出戻り国家錬金術師は村でスローライフを送りたい

新川キナ

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014:綺麗だよ

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 サリナちゃんが姉であるカレナに追い立てられるように、やってくるようになった。昼の少しの休憩時間だけの逢瀬だ。

「無理矢理とか大変だね」

 俺がそう聞くとサリナちゃんが、曖昧に頷く。基本無言だな。

「そうだ。紅を作ってみたんだ。鏡もあるよ」

 鏡は銅でいわゆる銅鏡というやつだ。紅も持っていた材料を錬金でちょちょいと作ってみた。するとサリナちゃんは俯きながら言った。

「似合わないから……」
「そんなわけないよ。だって俺が似合うと思って用意したんだもの」

 しかし少女の意思は頑なだ。俺は彼女に詰め寄る。

「あれ? 都会仕込みの俺のセンスを信じない?」
「でも……」

 ちらっちらっと興味は示している。

「俺だけに見せてくれないかな。似合わなかったら直ぐに拭えばいいからさ。せっかく作ったのに……」

 そう言って、しょげて見せる俺。うん。演技だ。都会で何を学んできたのかと。すると自身の好奇心も後押ししたのだろう。

「じゃ、じゃあちょっとだけ」

 そう言って了承してくれた。俺は彼女の気が変わらないうちにとばかりに少女に化粧を施す。目元に薄く筆で線を引き、唇にも紅をさす。それだけで特徴のなかった少女の顔が変わった。思わず「おぉ!」と感嘆の声を上げてしまった。

「見て。たったこれだけで見違えるほど綺麗になったよ」

 そう言って少女に鏡を見せる。するとサリナちゃんも、驚きで目を見張ってみせた。

「これが、私……」

 俺は「あとは姿勢だ。猫背になっているのを直してね。ちゃんと立って」と言う。

「で、でも……」
「身長が高いのもコンプレックスなんでしょ? でもそれ。長所だから。スラッとしてて綺麗だよ」
「綺麗……私が?」
「うん。ほらシャキッと立つ」

 そう言って背中を真っ直ぐにして、顎を引かせる。女性にしては確かに高めだ。一般的な男性ウケは悪いだろうが、俺的にはヒットだ。

「うん。綺麗だ!」

 スタイルがぐっと引き立った。あとは服装だな。

「ドレスでもあればよかったんだが」

 するとサリナちゃんは首を左右に振った。

「い、いいえ。そこまでしてもらう訳には!」
「気にしなくていいよ。女性を綺麗にしたいのは男の……いや。俺の趣味だから」
「ジンさんの……趣味」
「そう。ぐっとくるんだよね。自分に自信のなかった俯きがちな少女が、俺のアドバイスで自信をつけて背筋を伸ばして前を見る姿。あぁ……少女が女性に変わる瞬間を見れるって素敵だと思わない?」

 するとサリナちゃん。

「ジンさんって、変わってるって言われませんか?」

 おっ、以外に辛辣。でも俺はヘコタレない。笑って応じる。

「あはは。そうかな。まぁでも、それで救われる子がいるなら別にいいけどね」

 するとサリナちゃんは納得がいったのだろう。

「そうですね」と笑ったのだった。

 だから彼女に「うん。素敵な笑顔だ。俯いているより、そうやって笑っている方がいいよ」と褒める。すると少女は今度は俯いた。照れているのだろう。

 うん。都会では薄ら寒かった褒め言葉だったけど、それで救われる子がいるならいくらでも言ってやろうと思う。
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