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しおりを挟む「あの人、今何歳なんですかね?」
「えっと、私の3つ上のはずですから31?」
「プッ、立派なおじさんですわね」
「その、・・・今も、まだ、・・・なんですかね?」
「?何がですの?」
「いや、・・・その31才になられてもまだ、その、女性と・・・」
セリーヌとイネスが吹き出す。
「わかんないけど、ああいうヤツって女嫌いを標榜しつつ、ちゃっかり娼館とか行ってそうじゃない?」
イネスが毒づくとカトリーヌが、
「どうかしらね。全ての女が敵みたいな態度でしたからね」
「あれですかね?男性の方が・・」
「ちょっとミレイユ!」
セリーヌとイネスがクスクス笑っている。
「なんだか幼い頃から女に付き纏われてトラウマになったとか母親が嫌いだとか、色々噂には聞きましたけど、だから何?
それが私に何の関係がありますの?」
カトリーヌは不機嫌そうに吐き捨てた。
完璧令嬢だったカトリーヌは幼少期から厳しく育てられたのに、ジルベールのせいで経歴に傷がついたことが許せないのだ。
「そうですわよねぇ。
女性が嫌いなら無理に結婚なんてしなければいいじゃない。
跡継ぎがどうのってタレーラン公爵家が滅びようとどうしようと知ったことじゃないですわよね」
「本当に迷惑」
「ご自分の家庭内の問題と人格形成の失敗を他人に押しつけないでいただきたいわ」
「いっそのこと公爵様ご自身で他に跡継ぎをお作りになればいいのに。
あの方まだまだ現役でしょ?」
ジルベールの父、現公爵はジルベールそっくりで50才を超えた今も尚、衰えることのない美貌で浮き名を流している。
「そうよね、そうすればあの男が童貞のまま果てても年の離れた弟が公爵家を継いでメデタシ、メデタシだわ」
「まあ、実際にやったらいくら公爵様といえども王家から闇に葬られるだろうけど」
公爵は本心で言えばこの結婚は本意ではなかった。
我儘でヒステリックなジルベールの母は楽天的で無責任な性格の公爵にとって見た目の美しさの他には何の魅力も感じない相手だった。
できれば回避したかった結婚だったが、年の離れた妹を溺愛する現国王からのお願いという名の命令を拒否することはできなかったのだ。
せめて、かつてのお姫様が素直に公爵への恋心を表していれば二人の結婚生活は違ったものになっていたかも知れないが、彼女のプライドが関係を拗らせた。
一人目の子供が女の子だったため二人の関係は何とか続いていたが、嫡男のジルベールが生まれた後は没交渉となってしまった。
公爵はあまり本宅には寄りつかず遊び回るようになり、夫人は周囲にイライラをぶつけて当たり散らすようになった。
そんな寒々とした家庭で育ったジルベールに同情しないわけではない。
しかし、
「だからって無関係な私達にまるで仕返しするような態度を取るのはおかしいわよね」
そうよ、そうよ、と女達は頷き合う。
「あの母親もヒドイけど、義姉様も大概じゃありませんでした?」
「あー、フランシーヌ様。気に入らなければ来なければいいのに、ワザワザ藪の中までお越しくださってタラタラタラタラ文句を仰るのよね」
「ウケるのが、攻撃する時は微妙にシノとかジルベール様と結託するんだけど、決してどっちとも仲が良いわけじゃないっていう・・・」
「そうそう」
「私なんか、あの小屋に2週間もいなかったんですけど3回襲撃を受けましたからね」
「お前は他人の批判なんかしてないで、とっとと嫁に行け、と言ってやりたい」
「ヒマとしか言い様がないですわ」
「フランシーヌ様っておいくつ?」
「ジルベール様の2つ上だから、33?」
「『妻の心得』を垂れてくださった時は、ありがたさに爆笑しそうでしたわ」
「えー、なになに、なんですの?」
「妻は夫を立てて忍耐を持たなければいけない、とか」
「ご自分は嫁ぎ先からたったの3日で出戻ったくせにね」
「『結婚指輪が気に入らなかった』
んでしたっけ?」
「『嫁ぎ先の辺境に虫がいる』
じゃなかったですか?」
「それなら藪の中までワザワザ来ないでしょう」
「『イケメン辺境伯の鼻毛が出てるのに幻滅した』
これが真相だから 」
「公爵夫人も他所の娘のことをあーだこーだ言う前に、自分の娘をなんとかすればいいのに」
皆でフフフと笑い合っていると、メイドが
「エレーヌ・コリニー子爵令嬢様がお越しです」
と新たな来客の訪問を知らせた。
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