出戻り国家錬金術師は村でスローライフを送りたい

新川キナ

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020:悋気と戸惑い

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 家に帰るとエステラが腕を組んで待っていた。

「遅かったわね」
「あぁ。ちょっと受付の人と話し込んじゃってね」
「浮気?」
「いや、俺たち現在は付き合ってないよね?」
「それもそうね……」

 そう言って少し落ち込むエステラ。何だか気まずいな。でもまぁ別に疚しい事をしていたわけじゃないし。

「ちょっと色々と商品開発のネタをね」
「ふぅん」

 何だか少し言い訳じみてしまった気がしないでもない。なんだ、この微妙な空気は……

「えっとぉ昼食は?」

 するとエステラの表情がパッと変わった。

「あっ、そうだ。昼食。私も作ったんだ。ミナが作っているのを手伝っただけだけどね」

 そう言って笑う彼女の姿に、ちょっとホッとする。

 そしてホッとした自分が嫌だ。凄く嫌だ。

 ハァ……

 何だろう。すごく疲れる。

 その後、昼食を摂った。ミナが黙々と給仕をし、俺はエステラと二人で食事をする。

 美味かった。まぁ中央の味付けで貴族向けの料理という感じの物だったが。わざわざ調味料とか持ってきたのか、と思わなくもない。

 その後は工房に戻って研究だ。足元を温める道具。それも椅子に座りながらとなると、なかなか難しい。火事にもならず立ったり座ったりも楽。

「う~ん。そうだなぁ。温風を送る道具とかどうよ?」

 火の魔石で空気を温め風の魔石で、その空気を足元に送る。と考えた所で火の魔石も風の魔石もないことに気がつく。

「仕入れなきゃ……」

 この辺には無い魔石だ。

 あれも無い。これも無い。マジで賢者の塔や学び舎は至れり尽くせりだったなと。いつでもどんな物でも揃ってた。

 椅子の背にもたれ掛かる。

「はぁ。こんなんでやっていけるのかね」

 しばらく天井を眺めていた。窓の外に視線を移せば雪が降っている。暖炉には火が入り、部屋はいちおう温かい。

 思い出すのは王都での楽しかった仲間たちとの日々。

 王都は、ここより海寄りにあって暖かかった。

 俺は間違った選択をしたのだろうか?

 本当は賢者の塔を出るべきではなかったのだろうか?

 そんな疑問が首をもたげる。

「はぁ……」

 在野の錬金術師の大変さを思い知る。これからも事あるごとに立ちはだかるのは物の無さ。仕入れルートの確保が必要だ。

「とは言え。魔石ねぇ……」

 ダンジョン都市なんかだと豊富にある資源だが、そこから離れた土地では仕入れもままならない。

 田舎に移動したことを、ちょっと後悔し始めるのだった。
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