灰かぶり君

渡里あずま

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だから、どうしてこうなった?2

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「勿論、無料タダとは言いません。見合いは二十七日の日曜日ですが、時給一万払います」
「……はぁ」

 金の話か、と思ったけど紅河さんみたいにキスで返そうとされなくて良かったと思う。まあ、真白から安売りしないって聞いてたから、そもそも心配しなくて良いんだろうけど。
(って言うか、普通に人雇えば良くないか?)
 そう思ったけど、バイト代としてはおいしいんで言わない。きっと、口止め料(真白とか、他生徒会メンバーに対して)も入ってるんだろうしな。
(まあ、俺も女装とかわざわざ言いたくないしな)

「じゃあ兄さん、当日はよろしくお願いします」
「ハイハイ」

 そして、俺の返事を聞かずに副会長は保健室を出て行った。金貰うし、断らないけど――本当、マイペースって言うか自分ペースな人だよな。
 そう思ってると、紫子さんが思いがけないことを尋ねてきた。

「谷君、いつの間に紫苑を手懐けたの?」
「……はいぃ?」

 あまりにもとんでもないことを聞かれて、思わず某ドラマの紅茶好きな警部どのみたいな返事をしてしまった。いや、だって、なぁ?

「手懐けられた相手には、あんな酷いこと言ったりやったりしないと思います」

 そう、それこそ手懐けたのは真白だろう? 反動で俺に対しては外面の良さが、完全にログアウトするけどな。

「アタシも、そう思ってたけど……嫌いだったら、そもそも谷君に弱み見せないと思うのよね」
「えっ?」
「あなたも思ったでしょうけど、最初から人を雇えば解決するのよ。だけど、あの子はそれをせずに谷君を巻き込んだ。そう考えると、あの言いたい放題も……あなたなら許してくれるって、甘えてるのかしらって」

 紫子さんの言葉に、俺は思わず眉を寄せた。それなりに筋は通ってるけど、さっきの副会長のあれ、甘えるって可愛いものか?

「ツンって言うより、まんま体当たり状態じゃないですか。俺だけじゃなく、副会長様にもダメージでかいですよ……気の毒に」

 普段、うさん臭い笑顔で弱みを見せないよう頑張ってる人が、アレって――スッキリしてれば良いけど逆にイライラしてたり、しんどかったりしないのかな?
 そう思った俺の手が、不意にガシッと紫子さんに掴まれた。

「何よもう、妖精? それとも、天使なの!?」
「…………は?」
「あんな面倒臭い子にまで気づかうなんて、ちっちゃいのに何て包容力なの!」

 いや、紫子さん、弟に面倒臭いって――それとも、弟だから言いたい放題で良いのかな?

「気に入ったわ、谷君。確か、この前の期末テスト学年トップだったんでしょ? アタシが援助するから医学部狙って、うちの病院盛り立ててちょうだい!」
「えっ、と」

 好き勝手言っていた割に、実は弟思いらしい紫子さんを宥めるのはちょっと大変だった。
 まあ、盛り上がってるのは紫子さんだけだし、副会長本人から直接、聞いた訳じゃないから俺は気にしないことにした――一日で数万のバイトは、それだけ魅力なんだよ、うん。



 ……そして本日、見合い当日。
 紫子さんの車で連れてきて貰った俺は、ホテルの一室で着せ替え人形になっていた。
 振り袖まで用意されていたのには驚いたけど、俺が見合いする訳じゃない(むしろ乱入してぶち壊す)んでつつしんで辞退した。
 それでも、ホテルってことであまりカジュアルなのはマズいって判断なのか、着せられ脱がされまた着せられたのはワンピースばっかりだった。とは言え、紺のレースやピンクベージュに上下切り替えし、襟付きにウエストへのリボン付きなど、色々あり過ぎてどうしようって思った。

「って言うか紫子さん、もっとスカート丈長い方が良くないですか?」
「大丈夫! 谷君の脚、綺麗だから」
「……はあ」

 何がどう大丈夫か解らないけど、まあ、相手のお嬢様のことを思えば美醜はともかく女性に見えればOKな訳で。そこは紫子さんも解ってると思って任せたら、膝上丈にされた――本当に大丈夫か、これ?
(あ、でも、思ったよりはゴツくないか?)
 鏡に映った自分を見て、そう思う。
 白のワンピース自体はノースリーブだけど、上に黒いレースのボレロを着せて貰えたし。
 大きなリボンがついてるのと、裾がふんわり広がってるんでウエストがくびれて見えるし。
 ボレロと合わせた黒のストッキングのおかげで、確かに脚も細く見える……かな?
(女装って、色々隠すと何とか成立するんだな)
 それは紫子さんが用意した、白いカチューシャ付きのゆるふわロングのウイッグを被った時も思った。これなら、首とか肩がうまく隠れる。
 とは言え、女装の『隠すものは隠す』ってお約束は、この後の化粧には当てはまらなかった。
 いや、普通は男は女の人より骨格の凹凸が大きいんで、立体感を無くす引き算メイクをするそうだけど――幸か不幸か、俺の顔は母親似で。立体感を出していく足し算メイクが必要だって言われた。
(そう言えば母さんも、化粧すると劇的ビフォーアフターだったよな)
 なんてしみじみしていた俺に、紫子さんが化粧をほどこしていく。
 化粧水と乳液を塗った後、後から落としやすいようにってお湯で流せるメイク下地を、それからファンデーションとチークを塗られた。ナチュラルメイクらしいけど、俺からするとこれでも十分皮膚呼吸出来ない感じがする。毎日、これやってる女の人ってすごいよな。
 そんな俺のまつ毛を見て、紫子さんは用意したつけまつ毛じゃなくビューラーで持ち上げ、アイライナーとマスカラを使う。

「谷君、まつ毛長いわよね……うん、これでお目々パッチリ、目力アップよ!」

 そう紫子さんに力説されたけど、口紅を塗られて完成した後、自分の顔を見てもどうも違いがよく解らなかった。

「完っ璧! 女の子よりも可愛い男の娘、完成~っ♪」
「…………平凡?」

 とは言え、紫子さんは自分で拍手して自画自賛してたし、副会長は俺を見て固まったけど帰れって言わなかったから、とりあえずは女に見えるんだろうな、うん。
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