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049:説教と村の変化
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飲み屋で話題って。
えっ俺が?
「何でそんな事になってんの?」
なんでも、俺の本命はどっちだ!
みたいな感じなのだそうだ。小さな村社会。
気軽に恋愛をして遊ぶというわけにも行かないからこその楽しみ方だな。
「周りから見ると、どちらにも興味がなさそうという話だが?」
うん。それは俺も思ってた。
「実はさ。エステラと少しその辺の話もしたことがあるんだ」
「ほぉ?」
「サリナちゃんの事を、どう思ってんのって」
「あぁ。そりゃ、そう言う話もするだろうな」
「好きかと聞かれたら好きではある……と思う。少なくても嫌いではないよ」
「あぁ。つまり自分の気持ちが良く分からないとかっつぅ、そういう話か?」
「まぁそうだね」
「かぁ。まだるっこしい! そんなもの。やりてぇか、やりたくねぇかでいいじゃねぇか!」
ぶほっ!
ちょっ!
吹き出しちゃったじゃないか!
「そこなの!」
「そうだよ! 他に何があんだよ!」
「えぇ……それはちょっと……」
「まぁ、確かにちょっと暴論だがよ。それも大事な要素だ。で? やるとしたらどっちだ? やった上で責任を取るとしたらどっちだ?」
「……そりゃサリナちゃんだろ。エステラは……」
「そうだな。前にも言ってたよな。抱けねぇ理由。もしその理由がなかったら?」
「……分からない。もしかしたら両方を抱いたかも?」
「あっはっは。正直でよろしい! つまりお前の悩みは消去法でサリナちゃんという点だろう。そんな理由で付き合って良いのかってな」
「……そうだね」
「つまり、お前は惚れたいわけだ」
「うん? 惚れたい?」
「そう。相手に惚れて相手も自分を愛しくれてってのを望んでる。かぁ夢を見てんなぁおい!」
そう言ってゲーネッツは俺の肩を抱き寄せた。
「俺から言わせりゃ惚れられたから付き合うってのだって立派な恋愛だぜ?」
「俺の方の気持ちは?」
「そこだな。お前の方がイマイチ盛り上がってねぇのが、お前の中での問題だ」
「……」
「そこでだ。お前。エステラと付き合っていた時はどうだったんだ?」
「そりゃ、舞い上がってた、ね」
「それがサリナちゃん相手にはない?」
「うん」
「俺から言わせりゃな。惚れた腫れたなんて最初のうちだけだぜ。恋愛ならそれでいいが結婚はそうじゃねぇらしいぞ」
あっそこは人伝なんだ。
「俺もよく分からんが、積み重ねだって言っていたな」
「積み重ね?」
「そう。相手への感情を積み重ねる共同作業。それが愛情か憎しみかで結婚生活が上手く行くかどうかは決まるらしい。良いじゃねぇか。うん。始まりは何だって良いんだよ。それが熱く蕩けるような情熱的なものである必要性はないんじゃないかって思うぞ? もちろん。そういう恋愛をした上で結婚生活も上手く行くなら最高だが。そうじゃねぇ人間の方が多いんじゃねぇかな。妥協から始まる関係でもさ。積み上げて行けば何時かは、それが本物の愛に変わっているかもしれないぞ?」
「……そういうもんかな?」
「たぶんな」
恋愛と結婚がイコールってのもなぁと思わなくもないが。『気軽に付き合って遊ぶ』と言う概念のほうが珍しいのが、この村の事情だ。村自体が身持ちが堅いというのはそういうことだろう。
その後も、俺はゲーネッツといろいろな話しをした。
仕事というか趣味のことが主だな。
ゲーネッツには「両方やれば良い」と言われた。
「なんで一つに絞るんだ?」
逆に聞かれてしまった。
「えっ。いや。だって……どっちも中途半端にならないか?」
「完璧主義者め。その考えはやめろ。生き方に完璧を求めるな。人生なんて最後の死の際に”やりきった”悔い無しと笑って死ねればいいんだよ。どちらを選ぶか迷っているなら両方やれ。最初から『俺はこれだけだ』と思える人間以外はそうしている。やって駄目ならその時にまた考えればいい。やる前から”やらない”という選択肢を作るな。それはきっと後悔になる」
※
※
※
小さな小さな村社会。そこでは、他人の性事情まで興味の対象だ。王都では大半が無関心だったのにな。精々が数人の仲間内で騒ぐ程度で。
何故そこまで他人に興味があるのだろう?
さっき答えを話したな。それは仲間だからだ。
王都では仲間内だけで話題を共有していたのが、ここでは村という単位で共有される。村人の全てを親しい仲間と思えなければやっていけないのが村社会と言う単位だ。
そう。王都だけで過ごしていた人からしたら面食らうだろうな。
王都では小さかった数人だけ、または個人だけだったコミュニティが、村では大きなコミュニティに属することになる。
もし。もし村という社会で、上手く人間関係を築きたいのなら、村人の全てを友人だと思うことだ。彼ら全てを仲間なのだと思って付き合うこと。
面倒くさい?
そう思うなら都会の小さなコミュニティで過ごすことを勧めるよ。
「しっかしさぁ。お節介焼きが多いね」
この村がどんどん大きく発展すればするほど、仲間意識が薄れていく。
何故か?
そこに他人が入り込むからだ。
「ちょっと寂しい気もするな」
村は今。発展へと向かっている。
村が町へと変わり、大きな都市へと変わるだろう。
いずれは仲間という帰属意識も薄れ、都会風の小さなコミュニティだけになる。
そこに今のような人間関係は存在しない。
サリナちゃんが文字を覚えようと思ったのも、もしかしたら、そういう村の変化の機微を感じ取ってのことかもな。頭の良い子だから。
えっ俺が?
