灰かぶり君

渡里あずま

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振ったり、振られたり2

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 晩のバスで帰るから、とメールしたら、紅河さんが迎えの車を手配してくれた。
 来る時と同じ運転手さんだったんで、少しだけ気まずく思いつつも一人で車に乗った。かー君のことを聞いてこない運転手さん、本当にプロだと思う。
 そして寮に到着した俺は、まずモンブランを作り出した。マロンペーストは、昨日のうちに作ってある。だから、ホットケーキミックスで作った生地をオーブンで焼き、冷ましている間にシチューを作り出した。
(さて、と)
 モンブランにクリームと栗を乗せ、オムライスを作ったところで紅河さんにメールをする。

「「「いただきます」」」

 それから、声をかけた真白達と一緒にそう言って、夕飯を食べ出すと――しばらくした頃、ボソリと紅河さんが口を開いた。

「やっぱり、美味いよな」
「ありがとうございます」
「美味いし、媚びてねぇし……けど、俺だけじゃねぇんだよな」

 紅河さんは、食いしん坊なだけじゃなく食べると作り手の感情が解るらしい。不思議な話だけど、わざわざつくような嘘じゃないし――実は今日、ちょっと緊張してた。刃金さんってピンポイントまではともかく、誰か好きな相手がいるって伝わるのかと思ったからだ。

「お前は前に、媚びじゃなく純粋だって言ったけど……相変わらずマズいけど、俺へのこだわりではあるんだよな」

 ……マズいって言うのはともかく、紅河さん、成長したな。
 そう思ったのは、俺だけとか俺へのって言う時、どこか寂しそうな表情かおをしているからだ。
(うん、俺には飯は作れるけど……紅河さんだけを思っては、作れないな)
 自覚した今なら、もしかしたら刃金さんには――いや、やめよう。何て言うか、妄想だし痛い。

「……俺は、俺だけの奴を探すから。見つかるまで、口直しさせろよな」

 そんな風に自己完結していた俺に、やっぱり自己完結したらしい紅河さんがそう言った。

「偉そうだぞ、紅河! 出灰を振るんなら、飯作らせるのやめろよなっ」
「真白だって、出灰のこと諦めたくせに飯、食ってるじゃねぇか」
「うっ……!」

 紅河さんからの反論に、グッと真白が言葉を詰まらせる。
 まあ、俺としては真白も一茶達同様に『友達』だから、飯を作ってる訳だし。美味そうに俺の飯を食う紅河さんは微笑ましいと思うんで、こうやって作る分には問題ないけどな。

「確かに紅河さんの言う通り、好き嫌いと俺が飯を作るのとは別問題ですね」
「だろう?」
「ただし、口に合わないのを俺のせいにはしないで下さいよ? 俺、紅河さんの恋愛沙汰に巻き込まれるの、真っ平ですから」
「……善処する」
「そこは、解ったって言って下さい」

 俺の言葉にドヤ顔になった紅河さんだったけど、続けた内容には政治家みたいな曖昧な答えを返してきた。それに今度は、真白がドヤ顔になるのが面白いと言うか、可愛いと言うか。

「いっそ、真白はどうですか? 息ピッタリですよ」
「冗談!」
「同感だな。こいつ、料理出来ないし」
「出灰! 真白とも良いけど、俺様×健気受けもオイシイと思うよ……あ、オカン攻めに餌付けされるのもありかな!?」
「……一茶」

 そうお勧めしてみると、真白と紅河さんからは思いっきり否定された。
 ちなみに自分の萌えを推してきた一茶は、奏水からため息をつかれていた――うん、振られた(サラッと流した)けど、何はともあれ通常運行だな。
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