誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕

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17 親離れ子離れ

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 ニコの母親アリーは14才でニコを産んだ。

 地主のドラ息子に手込めにされてできた私生児がニコだった。

 手切れ金という名の口止め料と共に村を追い出された親子はその地方で盛っている町にたどり着いて暮らし始める。

 二人を側で支え続けたのがアリーの姉ミリーだった。

 ミリーは乳児を抱えて身動きのとれない妹に代わって身を粉にして働いた。

 そしてニコが3才になると一人で留守番をさせて母アリーも働きに出るようになった。

 彼女が女優になると言って町を出ていったのはニコが5才の時だった。

 町にやって来た興行師に唆されて、ミリーが止めるのも聞かずに家出同然で出ていったという。

 初めの頃はニコの成長を気遣う手紙と共に仕送りがあったらしいが、アリーが有名な映画監督に見いだされスクリーンデビューして暫くすると、関係を絶ちたいという手紙と少し多めの金額の小切手を送りつけてきたのを最期に連絡は断たれてしまった。

 「ミリーはボクの為に結婚もしないで働いて働いて、病気になって死んじゃったんだ」

 ああ、亡くなったお母様って伯母さんのことだったのね。


「海を見てみたいってミリーが言ったんだ」

 持ち金を全部持って列車に乗った。

 海辺の町にたどり着いて一週間ほどでミリーは亡くなった。

 町の教会の海の見える丘の上の墓地の片隅。
 
身寄りの無い者が入る共同墓地にミリーを埋葬し、ニコは一人王都に出てきたという。



「あの人ね、ボクを見ても気付きもしなかったよ」

 笑うニコに掛ける言葉がわからない。


「ボクね、どうしてもラウラに買って貰った服を着て行きたかったんだ。

 ラウラが買ってくれた服に包まれていれば きっと大丈夫だって思った。

 ボクにだって愛してくれる人がいるんだって」



「でもさ、あの人、覚えてもいなかったよ。
  
 ボクのこと、『イメージにぴったりよ』って笑ったんだ。

 拒絶されるのが怖かったけど、忘れ去られる方がツライね」

 ラウラはニコを抱きしめた。

「ボクあの人に会ったら言ってやりたかったんだ。

 ミリーは働いて働いて、楽しいことなんか何にもなくて今は墓碑もないお墓に埋まっているんだって!

・・・でも、ボク、何にも言えなかったんだ。

 ミリーのことも あの人のことも不幸にしたのはボクなんだから」

 
ラウラはニコをずっと抱きしめながら背中を擦っていた。


 ニコは小さい子供のようにラウラの胸でグズグズ泣き続けていた。








 ニコは名だたる映画の賞を総嘗めにして一躍時の人となった。


 ニコのもとには沢山のオファーが舞い込んでいるとルネが言っていた。


 大通りにはニコの次回作を告知する巨大看板が掲げられている。

 
 見上げたラウラは一つ溜め息を吐いた。

 『もうすぐ私は27才。

 なんの成長もない一年だったわ。

 ニコとは大違いね』




 panicではランディーが

「あのガキ大スターになったから高級物件にお引っ越しだろうな~。
 いやぁ~めでたい、めでたい!」

「あの部屋はいつでも帰ってこれるようにニコのために取っておくの」

 カリスがぶっきらぼうにグラスを置く。


「チェッ!もう住む世界が違うんだから黙って見送ってやるのが友情ってもんだろ?」


 ランディーの言葉が妙に胸に刺さるラウラだった。










 
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