灰かぶり君

渡里あずま

文字の大きさ
74 / 96

助言と決断3

しおりを挟む
「差し入れだ」
「ありがとうございます」

 そう言って、マリアさんが差し出してくれたのはコンビニスイーツの栗ぜんざいだった。今なら食べられそうなので、お礼を言ってありがたく受け取る。
 と、そんな俺をしばしジッと見つめてきて。

「いず、大丈夫か?」

 尋ねられたのはさっき、ドアの前でされたのと同じ言葉で。
 ……だけど、何となくだけどさっきと少しニュアンスが違う気がした。
(さっきは体調で、今は……精神的な意味、かな?)
 そう考えると「大丈夫」と答えて良いかどうか、ちょっと悩む。
 マリアさんが俺に求めていることはシンプル(確か健康で、美味しそうに物が食べられているだった)なことで。
 ……だからこそ、マリアさんには嘘をついたりごまかしたりしちゃいけない気がした。
 ちょっと浮上したけど、今朝までは寝不足&食欲不振だったしな。
(しかもそれは、刃金さんが……マリアさん以外の相手が、原因で)
 そこまで考えて、俺はふと引っかかった。
(原因って何だよ、俺。これだと、刃金さんが悪いみたいじゃないか)

「大丈夫です」

 だから俺は、今度は躊躇せずに答えた。
 確かに、寝れなくなったりはしたけど――それは、刃金さんのことが好きだから色々考えた訳で。刃金さんは悪くないし、紫子さんと話したことで伝えて迷惑をかけなければ、好きになったこと自体は悪いことじゃないって思ったからだ。

「そうか、良かった」

 俺の答えに、そう言って微笑むと――マリアさんは少し身を屈め、俺の前髪をそっと払った。

「どうか主が、お前を祝福して下さるように」

 そして祈る言葉と共に、マリアさんは俺の額に唇を落としてきた。
(……流石ですね、マリアさん。ナチュラル過ぎて、全く抵抗出来ませんでしたよ)
 バナナはおやつに入りますか、じゃないけど、祝福これもキスのカウントに入るんだろうか?



 マリアさんからのお土産を食べて、昼寝して――目を覚ました俺は、真白達にメールをした。
『心配かけた。今日の夕飯は、俺が作る』
 一応、学校は休んだんでコンビニには行かずにあるもので。幸い、前に冷凍しておいたコロッケが残っていたんで、ご飯と味噌汁を作れば何とかなる。

「……出灰っ!」
「真白、危ないから近づくな」

 途中、ダッシュで帰って来たらしい真白に抱き着かれそうになり、待ったをかける一幕はあったけど。
 久しぶりに夕飯を作り、三人と一緒に食べられて嬉しかった。

「……あのね?」
「ん?」
「うん、あの……」

 だから真白と奏水が部屋に戻った後、一茶に声をかけられのに俺は何も考えずに振り向いた。
 そんな俺に、珍しく歯切れの悪い様子を見せた後――一茶は、思い切ったように顔を上げて口を開いた。

「もしかして、だけど……本命の相手が出来ましたか、三愛先生?」



「それって、一茶の好きなケータイ小説家の名前だよな?」
「うん、まあ、素直に認めて貰えるとは思わなかったけどね」

 俺の返事に、一茶がそう言って笑う。うん、その通り。よく解っていらっしゃる。

「その三愛先生が今、王道学園物書いてるんだよ。学校とか生徒会が、うちの学校みたいなんだ」
「あぁ、白月って王道だもんな」
「そうそう、だから萌えばっかりで……って、そうじゃなくて。主人公が出灰、そっくりなんだよ」

 ……そうなんだよな。
 私小説って言うのもあるけど、意外と俺みたいな平凡主人公っていないんだよな? この先は、解らないけど――と、なると。
(『もしかして』は俺の正体についてじゃなく、俺に本命が出来たかどうかについて、か)
 つまり、俺の話を読んでくれている一茶にも、主人公――俺が誰を好きかってことが、現段階では解ってないってことだ。
(だったら)
 嘘をつこう。
 伝えられないけど、刃金さんのことが好きだから――せめて、ケジメだけはつけよう。

「半分正解で、半分ハズレだ。確かに、俺はお前の言う『三愛』だけど……本命は、いない。誰も選べなくて、悩んでたんだ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夜が明けなければいいのに(洋風)