「何でそんな事になってんの?」
なんでも、俺の本命はどっちだ!
みたいな感じなのだそうだ。小さな村社会。
気軽に恋愛をして遊ぶというわけにも行かないからこその楽しみ方だな。
「周りから見ると、どちらにも興味がなさそうという話だが?」
うん。それは俺も思ってた。
「実はさ。エステラと少しその辺の話もしたことがあるんだ」
「ほぉ?」
「サリナちゃんの事を、どう思ってんのって」
「あぁ。そりゃ、そう言う話もするだろうな」
「好きかと聞かれたら好きではある……と思う。少なくても嫌いではないよ」
「あぁ。つまり自分の気持ちが良く分からないとかっつぅ、そういう話か?」
「まぁそうだね」
「かぁ。まだるっこしい! そんなもの。やりてぇか、やりたくねぇかでいいじゃねぇか!」
ぶほっ!
ちょっ!
吹き出しちゃったじゃないか!
「そこなの!」
「そうだよ! 他に何があんだよ!」
「えぇ……それはちょっと……」
「まぁ、確かにちょっと暴論だがよ。それも大事な要素だ。で? やるとしたらどっちだ? やった上で責任を取るとしたらどっちだ?」
「……そりゃサリナちゃんだろ。エステラは……」
「そうだな。前にも言ってたよな。抱けねぇ理由。もしその理由がなかったら?」
「……分からない。もしかしたら両方を抱いたかも?」
「あっはっは。正直でよろしい! つまりお前の悩みは消去法でサリナちゃんという点だろう。そんな理由で付き合って良いのかってな」
「……そうだね」
「つまり、お前は惚れたいわけだ」
「うん? 惚れたい?」
「そう。相手に惚れて相手も自分を愛しくれてってのを望んでる。かぁ夢を見てんなぁおい!」
そう言ってゲーネッツは俺の肩を抱き寄せた。
「俺から言わせりゃ惚れられたから付き合うってのだって立派な恋愛だぜ?」
「俺の方の気持ちは?」
「そこだな。お前の方がイマイチ盛り上がってねぇのが、お前の中での問題だ」
「……」
「そこでだ。お前。エステラと付き合っていた時はどうだったんだ?」
「そりゃ、舞い上がってた、ね」
「それがサリナちゃん相手にはない?」
「うん」
「俺から言わせりゃな。惚れた腫れたなんて最初のうちだけだぜ。恋愛ならそれでいいが結婚はそうじゃねぇらしいぞ」
あっそこは人伝なんだ。
「俺もよく分からんが、積み重ねだって言っていたな」
「積み重ね?」
「そう。相手への感情を積み重ねる共同作業。それが愛情か憎しみかで結婚生活が上手く行くかどうかは決まるらしい。良いじゃねぇか。うん。始まりは何だって良いんだよ。それが熱く蕩けるような情熱的なものである必要性はないんじゃないかって思うぞ? もちろん。そういう恋愛をした上で結婚生活も上手く行くなら最高だが。そうじゃねぇ人間の方が多いんじゃねぇかな。妥協から始まる関係でもさ。積み上げて行けば何時かは、それが本物の愛に変わっているかもしれないぞ?」
「……そういうもんかな?」
「たぶんな」
恋愛と結婚がイコールってのもなぁと思わなくもないが。『気軽に付き合って遊ぶ』と言う概念のほうが珍しいのが、この村の事情だ。村自体が身持ちが堅いというのはそういうことだろう。
その後も、俺はゲーネッツといろいろな話しをした。
仕事というか趣味のことが主だな。
ゲーネッツには「両方やれば良い」と言われた。
「なんで一つに絞るんだ?」
逆に聞かれてしまった。
「えっ。いや。だって……どっちも中途半端にならないか?」
「完璧主義者め。その考えはやめろ。生き方に完璧を求めるな。人生なんて最後の死の際に”やりきった”悔い無しと笑って死ねればいいんだよ。どちらを選ぶか迷っているなら両方やれ。最初から『俺はこれだけだ』と思える人間以外はそうしている。やって駄目ならその時にまた考えればいい。やる前から”やらない”という選択肢を作るな。それはきっと後悔になる」
※
※
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小さな小さな村社会。そこでは、他人の性事情まで興味の対象だ。王都では大半が無関心だったのにな。精々が数人の仲間内で騒ぐ程度で。
何故そこまで他人に興味があるのだろう?
さっき答えを話したな。それは仲間だからだ。
王都では仲間内だけで話題を共有していたのが、ここでは村という単位で共有される。村人の全てを親しい仲間と思えなければやっていけないのが村社会と言う単位だ。
そう。王都だけで過ごしていた人からしたら面食らうだろうな。
王都では小さかった数人だけ、または個人だけだったコミュニティが、村では大きなコミュニティに属することになる。
もし。もし村という社会で、上手く人間関係を築きたいのなら、村人の全てを友人だと思うことだ。彼ら全てを仲間なのだと思って付き合うこと。
面倒くさい?
そう思うなら都会の小さなコミュニティで過ごすことを勧めるよ。
「しっかしさぁ。お節介焼きが多いね」
この村がどんどん大きく発展すればするほど、仲間意識が薄れていく。
何故か?
そこに他人が入り込むからだ。
「ちょっと寂しい気もするな」
村は今。発展へと向かっている。
村が町へと変わり、大きな都市へと変わるだろう。
いずれは仲間という帰属意識も薄れ、都会風の小さなコミュニティだけになる。
そこに今のような人間関係は存在しない。
サリナちゃんが文字を覚えようと思ったのも、もしかしたら、そういう村の変化の機微を感じ取ってのことかもな。頭の良い子だから。
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