令嬢の復讐代行者

渡里あずま

文字の大きさ
5 / 27

遭遇

しおりを挟む
 この異世界の武器は剣や槍が一般的で、銃を使うものはあまりいない。火縄銃ではなく弾丸を使っているが、そもそも銃を作る職人の数が少ない、というか一人しかいない。だから、普及しないのだとジャンヌの知識でクロエは知っていた。
 余談だが、部署にもよるが自衛官は最低、年に一回射撃訓練を行っていた。だからクロエも、実際に銃声を聞いたことがあったという訳だ。

「お前も、アイツらの仲間か? 仲間割れか?」

 などと反応を見たくて、挑発するように尋ねてはみたが、仲間割れは違うかとすぐに考えを改めた。クロエを見る少年に、殺気や憎悪などの負の感情が全くないからだ。
 それは正しかったらしく、クロエの視線の先で少年は首を横に振って答えた。

「いえ、違います。俺の保護者が、あなたを助けて連れてくるようにと」
「……保護者?」

 新たな登場人物に、クロエはつ、と眉を寄せた。しかし『連れてくる』発言に、青い瞳が据わる。

「この子……いや、私を利用するつもりか?」
「今更ですよ、逆に、あなたこそ、俺らを利用すればいい。その子の為にも、あなたの為にも」

 ついつい、自分クロエとジャンヌを別に扱っていた。それを少年にさらりと言われ、次いでの提案に「なるほど」とクロエは思った。

「……一理あるな。この子の体が限界みたいだから、運んでくれ。頼む」

 元々のジャンヌは気絶している。クロエと入れ替わり、今は深い深い眠りについている。クロエが呼びかけても、全く反応がない。
 クロエに『交代』していたので逃げて泳ぐことが出来たが、気づけば少女ジャンヌの体は疲労困憊だった。
 だからそう言って、クロエは咄嗟に差し出された少年の腕の中で力尽きて目を閉じた。
 ……そして次にクロエが目覚めたのは森ではなく、前世の中国風の、しかも時代劇で見たような造りの部屋だった。

「やぁ、気づいたかな?」

 声の主は少年と同じ、黒髪と黒い瞳をしていた。年の頃は、四十歳前後だろうか? 前世の漢服のような格好をした、口ひげの似合う美丈夫だ。
 ちなみに気づいたら、クロエもリブロの寝間着なのか白い襦袢を着ていた。少し驚くが、濡れたまま寝たらジャンヌが風邪をひいてしまうので、良かったと思う。
 そんなクロエの考えが顔に出たのかどうか、目の前の男が言葉を続ける。

「着替えさせたのは女官だから、安心してくれ……私はカルバ・ローランだ。リブレ国の外交官として、エスカーダここに来ている。彼は、オーベル。私の執事兼狙撃手だ」

 低い、良い声で笑って名乗った男性の後ろには、先程と同じシャツと黒いスラックスを着た少年──オーベルが控えていた。どうやら、リブレという国では漢服が一般的らしい。オーベルも似合いそうだが、森の中で狙撃を行うには不便だからエスカーダ風の洋服を着ているのだと思われる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

砕けた愛

篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。 あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。

皇后マルティナの復讐が幕を開ける時[完]

風龍佳乃
恋愛
マルティナには初恋の人がいたが 王命により皇太子の元に嫁ぎ 無能と言われた夫を支えていた ある日突然 皇帝になった夫が自分の元婚約者令嬢を 第2夫人迎えたのだった マルティナは初恋の人である 第2皇子であった彼を新皇帝にするべく 動き出したのだった マルティナは時間をかけながら じっくりと王家を牛耳り 自分を蔑ろにした夫に三行半を突き付け 理想の人生を作り上げていく

あなたに何されたって驚かない

こもろう
恋愛
相手の方が爵位が下で、幼馴染で、気心が知れている。 そりゃあ、愛のない結婚相手には申し分ないわよね。 そんな訳で、私ことサラ・リーンシー男爵令嬢はブレンダン・カモローノ伯爵子息の婚約者になった。

本当に現実を生きていないのは?

朝樹 四季
恋愛
ある日、ヒロインと悪役令嬢が言い争っている場面を見た。ヒロインによる攻略はもう随分と進んでいるらしい。 だけど、その言い争いを見ている攻略対象者である王子の顔を見て、俺はヒロインの攻略をぶち壊す暗躍をすることを決意した。 だって、ここは現実だ。 ※番外編はリクエスト頂いたものです。もしかしたらまたひょっこり増えるかもしれません。

学園の華たちが婚約者を奪いに来る

nanahi
恋愛
「私の方がルアージュ様に相応しいわ」 また始まった。毎日のように王立学園の華たちが私のクラスにやってきては、婚約者のルアージュ様をよこせと言う。 「どんな手段を使って王太子殿下との婚約を取り付けたのかしら?どうせ汚い手でしょ?」 はぁ。私から婚約したいと申し出たことなんて一度もないのに。見目麗しく、優雅で優しいルアージュ様は令嬢達にとても人気がある。それなのにどうして元平民の私に婚約の話が舞い込んだのか不思議で仕方がない。 「シャロン。メガネは人前では外さないように。絶対にだ」 入学式の日、ルアージュ様が私に言った。きっと、ひどい近視で丸メガネの地味な私が恥ずかしいんだ。だからそんなことを言うのだろう。勝手に私はそう思いこんでいたけど、どうやら違ったみたいで……?

婚約破棄されました(効率の悪い労働でした) ― 働いてない? 舞踏会は、充分重労働ですわ! ―

ふわふわ
恋愛
「働いていない?――いいえ、舞踏会も社交も重労働ですわ!」 前世で“働きすぎて壊れた”記憶を持ったまま、 異世界の公爵令嬢ルナ・ルクスとして転生したヒロイン。 生まれながらにして働く必要のない身分。 理想のスローライフが始まる――はずだった。 しかし現実は、 舞踏会、社交、芸術鑑賞、気配り、微笑み、評価、期待。 貴族社会は、想像以上の超・ブラック企業だった。 「ノブレス・オブリージュ?  それ、長時間無償労働の言い換えですわよね?」 働かないために、あえて“何もしない”を選ぶルナ。 倹約を拒み、金を回し、 孤児院さえも「未来への投資」と割り切って運営する。 やがて王都は混乱し、 なぜか彼女の領地だけが安定していく――。 称賛され、基準にされ、 善意を押し付けられ、 正義を振りかざされ、 人格まで語られる。 それでもルナは、動かない。 「期待されなくなった瞬間が、いちばん自由ですわ」 誰とも戦わず、誰も論破せず、 ただ“巻き込まれない”ことを貫いた先に待つのは、 何も起きない、静かで満たされた日常。 これは―― 世界を救わない。 誰かに尽くさない。 それでも確かに幸せな、 働かない公爵令嬢の勝利の物語。 「何も起きない毎日こそ、私が選び取った結末ですわ」

わたくしが悪役令嬢だった理由

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、マリアンナ=ラ・トゥール公爵令嬢。悪役令嬢に転生しました。 どうやら前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生したようだけど、知識を使っても死亡フラグは折れたり、折れなかったり……。 だから令嬢として真面目に真摯に生きていきますわ。 シリアスです。コメディーではありません。

処理中です...