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デートはどこまでお約束で?4
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「次は、俺につきあってくれる?」
ファミレスを出た後、かー君にそう言われたのに俺は頷いた。そして連れて来られたビルの看板を見て、俺は軽く目を見張った。
(……メイド喫茶?)
かー君、こう言うのも好きなんだろうか――そう思ってたけど、到着したのはその上にあるゲームセンターだった。良かった。いや、男としては喜ぶべきなんだろうけど、やっぱりいきなりメイドさんってハードル高い気がするし。
「これ、一緒に撮ろう♪」
そう言って、かー君が指差したのはプリクラだった。
キラキラだの美白だの書かれててちょっと怯んだけど、かー君はまるで気にせず入っていく。
「最近、男子のみだと使用禁止ってプリクラ多いんだけど。ここだと下にメイド喫茶あるからか、OKなんだよね」
「……はぁ」
ある意味、メイド喫茶よりも高いハードルに圧倒される。いや、だってこう言うのって女の子が好きなものだし。お嬢様キャラを書いてはいるけど、何となくプリクラとか撮らないと思うし。
そんな借りてきた猫状態の俺を余所に、かー君はお金を投入し操作していった。
「かー君、よく撮るのか?」
金持ちの坊ちゃんだと、縁がないんじゃないか。いや、これだけイケメンだと女の子達から誘われ放題なのか――なんて思っていると、少し困ったようにかー君が笑う。
「……そう言えたら格好良いかもだけど、違うし。そう言う見栄って言うか嘘? 俺、好きな子に言いたくないし」
「え?」
「ネットで、調べたんだ……遊んでるのが男の甲斐性とか俺、思わないし。それって、相手を不安にするだけでしょ?」
笑いながらではあったけど、かー君のその言葉はひどく重く響いた――かー君の母親は、愛人で。しかも一人だけじゃなく、他にもいるって前に聞いている。
(父親の影響か?)
子供は親を選べない。だから絶対、尊敬出来るって訳じゃないし、逆に反面教師になる場合もあると思う。
……だけど、余計なお世話かもしれないけど。親のことを話すのに、こんな寂しそうな表情(かお)なのは見てるこっちも寂しくなる。
「りぃ君?」
好かれてる身としては、これもやっちゃいけないことなのかもしれないけど――俺は、ギュッとかー君を抱き締めた。
飛びかうカラフルなハートを背景に、そんな俺達の姿は撮影された。
※
「……本当はさ? プリクラで、りぃ君とのキス写真撮ろうと思ってたんだよね」
「は?」
「だってバ会長、りぃ君にキスしたって自慢するんだもん!」
「……ほっぺにだぞ?」
プリクラを撮り終えた後、かー君がそんなことを言い出したのに、俺は左頬を指差した。
って言うか紅河さん、生徒会室で(まさか、食堂じゃないよな?)何、話してんだよ。
「でもそれじゃ、紅河さんには勝てないんじゃないか?」
「冗談! これは、絶対にバ会長にも誰にも見せないよっ」
俺が、かー君に抱き着いている『だけ』のプリクラを見て言うと、何故だか力説で返された。えっ、何か言ってること変わってないか?
首を傾げる俺の前で、かー君がニコニコしながらプリクラを指で撫でる。
「りぃ君が、俺のこと慰めてくれたんだもん。昔みたいに」
「えっ?」
「覚えてない? 幼稚園の時もりぃ君、さっきみたいに抱き着いてきたんだよ……俺に、父親がいないってからかわれた時にね」
「……昔から成長してないんだな、俺」
「いいんだよ、りぃ君はそれで! 母さんと行って以来、久しぶりにファミレスにも入れたし……慰められた時、俺、本当に救われたから」
覚えてないけど、さっきのことを考えたら確かにやってそうだ。
……そしてどうやら、俺のそんな行動が初恋に結びついたらしい。
そんなことを考えていた俺の左頬に、不意にかー君がキスしてきた。驚き、次いで誰かに見られてないかと辺りを見回した俺に、かー君が笑って言う。
「大丈夫、誰も見てないよ……でもね、りぃ君? 他の奴らにこれ以上、させちゃ駄目だからね?」
「……かー君がそれ、言うのか? 基本、俺の嫌がることはしないんじゃなかったか?」
「俺のは『消毒』だもん♪」
ツッコミを入れた俺に、かー君は悪戯っぽくウインクした。可愛く言ってるけど、何かされたら同じことされるってことだよな。うん、気をつけよう。
……その夜、俺の小説に初めてコメントがついた。
好意的な内容で、ありがたかったけど――もうちょっと早ければ、二度目のキスは回避出来たのかもしれないと思うと、ちょっとだけ複雑だった。いや、別にあれは『おもてなし』じゃないし、油断した俺が悪いけどな。
(いかんいかん、ちゃんとお礼言わないと)
ため息をついて気持ちを切り替えると、俺は携帯で返信コメントを打ち出した。
ファミレスを出た後、かー君にそう言われたのに俺は頷いた。そして連れて来られたビルの看板を見て、俺は軽く目を見張った。
(……メイド喫茶?)
