48 / 357
第3章 新たな人材を求めて
46話 甘えんぼ
しおりを挟む
翌日、掲示板で流して、朝礼でもスタッフに紹介してもらえるようお願いしておいた。
院長室に戻ると、夏が少し不満げな顔をしていた。
夏「お兄さん、俺さ……桐生さんから聞くまで感謝金のことなんて全然知らなかったよ」
「そう? だって練習で忙しかっただろう?」
夏「そこ? もう練習なら済ませたよ」
「じゃあ、もう大丈夫なのか?」
夏「大丈夫。それにもうアポイントも取ったんだ」
「ふ~ん、いつだ?」
夏「今度の土曜、午後3時」
「うん、わかった。パリッとしたスーツで行くんだぞ」
夏はまだ何か言いたげな表情を浮かべていた。
「まだ言いたいことでもあるのか?」
夏「ないよ……」そうつぶやき、視線を落とした。ふっ。
「アニメプラスの引っ越しは決まったのか?」
夏「決まったよ。今度の金曜だよ」
「どこに?」
夏「駅前のフーズのビルの上、3階のフロアが空いたんだ。そこにカンパニーも一緒に入る」
「ふ~ん」
夏「……まだ用事あるの?」
「別にないけどな」
そう言い残し、夏は部屋を出て行った。
ったく……子供だなあ。
桐生さんを呼んだ。
桐生「はい。御用でしょうか?」
「理事は何かあったのか? なんだか言いたそうにしてたけど」
桐生「ああ……おそらくですが、社長に叱られたみたいです。
人材集めにアイデアはあるのか、と問われたらしいんです。
院長が抜群のアイデアを出されたので、理事も一緒に考えたのだと思われたのですが、ご存じなかったようで、社長はかなりがっかりされたそうです」
「そうか……。練習で忙しいと思ったから、仕事を上乗せしたくなかったんだよ。
あれから何も言ってこなかったから、まだ練習をしてるのかと思ったんだよ」
桐生「いえ、あれからは台本に沿ってしっかり練習されましたよ。
想定問答も何度も繰り返しましたから、もう大丈夫だと思います」
「そうか、本当にありがとう。お世話になりました」
桐生「いえいえ。ただ、理事がなんだか寂しそうで……。
少しかまってあげてくださいませんか?
見ていてかわいそうになるんです」
「えっ?」
桐生さんの優しい微笑みに、思わず頬が緩んだ。
「ちょっと厳しすぎたかな?」
桐生「いいんじゃないですか? 試練を与えられるのは院長だけですから。むしろ恵まれてますよ」
「ははっ、そうか。理事は今どこに?」
「理事室にいらっしゃると思います」
「うん、わかった。ありがとう。お疲れさま」
桐生さんは笑顔のまま戻っていった。
さて……どうしたものかな。
インカムで夏に「一緒に帰ろうか」と声をかけると、一分も経たないうちに飛んで来た。……早いな。
「じゃあ、帰ろう」立ち上がってドアに向かうと、後ろから抱きつかれた。
「早く帰るぞ」
「ダメ……今じゃなきゃいやだ」
くるりと振り返り、夏をぎゅっと抱きしめる。
「……ったく、どうしようもない甘えんぼだな」
夏は小さく頷き、顔をすり寄せてきた。
「だから、俺のこと見捨てないで。寂しいよ」
「見捨ててないさ。期待してるから鍛えてるだけだ」
「本当?」
「ふっ、決まってるだろ。社長から預かってるんだ。
どこまでも鍛えてやるさ。まったく手間のかかるやつだ」
夏がくすくす笑い出した。
「だよね? えへへへ」
つられて俺も笑ってしまう。
この単純さが、憎めないくらい可愛い。
「ほら、帰るぞ。一緒に風呂入るか?」
「うん! 入るっ」
院長室に戻ると、夏が少し不満げな顔をしていた。
夏「お兄さん、俺さ……桐生さんから聞くまで感謝金のことなんて全然知らなかったよ」
「そう? だって練習で忙しかっただろう?」
夏「そこ? もう練習なら済ませたよ」
「じゃあ、もう大丈夫なのか?」
夏「大丈夫。それにもうアポイントも取ったんだ」
「ふ~ん、いつだ?」
夏「今度の土曜、午後3時」
「うん、わかった。パリッとしたスーツで行くんだぞ」
夏はまだ何か言いたげな表情を浮かべていた。
「まだ言いたいことでもあるのか?」
夏「ないよ……」そうつぶやき、視線を落とした。ふっ。
「アニメプラスの引っ越しは決まったのか?」
夏「決まったよ。今度の金曜だよ」
「どこに?」
夏「駅前のフーズのビルの上、3階のフロアが空いたんだ。そこにカンパニーも一緒に入る」
「ふ~ん」
夏「……まだ用事あるの?」
「別にないけどな」
そう言い残し、夏は部屋を出て行った。
ったく……子供だなあ。
桐生さんを呼んだ。
桐生「はい。御用でしょうか?」
「理事は何かあったのか? なんだか言いたそうにしてたけど」
桐生「ああ……おそらくですが、社長に叱られたみたいです。
人材集めにアイデアはあるのか、と問われたらしいんです。
院長が抜群のアイデアを出されたので、理事も一緒に考えたのだと思われたのですが、ご存じなかったようで、社長はかなりがっかりされたそうです」
「そうか……。練習で忙しいと思ったから、仕事を上乗せしたくなかったんだよ。
あれから何も言ってこなかったから、まだ練習をしてるのかと思ったんだよ」
桐生「いえ、あれからは台本に沿ってしっかり練習されましたよ。
想定問答も何度も繰り返しましたから、もう大丈夫だと思います」
「そうか、本当にありがとう。お世話になりました」
桐生「いえいえ。ただ、理事がなんだか寂しそうで……。
少しかまってあげてくださいませんか?
