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お茶会は続く
しおりを挟む「だって、どこに地雷があるか分からないから」
もう少し自分の意見を言った方が良いのでは?と聞かれたクラリスが、
「とても綺麗な缶に入ったチョコレートを3粒お皿に載せてくださるの。
チョコレートなんて10年以上見たこともないからウキウキしたんですけど、ずっと隣で
『どう?美味しいかい?』
って、あの超絶美しい顔で5秒毎に聞かれて、味もなにもわかんないんですよ。
あのチョコレート、缶ごと渡してくだされば後で部屋でゆっくり楽しめるのに、
『一度に食べると体に毒だからね』
ってニッコリ笑って目の前で缶の蓋を閉められる時の私の気持ち、わかりますか?」
「・・・もうクラリスって呼んでいいかしら?
あなた面白いわね」
「その3粒も勝手に公爵様が選んでおしまいになるんですよ。
『あの薔薇の形の食べてみたいな』
なんて思ってても公爵様がアーモンドのを摘まんでお皿に載せてくださると
『ああ~』
って。
『どれ、私も一つ頂こうかな』
って薔薇のをポンってお口に放り込んじゃった時の絶望感」
「『食べ物の恨みはおそろしい』
なんて話をよく聞くけど、生まれて初めて実感したお話でしたわ。
それとクラリス、あの男はまだ公爵ではないですわよ」
「ああ、そうなんですよね。
あの方のお父上様が何もかも丸投げして遊び回っていらっしゃるから、実質公爵のようなものだと ご本人が仰っているのでつい」
「まあ、あんな家のことなんてどっちでもいいですけどね」
「それでクラリスは今後どうしたいの?」
「私には逆立ちしたって公爵夫人は無理ですわ。
なにか仕事を見つけて一人で生きていけたら良いんですけど」
「クラリスは何ができるの?」
「家政婦か飲食店の給仕くらいだと思います。
かろうじて読み書きと計算ができるくらいで、ろくな教育も受けていませんから」
「・・・家政婦ねぇ。
なにか好きな事とかやりたい事は無いの?」
「・・・好きなのは音楽です。
亡くなった母が演奏家だったので幼い頃はバイオリンのレッスンを受けていました。
あとは歌ですかね」
「歌えるの?ちょっと今やってもらえない?」
ここでですか?と恥ずかしそうにしたクラリスだったが求めに応じて立ち上がると離れた場所に移動した。
ふうっと息を吸い込んだ次の瞬間、いつも他人の顔色を伺うようにオドオドしているクラリスの表情が一変した。
素人芸を予想していた5人はクラリスの歌声に度肝を抜かれた。
オペラ『沈める聖堂』のヒロインオデッサの独唱、スワン・ソングが美しくも哀しげに響き渡った。
「クラリス、貴女って本当に面白いわ」
「計り知れないわ」
皆口々にに賛美する。
「ねぇ、来月の私の誕生日会で歌ってくれないかしら。
バイオリンも弾いて」
イネスが言った。
「公爵様がお許しくだされば、是非」
クラリスの頬が熱くなった。
こんな風に褒めてもらえたのは、誰かに認めてもらえたのは、生まれて初めてだった。
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