かー君、こう言うのも好きなんだろうか――そう思ってたけど、到着したのはその上にあるゲームセンターだった。良かった。いや、男としては喜ぶべきなんだろうけど、やっぱりいきなりメイドさんってハードル高い気がするし。
「これ、一緒に撮ろう♪」
そう言って、かー君が指差したのはプリクラだった。
キラキラだの美白だの書かれててちょっと怯んだけど、かー君はまるで気にせず入っていく。
「最近、男子のみだと使用禁止ってプリクラ多いんだけど。ここだと下にメイド喫茶あるからか、OKなんだよね」
「……はぁ」
ある意味、メイド喫茶よりも高いハードルに圧倒される。いや、だってこう言うのって女の子が好きなものだし。お嬢様キャラを書いてはいるけど、何となくプリクラとか撮らないと思うし。
そんな借りてきた猫状態の俺を余所に、かー君はお金を投入し操作していった。
「かー君、よく撮るのか?」
金持ちの坊ちゃんだと、縁がないんじゃないか。いや、これだけイケメンだと女の子達から誘われ放題なのか――なんて思っていると、少し困ったようにかー君が笑う。
「……そう言えたら格好良いかもだけど、違うし。そう言う見栄って言うか嘘? 俺、好きな子に言いたくないし」
「え?」
「ネットで、調べたんだ……遊んでるのが男の甲斐性とか俺、思わないし。それって、相手を不安にするだけでしょ?」
笑いながらではあったけど、かー君のその言葉はひどく重く響いた――かー君の母親は、愛人で。しかも一人だけじゃなく、他にもいるって前に聞いている。
(父親の影響か?)
子供は親を選べない。だから絶対、尊敬出来るって訳じゃないし、逆に反面教師になる場合もあると思う。
……だけど、余計なお世話かもしれないけど。親のことを話すのに、こんな寂しそうな表情(かお)なのは見てるこっちも寂しくなる。
「りぃ君?」
好かれてる身としては、これもやっちゃいけないことなのかもしれないけど――俺は、ギュッとかー君を抱き締めた。
飛びかうカラフルなハートを背景に、そんな俺達の姿は撮影された。
※
「……本当はさ? プリクラで、りぃ君とのキス写真撮ろうと思ってたんだよね」
「は?」
「だってバ会長、りぃ君にキスしたって自慢するんだもん!」
「……ほっぺにだぞ?」
プリクラを撮り終えた後、かー君がそんなことを言い出したのに、俺は左頬を指差した。
って言うか紅河さん、生徒会室で(まさか、食堂じゃないよな?)何、話してんだよ。
「でもそれじゃ、紅河さんには勝てないんじゃないか?」
「冗談! これは、絶対にバ会長にも誰にも見せないよっ」
俺が、かー君に抱き着いている『だけ』のプリクラを見て言うと、何故だか力説で返された。えっ、何か言ってること変わってないか?
首を傾げる俺の前で、かー君がニコニコしながらプリクラを指で撫でる。
「りぃ君が、俺のこと慰めてくれたんだもん。昔みたいに」
「えっ?」
「覚えてない? 幼稚園の時もりぃ君、さっきみたいに抱き着いてきたんだよ……俺に、父親がいないってからかわれた時にね」
「……昔から成長してないんだな、俺」
「いいんだよ、りぃ君はそれで! 母さんと行って以来、久しぶりにファミレスにも入れたし……慰められた時、俺、本当に救われたから」
覚えてないけど、さっきのことを考えたら確かにやってそうだ。
……そしてどうやら、俺のそんな行動が初恋に結びついたらしい。
そんなことを考えていた俺の左頬に、不意にかー君がキスしてきた。驚き、次いで誰かに見られてないかと辺りを見回した俺に、かー君が笑って言う。
「大丈夫、誰も見てないよ……でもね、りぃ君? 他の奴らにこれ以上、させちゃ駄目だからね?」
「……かー君がそれ、言うのか? 基本、俺の嫌がることはしないんじゃなかったか?」
「俺のは『消毒』だもん♪」
ツッコミを入れた俺に、かー君は悪戯っぽくウインクした。可愛く言ってるけど、何かされたら同じことされるってことだよな。うん、気をつけよう。
……その夜、俺の小説に初めてコメントがついた。
好意的な内容で、ありがたかったけど――もうちょっと早ければ、二度目のキスは回避出来たのかもしれないと思うと、ちょっとだけ複雑だった。いや、別にあれは『おもてなし』じゃないし、油断した俺が悪いけどな。
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ため息をついて気持ちを切り替えると、俺は携帯で返信コメントを打ち出した。
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