診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

文字の大きさ
24 / 357
第2章 外科の未来、その先へ

22話 外科の未来  

しおりを挟む
 院長「今、外科医は大学病院から来ていただいている速見先生というベテランの先生と、大学病院で外科専攻医の研修を受けているうちのスタッフが一人います。

ただ、その医師はあと三年は戻って来られないんですが……。

それでも皆で集まればサテライトの外科棟ができるんじゃないかって、もう勝手に話が盛り上がっているんですよね」

佐久間「なるほど。ここの親会社は浅田社長ですよね? それなら簡単にできるでしょう」

理事「えっ? 父をご存じなのですか?」

佐久間「直接お話ししたことはありませんが、何かの会合でお見掛けしたことがあります。

今、この業界では皆が菜の花を注目していますよ。

起業家による病院経営は斬新で、アイデアにあふれています。ここ四年間の邁進ぶりは、まさに伝説を作りそうな勢いです。

本当にしがらみがなくて、うらやましいくらいですよ。何でもできてしまうのではないかと思うほどです。

ビルをもう一棟建てることくらい、容易にできるでしょう。

しかも中身がしっかり伴っている。

そこが皆の注目する理由なんです。

誰もが参考にしたいと思っています。

……ただ、人が命ですから、そう簡単にはいかないのも事実ですがね」

夏を見ると涙ぐんでいた。

こんなに認められて、感動したんだね。

俺もうれしくて、つい涙ぐんでしまった。

周りを見ても、みんな似たような顔をしていた。

佐久間「ああ~、ところで夜勤のみでよろしいですか? 

実は今、昼間は家族の介護があって外せないんです。

夜は子どもたちが見てくれるので大丈夫なんですけどね」

院長「どういった介護が必要なんですか? こちらでお手伝いできることはないでしょうか。

日中はナースが揃っていますから。ねっ?」

そう言ってナースたちを見ると、うんうんと頷いている。

院長「部屋も用意しますよ。時々見に行けば安心できるでしょう?」

佐久間「……そんなことを言っていただいたのは初めてです。胸がいっぱいです」

そう言って俯いてしまった。

理事「もし、全面的にうちの外科に来ていただけるなら、外科のそばに部屋を作ります。

診察室には見守りカメラを付けますよ。

専任の介護者をつけてもいいですし、ナースも見守ります。先生ご自身も時々覗けば安心でしょう?」

佐久間「……なんと言えばよいのか、言葉がありません。

本当にありがとうございます。お言葉に甘えてしまってもよろしいのでしょうか?」

声が震えていた。

院長「もちろんです。当然ですよ。ぜひ、うちで力を発揮してください。

先生が来てくださるなら、全面的に環境を整えます。どうか、いらしてください」

今度は佐久間先生が涙ぐんでいた。

「では、どうぞよろしくお願いします」

そう言って深々と頭を下げられた。

みんなの胸に期待が膨らみ、自然と大きな拍手が湧き起こる。

これで、菜の花に新しい門出が訪れたのだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

網代さんを怒らせたい

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「なあ。僕たち、付き合わないか?」 彼がなにを言っているのかわからなかった。 たったいま、私たちは恋愛できない体質かもしれないと告白しあったばかりなのに。 しかし彼曰く、これは練習なのらしい。 それっぽいことをしてみれば、恋がわかるかもしれない。 それでもダメなら、本当にそういう体質だったのだと諦めがつく。 それはそうかもしれないと、私は彼と付き合いはじめたのだけれど……。 和倉千代子(わくらちよこ) 23 建築デザイン会社『SkyEnd』勤務 デザイナー 黒髪パッツン前髪、おかっぱ頭であだ名は〝市松〟 ただし、そう呼ぶのは網代のみ なんでもすぐに信じてしまい、いつも網代に騙されている 仕事も頑張る努力家 × 網代立生(あじろたつき) 28 建築デザイン会社『SkyEnd』勤務 営業兼事務 背が高く、一見優しげ しかしけっこう慇懃無礼に毒を吐く 人の好き嫌いが激しい 常識の通じないヤツが大嫌い 恋愛のできないふたりの関係は恋に発展するのか……!?

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~

芙月みひろ
恋愛
保険会社の事務職として勤務する 早瀬佳奈26才。 友達に頼み込まれて行った飲み会で 腹立たしいほど無愛想な高原宗輔30才と出会う。 あまりの不愉快さに 二度と会いたくないと思っていたにも関わらず 再び仕事で顔を合わせることになる。 上司のパワハラめいた嫌がらせに悩まされていた中 ふと見せる彼の優しい一面に触れて 佳奈は次第に高原に心を傾け出す。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

処理中です...