灰かぶり君

渡里あずま

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だから、どうしてこうなった?1

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 レストランの個室で。
 スーツ姿の男と和服を着た女性が向き合っていれば、お見合い間違い無しだと思う。あとは、仲人さんがいれば完璧だ。
(と言うか、仲人さんがいれば全力で止めただろうけど)
 現在、俺はスーツ姿の男――副会長の隣に座り、着物姿のご令嬢に引き合わされている。
 ……鬘を被り、ワンピースを着せられた俺は『副会長の彼女』の役だ。



 話は、数日前――まもなく夏休みって日の放課後まで遡る。
 大病院の御曹司、とくればそれこそすでに許婚の一人や二人いてもおかしくないだろう。
 とは言え、本来の神丘病院の長男は養護教諭の紫子さん(そう言えば、本名を知らないな)で。次男で御曹司って立場だからこそ、今頃の見合いの話なのかもしれない。
(政略結婚……? それとも、後ろ盾って感じか?)
 そう、完全部外者の俺ですら何となくだが納得出来る話なのに。

「愛のないおつき合いなんて、冗談じゃありません」

 まさか、金持ちの坊ちゃんの口からそんな甘ちゃん発言が出るとは思わなかった。

「と言う訳で、見合い当日に僕の恋人のフリをして下さい」
「副会長様、すみません。どうしてそうなるのか、全く意味が解りません」
「そうよ、紫苑。いきなりココに来たのにも驚いたけど、アタシですらサッパリだわ」

 意味不明なことを言い出した副会長に、俺だけじゃなく紫子さんもツッコミを入れた。
 ちなみに、ココって言うのは保健室で。放課後、Sクラスに来た副会長に連れられて――引っ張られて? 来た。事前連絡はなかったらしく、紫子さんも驚いてた。

「僕の話を聞いてなかったんですか? 見合いなんて、そもそも問題外なんです」
「いや、そこは解りましたけど……それなら、親御さんにそう言って断ればいいんじゃないですか?」
「まあ、無理よね? 会いもせずに断るなんて、あの頑固オヤジが許す訳ないわよね?」
「…………」

 俺がそう尋ねると、紫子さんがそんなことを言い出した。副会長が黙ったところを見ると、正しいんだろうけど――親子の問題に巻き込まないで欲しいって、思った俺は悪くないと思う。面倒だから、言わないけど。

「でも、それなら俺じゃなくても……それこそ、真白を連れて行けば」
「あなた、馬鹿ですか? 見合い相手は、旧家の令嬢なんですよ……逆恨みされて、真白に迷惑がかかったら大変じゃないですか」

 つまりは、俺には迷惑かけても良いってことですね。かしこまりました。

「谷君、ゴメンなさいねぇ」

 心の中で呟くと、俺は紫子さんが謝罪と共に出してくれたお茶(赤いけど、ハーブティーとかか?)を一気に飲み干した。うん、癒し効果は不明だけどよく冷えてて美味かったから、ちょっと和んだ。

「あなたをここに連れて来たのは、生徒会メンバーに話を聞かれたくないのと……兄さんに、協力して欲しいからです」
「アタシ?」
「当日、この平凡に女装させて欲しいんです」
「………………は?」

 だけど、そんな俺の和んだ気分は神丘兄弟の、って言うか副会長のふざけた発言で一気に吹き飛んだ。

「副会長様、やっぱり変態だったんですか?」
「なっ!? あなた、何てことを……しかも、やっぱりって何ですか!?」
「……まあ、言われても仕方ないわよねぇ?」

 俺の言葉に副会長は憤慨し、紫子さんは苦笑しながら顎に指を当てている。ですよね、変態扱いされて当然ですよね、紫子さん?

「紫苑? 言葉が足りないのは、あなたの悪い癖よ? 出灰君の変装の意味と……多少だけど、相手のお嬢さんの為でしょう?」

 そんな俺に対して、紫子さんが副会長をフォローする。
 確かに見合い相手の恋人が男って、下手するとトラウマになるか――でも、見合い相手への気遣いは解ったけど、どっちにしても副会長の親の怒りを買うんなら、素直にすっぽかした方が良くないか?

「あぁ、ごめんなさいね谷君。うちの頑固オヤジ、見合い相手の母親とラブラブだから、そう言う意味でエスケープ却下なのよ。恋人を連れて行ったら、それはそれで納得するわ」

 ……と言うことは、政略結婚じゃなくて単なる世話焼き? まあ、あんなドリーム語る息子なら見合いの一つや二つもさせたくなるか。
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