灰かぶり君

渡里あずま

文字の大きさ
64 / 96

選挙、始めました1

しおりを挟む
「どうして、やって貰っちゃいけないんですか?」
「……えっ?」
「皆さん、僕の為に喜んで働いてくれるんですよ? ランキングもですけど、皆さんからの好意ですから……断ったら、逆に申し訳ないです」

 柔らかそうな黒髪と、大きな目。
 可愛い顔に、不思議そうな表情を浮かべる相手――赤嶺朱春に、俺は思った。
(本気……みたいだな。坊ちゃん思考……いや、いっそお姫様か?)
 どうして、赤嶺とこうして話すことになったのか――話は、少し前に遡る。



 体育祭後、かー君達と俺は選挙に立候補した。かー君達はともかく、俺は面倒(主に、親衛隊からの制裁)を覚悟してたけど、不思議と睨まれたり舌打ちされるくらいで済んでいた。

「体育祭の時に、あんたが働けることはアピール出来たからね。下手な奴が近づくよりはって、見守りモードよ」
「……はぁ」

 紅河さんの親衛隊長からの説明に、俺はそう頷くしかなかった。見守るにしては対応がキツいが、まあ、乙女心――いや、チワワ心は複雑だってことにしよう。

「隊長、ポスター出来ました」
「お疲れ様……うん、面白みはないけど、真面目な感じが出てるわね」
「じゃあぼく達、貼って来ます!」

 他のチワワ達はそんな俺達、って言うか隊長にパソコンで作った俺の選挙用ポスターを見せてきた。
 ちなみに、これは第二弾。第一弾は、俺の写真に犬耳をつけていて隊長に却下された――隊長、ありがとうございます。そう言うアピールは、双子達(あいつらは猫耳で写ってるけど)だけで十分です。
 そして隊長から了承を貰うと、チワワ達は各階の伝言板へとポスターを貼りに行った。働かせて申し訳ないと思うけど、チワワ達からはそもそもこの気づかいをやめるよう言われてる。

「親衛隊としては、むしろあんたの為に働けるのが嬉しいんだから」

 そう、初めての選挙ってことでこう言うポスター等の選挙活動は、クラスか親衛隊で支援することになった。
 ……なったけど、現生徒会メンバーは全員、俺と同じSクラスで。
 かー君と双子はそれぞれ親衛隊に頼むことにしたけど、緑野は(まあ、予想はしていたが)それを拒んだ。で、Sクラスの面々はこれ幸いと緑野のサポートに乗り出し、結果、俺はスルーされた訳だ。
 そんな俺を、兼任してるからとチワワ達がサポートしてくれることになった。
 ……個人的には、未だ立候補してくれない中夜の気が変わってくれて、俺落選ってならないかなって思うんだけど。

(とは言え、庶務に立候補した赤嶺入れてちょうど定員だからな)

 このまま当選したら、体育祭の時みたいに赤嶺の分も俺が雑用するんだろうか――そう思いつつ寮に戻ろうとしたら、当の赤嶺と廊下でバッタリ鉢合わせした。

「初めまして、谷先輩」
「……初めまして」

 笑顔で挨拶してきた赤嶺に、俺は違和感を感じながらも無難に返した。いや、まあ、選挙用ポスターで顔は知ってたけどな。

「お会い出来て、ちょうど良かった。僕、谷先輩とお話したかったんです」
「話、ですか?」

 そして、話しながら俺は違和感の理由に気づいた――こいつ、俺に普通に敬語使ってんだ。
(腹黒、いや、実は良い奴? けど、自分の仕事を取り巻きにやらせるからな)
 今一つ、相手のキャラが掴めずにいると赤嶺は笑顔のまま俺を食堂へと誘った。
 そして話とやらが気になって承諾した俺に、それぞれの飲み物が届いたところで赤嶺は口を開いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夜が明けなければいいのに(洋風)

万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。 しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。 そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。 長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。 「名誉ある生贄」。 それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。 部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。 黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。 本当は、別れが怖くてたまらない。 けれど、その弱さを見せることができない。 「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」 心にもない言葉を吐き捨てる。 カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。 だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。 「……おめでとうございます、殿下」 恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。 その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。 ――おめでとうなんて、言わないでほしかった。 ――本当は、行きたくなんてないのに。 和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。 お楽しみいただければ幸いです。

君が僕を好きなことを知ってる

大天使ミコエル
BL
【完結】 ある日、亮太が友人から聞かされたのは、話したこともないクラスメイトの礼央が亮太を嫌っているという話だった。 けど、話してみると違和感がある。 これは、嫌っているっていうより……。 どうやら、れおくんは、俺のことが好きらしい。 ほのぼの青春BLです。 ◇◇◇◇◇ 全100話+あとがき ◇◇◇◇◇

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

目立たないでと言われても

みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」 ****** 山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって…… 25話で本編完結+番外編4話

天の求婚

紅林
BL
太平天帝国では5年ほど前から第一天子と第二天子によって帝位継承争いが勃発していた。 主人公、新田大貴子爵は第二天子派として広く活動していた亡き父の跡を継いで一年前に子爵家を継いだ。しかし、フィラデルフィア合衆国との講和条約を取り付けた第一天子の功績が認められ次期帝位継承者は第一天子となり、派閥争いに負けた第二天子派は継承順位を下げられ、それに付き従った者の中には爵位剥奪のうえ、帝都江流波から追放された華族もいた そして大貴もその例に漏れず、邸宅にて謹慎を申し付けられ現在は華族用の豪華な護送車で大天族の居城へと向かっていた 即位したての政権が安定していない君主と没落寸前の血筋だけは立派な純血華族の複雑な結婚事情を描いた物語

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華
BL
 高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。  けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。  ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。  けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。  それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。 「大丈夫か?」  涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。

処理中です...