診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第4章 菜の花、未来を味わう

74話 団子

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 翌朝の食卓。

莉子はまるで春の光を浴びた花のように、眩しいほどの笑顔を浮かべていた。

 ――まったく、変わりすぎなんだよ……。

昨夜、寂しさを埋めるように何度も俺に寄り添ってきた莉子。

その気持ちを受け止めるには、抱きしめることしかできなかった。

身体で「大丈夫だよ」「愛してるよ」と伝えた。

その証が、今のこの笑顔なのだと思う。

そんな莉子を見て、夏がすぐに気付いたようだ。

莉子を見ては、俺の顔を見て。目を細め、じろっと見比べてくる。

「昨日の莉子の日はどうだったの? 楽しかったみたいだね」

ぷっと、俺は吹き出しそうになった。

莉子は「え? そう?」と首を傾げるけれど、頬の赤みはごまかしきれない。

俺は苦笑してコーヒーを口にした。

夏「昨日さ、院長と莉子が一緒に休みだから、みんなどこ行くんだろう?って興味津々だったんだよ。

でさ、何気なく6階の休憩室の窓から見てたら、お兄さんと莉子が出てきたんだ。

誰かが『あっ! お出かけしてるーっ!』って叫んだら、みんながワーッと窓に集まっちゃってさ、

団子になっちゃったよ」

アハハハ! 笑いが止まらなかった。可笑しすぎる!

莉子は片手で顔を半分隠しながら笑っていた。

「もうさ、しっかり手なんか握っちゃって、『甘~いわ~』なんてみんなに言われてたよ」

アハハハ、もう本当に止まらない。みんな暇なんだよ、まったく。

そのくせ夏はふてくされたようにパンをかじっていた。


「莉子、木曜日は夏も俺も休みになったんだ。

水曜日は24時まで仕事だからね。だから出かけるつもりなんだけど、いいかな?」

莉子はにっこりして「ふ~ん、どうぞ~。でも手を繋いで歩かないでね」

 ぷははっ。ごもっとも。

「車で出かけるから大丈夫だよ」

俺が「出かける」と言った途端、夏はすぐに機嫌がよくなった。マジ単純。

嫉妬が一瞬でワクワクに変わったようだ。

「莉子、ありがとう! 木曜日は出かけるから、よろしくね」

夏は嬉しそうに言った。

「はいはい、どうぞお出かけください。良かったねえ~」

俺はヘラヘラ笑いが止まらなかった。

……妻二人というより、まるで兄妹だな。


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