見ていてかわいそうになるんです」
「えっ?」
桐生さんの優しい微笑みに、思わず頬が緩んだ。
「ちょっと厳しすぎたかな?」
桐生「いいんじゃないですか? 試練を与えられるのは院長だけですから。むしろ恵まれてますよ」
「ははっ、そうか。理事は今どこに?」
「理事室にいらっしゃると思います」
「うん、わかった。ありがとう。お疲れさま」
桐生さんは笑顔のまま戻っていった。
さて……どうしたものかな。
インカムで夏に「一緒に帰ろうか」と声をかけると、一分も経たないうちに飛んで来た。……早いな。
「じゃあ、帰ろう」立ち上がってドアに向かうと、後ろから抱きつかれた。
「早く帰るぞ」
「ダメ……今じゃなきゃいやだ」
くるりと振り返り、夏をぎゅっと抱きしめる。
「……ったく、どうしようもない甘えんぼだな」
夏は小さく頷き、顔をすり寄せてきた。
「だから、俺のこと見捨てないで。寂しいよ」
「見捨ててないさ。期待してるから鍛えてるだけだ」
「本当?」
「ふっ、決まってるだろ。社長から預かってるんだ。
どこまでも鍛えてやるさ。まったく手間のかかるやつだ」
夏がくすくす笑い出した。
「だよね? えへへへ」
つられて俺も笑ってしまう。
この単純さが、憎めないくらい可愛い。
「ほら、帰るぞ。一緒に風呂入るか?」
「うん! 入るっ」
5
あなたにおすすめの小説
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
網代さんを怒らせたい
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「なあ。僕たち、付き合わないか?」
彼がなにを言っているのかわからなかった。
たったいま、私たちは恋愛できない体質かもしれないと告白しあったばかりなのに。
しかし彼曰く、これは練習なのらしい。
それっぽいことをしてみれば、恋がわかるかもしれない。
それでもダメなら、本当にそういう体質だったのだと諦めがつく。
それはそうかもしれないと、私は彼と付き合いはじめたのだけれど……。
和倉千代子(わくらちよこ) 23
建築デザイン会社『SkyEnd』勤務
デザイナー
黒髪パッツン前髪、おかっぱ頭であだ名は〝市松〟
ただし、そう呼ぶのは網代のみ
なんでもすぐに信じてしまい、いつも網代に騙されている
仕事も頑張る努力家
×
網代立生(あじろたつき) 28
建築デザイン会社『SkyEnd』勤務
営業兼事務
背が高く、一見優しげ
しかしけっこう慇懃無礼に毒を吐く
人の好き嫌いが激しい
常識の通じないヤツが大嫌い
恋愛のできないふたりの関係は恋に発展するのか……!?
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~
芙月みひろ
恋愛
保険会社の事務職として勤務する
早瀬佳奈26才。
友達に頼み込まれて行った飲み会で
腹立たしいほど無愛想な高原宗輔30才と出会う。
あまりの不愉快さに
二度と会いたくないと思っていたにも関わらず
再び仕事で顔を合わせることになる。
上司のパワハラめいた嫌がらせに悩まされていた中
ふと見せる彼の優しい一面に触れて
佳奈は次第に高原に心を傾け出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる