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本編
11.
しおりを挟む「それに……気づいてますか? 僕達は運命なんです。僕も抑制剤を飲んでますけど、瑠璃さんのヒート中のフェロモンはしっかりと感じました。そんなの初めてだったので、あ、あんなことを……」
「うん、めい……? え……もしかして、琥珀からいい匂いしてたのって……」
「僕は香水使いませんから、きっとフェロモンなんでしょう。運命の相手同士だと、抑制剤も意味がないと聞きます」
そんなこと考えもしていなかったから、ぽかんとしてしまった。しかし、言われてみれば思い当たることがいくつもある。
琥珀といるときにだけ感じる、蠱惑的な香り。人工的な香りとかではなく、身体の芯からなにかを掻き立てるような感覚だった。あれがフェロモンだとすれば、すっと薬を飲んでいるため他のアルファからは感じたことのないものだ。
運命の相手といると、周期と関係なく発情期が来たり、発情期じゃなくてもフェロモンを出してしまったりするらしい。瑠璃と琥珀はお互いに抑制剤を飲んでいたため気づきにくかったが、身体はちゃんと反応していたようだ。
今日はいろいろあったため割とギリギリだったが、病院で緊急用の注射を打ってもらったのでもう落ち着いている。
「まじか……」
「嫌、でした?」
「まさか! ……嬉しい。でも、運命じゃなくてもおれ、琥珀のこと好きになってたと思う」
「……っもう! あんまりかわいいこと言わないでくださいよ! 我慢してるのに!」
ぎゅうっと抱きしめられて、瑠璃も琥珀の背中に腕を回した。やっとここに戻ってこられた気がする。ここが、瑠璃の居場所だ。
顔を上げると琥珀の顔が近づいてきて、静かに唇が重なった。発情期のあいだにキスもしたのかもしれないが、瑠璃にとってはファーストキスだ。とても幸せで、パチパチと喜びが湧き上がり、全身に広がってゆく。
恥ずかしいけど、嬉しい。離れていった唇を追いかけたくなって、自分の内に隠れていた欲望に驚いた。でもきっと、瑠璃だけじゃない。上目遣いに見上げながら琥珀に尋ねる。
「なぁ……エッチ、する?」
「はわっ……い、い、いいいんですか!?」
自分のことは置いておくが、童貞みたいな反応だ。焦った喋り方がおもしろくって、抱き締めあったまま肩を震わせてくすくす笑ってしまった。
「もう二度目じゃん。おれは覚えてないけど」
「いっ、いえ……エッチはしてません」
「……は? ヤッたって言ったじゃん」
「その、瑠璃さんの……自慰のお手伝いで、お身体に触れました。それだけですが、でも、秘部にも触れてしまったので……」
「えええ~~~……」
あのときはっきり言えよ! 言われたら黙れと叫んだに違いないが!
一気に脱力して、琥珀の方にぐでんと頭を預ける。衝撃的な事実に、いいムードも霧散してしまった。
とはいえ「ごめんなさい……」と項垂れる琥珀を見ると、怒る気持ちはもう浮かんでこない。
結果として、良かったんじゃないか? だって、覚えていない初めてなんてつまらない。事故じゃなくて、ちゃんと好きな人と身も心も通じ合いたい。
「……なら、急ぐのもなんかもったいないな」
「え?」
順番があべこべになってしまったけど、これからずっと一緒にいるのならゆっくり進んでいくほうが楽しそうだ。たぶん、自分たちにはそっちの方が合っている。
「今日は一緒に寝るだけにしよーぜ」
「え……!! ……期待しちゃったんですけど」
提案すると、琥珀が拗ねたように口を尖らせる。なんか思った反応と違うな……? ま、いいか。
その後交代でシャワーを浴びたあと、琥珀が夢の中のイケメンに大変身して瑠璃は腰を抜かすほど驚いた。ここまでのギャップは心臓に悪い。
でもなんか、どっちでも好きだなと思ってしまうんだから自分は相当この男に惚れてしまっているらしい。
その夜はもう一回だけキスをして、手を繋いで眠った。
――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
実はワンナイトラブシリーズとして書いていた内のひとつがこちらの作品でした。
ひとりで盛り上がって、たくさん書きましたね……笑
商業化とはなりませんが、受賞できてとっても嬉しかったです!
もしよろしければ、一言でも感想をいただけますと嬉しいです。
次回作もがんばりますのでよろしくお願いいたします!
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