診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第3章 新たな人材を求めて

47話 スイートチェリー

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 今日は金曜日だ。夏が「アニメプラス」の引っ越しだと言っていたな。

だが、ヘルプの声はかかってこない。

――誰も手伝いに行かなくていいのだろうか?

そんなことを考えていると、莉子がひょっこり院長室に顔をのぞかせた。

「どうしたの?」

「だってみんな引っ越しで忙しそうなのに、私には何もしなくていいって言うんだもん……」

「結構なことじゃないか。莉子に怪我でもされたら大損失だからな」

「ええ? 私、そんなにやわじゃないもん」

「ふっ、じゃあ気晴らしでもするか?」

「うん!」――急にニコッと笑った。その無邪気さが、たまらなくかわいい。

どうやら今日は引っ越しの手伝いをするつもりだったらしい。

赤いTシャツに、ジーンズの可愛らしいつなぎ。さらに赤いバンダナをヘアバンド代わりにしている。

……エリナさんも真っ青だな。フフフ。

二人で1階のカフェへ行った。

「おはようございます。まあ~、院長先生と莉子さんがおそろいなんて珍しいですね」

スタッフの清水理恵子さんが、にこやかに迎えてくれる。

「莉子、何がいい?」

「えへへ、どうしようかなぁ?」

清水「よろしかったら、今はスイートチェリーのアイス添えがおすすめですよ。あと、それを炭酸で割ったドリンクも人気なんです」

莉子「へえ~、じゃあアイス添えの方にします」

「じゃあ俺はアイスティーをお願いします」

清水「はい、かしこまりました。少々お待ちくださいませ」

莉子「今ってチェリーの季節だっけ?」

「いや、生のは六月じゃなかったか? 多分輸入品だろうな」

やがてテーブルに運ばれてきた。

皿に盛られたチェリーは深い赤色で、どう見てもアメリカンチェリーを凍らせたもののようだ。

莉子が一口かじると――

「わっ、このチェリー、甘くて冷たくて美味しい!」

目を輝かせながら頬張っている。

その様子を見て、清水さんが得意げに説明してくれた。

「スイートチェリー、おいしいでしょう? これはハンガリー産で、種抜きだからそのまま食べられるんです。

しかも味が濃くて、本当に美味しいんですよ」

――なるほど。カフェもいろいろ挑戦しているんだな。熱心で頭が下がる。

「春ちゃんもこれ食べればよかったのに。めちゃめちゃ美味しいよ。ほら、一個食べる?」

思わず、うなずいてしまった。

莉子が「あ~ん」と差し出す。俺は口を開けて、素直に一粒もらった。

……その瞬間、ふと視線を感じて見回すと、スタッフたちがくすくす笑いながらこちらを見ていた。

「……恥ずかしいな。莉子、今みんなに見られてたよ」

莉子「えへへ、見せたんだよん」

――やられた。思わず吹き出してしまった。


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