灰かぶり君

渡里あずま

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演説、そしてその結果1

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 今日は、生徒会役員選挙当日です。SHRの後、体育館に集まって演説会、そして投票結果が午後に発表されます。
 どうしてまた、こんな作文みたいな語りになっているかって言うと。

「えっと、刃金さん?」

 靴箱で待ち伏せていた刃金さんに連れられて、F組近くの階段まで来てから――無言で、左手の薬指をにぎにぎと握られているからです。
 ……ヲイ、朝からどうしてこうなった?

「左手の薬指は、心臓と繋がってるから……マッサージすると、緊張がほぐれるって聞いた」
「俺、別に緊張してないですよ?」
「俺が、やりたかっただけだ。最近、会えなかったからな」
「……ありがとう、ございます」

 勝手と言うかマイペースな理由だけど、まあ、刃金さんらしいし。一応、応援的なものらしいんでお礼を言っておいた。
 それにしても、この緊張対策は初めて聞くな。今度、小説のキャラにやらせるか――いや、でもこれって『ただし、イケメンに限る』方法か?

「ただ、本当に緊張はしてないですよ。元々、決まってた一年二人が立候補したんで万が一……億が一も、俺が当選することはないでしょうから」
「解らないぞ? お前は色々と、不可能を可能にしてるからな。F組おれらを味方にしたり、親衛隊を味方にしたり、生徒会をたらしたり」
「…………」

 最後、人聞きが悪いとは思ったが、事実ではあるんで黙っておく。
 代わりに俺は、気になっていたことを刃金さんに尋ねることにした。

「最近、学校を休んでたみたいですけど」
「……あぁ、悪い。心配かけたみたいだな」

 そう言うと刃金さんは俺の指から手を離して、代わりに頭を撫でてきた。だけど、どうして学校を休んでいたのかは結局、教えてくれなかった。
(まあ、俺も何から何まで教えてる訳じゃないし……怪我とかしてる訳じゃなさそうだし)
 そう結論って言うか、自分に言い聞かせた俺はこの時、気づいてなかった――刃金さんが理由を教えてくれなかったのに少し、だけど珍しく『寂しい』って思ったことを。



「頑張れよ、出灰っ」
「平凡無双、楽しみにしてるから!」
「一茶っ……もう、あいつは気にしなくて良いから。しっかりね」

 教室に戻った俺はSHR後、真白達に応援されて見送られた。
 そして体育館に向かい、演説会が始まったんだけど――先に演説を終わらせたかー君達に、取り囲まれている。
 ……それは、一年生二人の演説のせいだ。

「皆さん、こんにちは。今回、生徒会庶務に立候補させて頂いた、一年S組の赤嶺朱春です」

 壇上に上がった赤嶺に、ガチムチ達から野太い声で声援が飛ぶ。
 だけど、続いた言葉のせいでその声はざわめきへと変わり、緑野には無言ながらも思いっきりガン見された。

「僕が立候補したきっかけは、ランキングで僕を選んでくれた人達に応えたかったのと……体育祭の時、ある先輩が生徒会で活躍しているのを見て、僕も先輩のようになりたいと思ったからです」

 あれっ? 今の『先輩』ってもしかして、俺?
 人間、自惚れちゃいけないと思うけど、学食で話した時のことを考えると無関係とも思えない。そして続けて中夜が壇上に上がり、演説を始めると今度は空青と海青が同時に俺を振り返った。

「今回、会計に立候補した一年S組、中夜黒士です……俺が会計に立候補した動機は、ある先輩への憧れです。我が校を愛する先輩を見て、自分も生徒会に入って我が校を、そして先輩を支えたいと思ったからです」

 えっと、立候補してくれたのは嬉しいけど――俺、そこまで白月学園ここへの母校愛ないぞ?
(何か思い込みされたり、勘違いされてるみたいだな……そうなると)
 幻想ならぬフラグをぶち殺さないと――そう決意を固めると、俺は壇上に上がって口を開いた。

「この度、会計に立候補しました二年S組、谷出灰です……俺は白月学園の、自由な校風を(王道らしくてネタとしては)素晴らしいと思ってます。ですので会計と言う役職を通じ、イベント行事の時に各クラスの出し物などに(他校生を驚かせない程度に)有効に生徒会費が使われるよう提案していきたいと思って『いました』」

 ここまでは、紫苑さん達への義理立てだ。逆に言えば、ここまでやったからもう良いだろう。

「ただし、選挙を実施しての新体制としては俺のような二年ではなく、一年の方が(引継ぎも出来るし、こき使えるから)適していることも解っています。俺が立候補した時には、まだ中夜様は立候補していませんでしたが……今回はお二人にお任せし、俺は立候補を辞退しようと思いま」
「「駄目です」」

 だけど、俺の演説は赤嶺と中夜に止められた。しかも言葉だけじゃなく、両側からそれぞれ腕を掴まれた。
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