万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。 しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。 そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。 長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。 「名誉ある生贄」。 それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。 部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。 黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。 本当は、別れが怖くてたまらない。 けれど、その弱さを見せることができない。 「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」 心にもない言葉を吐き捨てる。 カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。 だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。 「……おめでとうございます、殿下」 恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。 その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。 ――おめでとうなんて、言わないでほしかった。 ――本当は、行きたくなんてないのに。 和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。 お楽しみいただければ幸いです。

君が僕を好きなことを知ってる

大天使ミコエル
BL
【完結】 ある日、亮太が友人から聞かされたのは、話したこともないクラスメイトの礼央が亮太を嫌っているという話だった。 けど、話してみると違和感がある。 これは、嫌っているっていうより……。 どうやら、れおくんは、俺のことが好きらしい。 ほのぼの青春BLです。 ◇◇◇◇◇ 全100話+あとがき ◇◇◇◇◇

誰かの望んだ世界

日燈
BL
 【完結】魔界の学園で二年目の学園生活を送るイオは、人知れず鶯色の本をめくる。そうすれば、必要な情報を得ることができた。  学園には、世界を構成するエネルギーが結晶化したといわれる四つの結晶石≪クォーツ≫を浄める、重要な家系の生徒が集っている。――遥か昔、世界を破滅に導いたとされる家系も。  彼らと過ごす学園生活は賑やかで、当たり前のようにあったのに、じわじわと雲行が怪しくなっていく。  過去との邂逅。胸に秘めた想い――。  二度目の今日はひっそりと始まり、やがて三度目の今日が訪れる。  五千年ほど前、世界が滅びそうになった、その時に。彼らの魂に刻まれた遺志。――たった一つの願い。  終末を迎えた、この時に。あなたの望みは叶うだろうか…? ――――  登場人物が多い、ストーリー重視の物語。学校行事から魔物狩り、わちゃわちゃした日常から終末まで。笑いあり涙あり。世界は終末に向かうけど、安定の主人公です。  2024/11/29完結。お読みいただき、ありがとうございました!執筆中に浮かんだ小話を番外編として収めました。

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

目立たないでと言われても

みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」 ****** 山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって…… 25話で本編完結+番外編4話

天の求婚

紅林
BL
太平天帝国では5年ほど前から第一天子と第二天子によって帝位継承争いが勃発していた。 主人公、新田大貴子爵は第二天子派として広く活動していた亡き父の跡を継いで一年前に子爵家を継いだ。しかし、フィラデルフィア合衆国との講和条約を取り付けた第一天子の功績が認められ次期帝位継承者は第一天子となり、派閥争いに負けた第二天子派は継承順位を下げられ、それに付き従った者の中には爵位剥奪のうえ、帝都江流波から追放された華族もいた そして大貴もその例に漏れず、邸宅にて謹慎を申し付けられ現在は華族用の豪華な護送車で大天族の居城へと向かっていた 即位したての政権が安定していない君主と没落寸前の血筋だけは立派な純血華族の複雑な結婚事情を描いた物語

【完結】恋愛初学者の僕、完璧すぎる幼馴染に「恋」を学ぶ

鳥羽ミワ
BL
志村春希は高校二年生で、同い年の幼馴染・須藤涼太のことが大好き。その仲良しぶりといったら、お互い「リョウちゃん」「ハルくん」と呼び合うほどだ。 勉強が好きな春希には、どうしてもひとつだけ、全く理解できないことがあった。それは、恋心。学年一位の天才でもある涼太にそのもどかしさを愚痴ったら、「恋」を教えようかと提案される。 仮初の恋人になる二人だけど、春希が恋を知ったら、幼馴染の友達同士のままではいられない。慌てる春希に「パラダイムシフトを起こそうよ」と提案する涼太。手を重ねて、耳元で囁く涼太。水族館デートに誘う涼太。あまあまに迫られて、恋愛初学者の春希が陥落しないはずもなく……。 恋を知ったら友達でいられない。でもこの思いは止められない。 葛藤する春希の隣で涼太だけが、この関係は両片思いだと知っていた。 幼馴染の溺愛恋愛ケーススタディ、開幕! 最後はもちろんハッピーエンド! ※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうへ投稿しています

処理中です...