妙な形で天に届いたらしい。
 何故だか一茶と奏水を引き連れて、現れたのは真白だった。
 ようやく、安来さんとのフラグが立つか――とは、思えなかった。真白からも、そして背後にいる安来さんからも怒りのオーラを感じたからだ。

「無事かって、おれ達がコイツに何かするって思ったのか?」
「現にしてるじゃないか! 谷のこと、拘束してっ」
「わぁ、胸キュン体勢が物騒な呼ばれ方されてるー」

 青頭が茶化すのを、真白が瓶底眼鏡越しに睨みつける。何でこいつ、こんなに攻撃的になってんだ?

「キングだけじゃなく、ナイトにまで……」
「てめぇ、ふざけんのは見た目だけにしろよっ」
「……ナイト?」

 Fクラスの面々が荒ぶる中、俺はふと引っかかった。そして青頭を見ると、軽く目を見張られた。

「あ、名乗ってなかったか。俺、内藤藍ないとうらん
「……名前からですか、解りやすいですね」
「まぁ、皆ガキだからな」

 うん、主にあだ名をつけるセンスがな。
 逃避はやめて、真白のことに戻ろう。クラスの奴らみたいに、喧嘩売られた訳でもないのに。
(あ、もしかして)

「お前、不良が嫌いなのか?」
「「「っ!?」」」
「だってガラが悪くて乱暴で、皆に怖がられたり嫌われたりするじゃないか!」

 俺の質問でFクラスの空気が凍り、真白の返事で一気に殺気立った。人のこと言えないけど、真白って本当いい度胸してるよな。

「俺は、ここの人達に何もされてないし……逆にお菓子貰ったから、むしろ嫌う理由がない」
「そう……なのか?」
「不良全般だと知らないし、皆がどうかも知らないけど……嫌なことされなきゃ、俺は別に怖くない」
「……本当か?」

 思い込みは激しいけど、話は素直に聞く奴だから――変に毛嫌いして、不良フラグをへし折られたら困るから、俺は真白にそう言った。
 ……言った、んだけど。

「いいぞ、平凡!」
「流石、キングが見込んだ奴っ」
「平凡なんて、失礼じゃねぇ? ここはキングの相手だから、クイーンで」
「勘弁して下さい」

 何で、俺贔屓になるんだよFクラス。生徒会同様、簡単すぎるだろあんたら。

「相手って何だよ、谷はオレのっ!」
「「「何っ!?」」」

 そして真白、何を張り合ってるんだ。ある意味、仲良くなってるけど――俺が言うのも何だけど、母親を取り合う子供かよ。

「谷君、Fクラス攻略おめでとう! 平凡受けキタコレ!!」
「まあ、無事だから良かった……のかな?」

 鼻を押さえながら親指を立てる一茶と、状況を何とか理解しようとしてる奏水にはうん、何も期待しない。
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