令嬢の復讐代行者

渡里あずま

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交代

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 ジャンヌの前世であるクロエは男性で、酒乱の父親に虐待されていた。
 クロエが十歳の時、そんな彼を庇って母親は死に彼も殴り殺されそうになったところで発見された。父親は刑務所に。彼は施設に保護された後、自衛官になって寮生活をしていた。
 そんなクロエに、刑期を終えて刑務所を出た父親が会いに来た。
 そして金がないので、息子であるクロエに面倒を見るように言ってきた。クロエとしてはどの面下げて、としか思えなかった。

「断る。もうアンタの為に、俺の時間も金も使いたくない」

 恨みはあるが、それ以上に父親と関わりたくなかった。好きの反対は無関心とは、よく言ったものである。

「テメェ……親のことを、馬鹿にしやがって!」

 三十歳でも、独身なら寮生活が出来る。そうやってクロエは金を貯めていたし、その金を一銭でも父親に渡したくなかった。
 だからそう言って駐屯地内に戻ろうとしたクロエは、背後から父親の持っていたナイフに刺され、そのまま息絶えた。記憶がそこで最後なので、おそらくという言い方になるが。
 それにしても、ナイフを持っていたということは殺すまでいかなくても、クロエを脅そうとしていたのだろう。母に続いての再犯なので、刑務所に逆戻りしたと思われる。ざまぁみろだ。
 ……そんなクロエは、何故か漫画や小説で見たような異世界に転生していた。
 そして、絶望したジャンヌに代わって男達と対峙した。

「この子に触るな」

 前世では、人殺しの息子ということで絡まれたり苛められたりしたが皆、返り討ちにしていた。
 更にクロエには前世の記憶の他に、現世ジャンヌの記憶もあった。自分と同じように親から虐げられ、けれどクロエと違い、祖父母と幸せになる筈だったことを知っていた。
 だから、ジャンヌを守りたいと思った。そしてならず者達から逃げるのに、クロエは躊躇せず足元を流れる川へと飛び込んだ。

「グッ!」
「ガァッ」
「な、だ……ウッ!」

 刹那、頭上でくぐもった声と、銃声が聞こえた。
 内心、首を傾げながらも前世の記憶を頼りに、クロエは川べりへと泳ぎ着いた。少女の体に濡れた服は重かったが、流石にここで脱ぐ訳にはいかない。
 せめて、とスカートを絞り、移動しようとしたところで近づいてくる足音に気づいた。
 ハッとして向き直り、足音の主と対峙すると──長銃を担いだ、ジャンヌより二、三歳年上らしい黒髪の若者と出会った。
 ……自分に向けられた瞳は深い、吸い込まれそうな黒。
 色気のある美少年だが、それよりも前世の感覚からその色を懐かしいと思った。しかし先程、聞こえた銃声を思い出し、クロエはこの体ジャンヌを守る為にキッと若者を睨みつけた。
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